ソニーの3Dハンディカム「HDR-TD10」は、2011年春モデルの中でもひときわ注目を浴びているモデルで、レンズと撮像素子、映像エンジンが右目、左目用それぞれ搭載されている2眼式のHDビデオカメラだ。3D(立体)のフルHD映像(1920×1080ドット)を、1つのファイルに記録するフレームパッキング方式を採用。3D映像は、MPEG-4 MVCという規格で記録され、通常の2D撮影も可能だ。2D撮影では MPEG-4 AVC/H.264で記録される。高画質の秒60コマプログレッシブモード(60p)の記録にも対応(2Dのみ)している。左右のレンズと撮像素子、映像エンジンは十分なスペックがあり、HDカメラを2台搭載しているのとほぼ同じだといえる。

実機を見ると、やや平べったい箱形。ビデオカメラを横に2台つなげたくらいのサイズだ。これもカメラ2台を搭載していると思えば納得ができる。重さも約725g(標準バッテリー使用時)とカメラ2台分。数字だけ見るとちょっと重たく感じるが、手にすると適度な重量で安定する。今どきのビデオカメラが軽くなりすぎているだけで、一昔前のビデオカメラはこれくらいの重量があったと考えれば、普段使いでもさほど問題はないだろう。

最近のビデオカメラと比べるとやや大柄か

正面から見ると、レンズが2つのぞく

液晶モニターを開けると印象が変わる

横位置、液晶モニター側から

液晶モニターを開くとボタン類はシンプル

背面。液晶モニターは電源と連動している

グリップ部。ホールド感はよく、カメラも安定する

上面。天板はフラット

底面。三脚使用中のバッテリー交換に問題はない

TD-10は、ビューファインダーは非搭載で液晶モニターのみ。液晶モニターは3.5型エクストラファイン液晶で、122.9万ドットときめ細かい表示なのもうれしい。もちろん、ハンディカム伝統のタッチパネル式となっている。特筆すべきは、この液晶モニターは、裸眼で立体視できるようになっていることだ。左右の目に届く光の方向を分ける視差バリア方式を採用し、両目に別の画像を見せることで、撮影時にメガネなどの特別な機器無しに立体視できるのだ。2D撮影時は通常の2Dで表示される。

2D/3Dの撮影モードとは別に、液晶モニターの2D/3D切り替えができるようになっている。そのため、3D撮影時でも液晶モニターだけ2D表示といった使い方もできる。これは、裸眼で立体視できる液晶モニターと目の位置が、ちょうどカメラを構えたときの距離に最適化されているため、ハイアングルやローアングルなどで液晶モニターとの距離が著しく変化してしまうと像が二重になってしまう場合に便利だ。また、長時間3D映像を見続けていると疲れてしまう(警告が出る)ので、コンバージェンス(視差)をたまに確認する以外は2D表示にしているのがいいのかもしれない。

コンバージェンスはズーム倍率で自動的に調整される。一般的な被写体とされる人物を撮影する場合、その距離とズーム倍率で最適な立体感に調整されているようだ。マニュアルダイヤルを使った「3D奥行き調整」も可能で、立体感が気になるようなら調整が必要だ。気をつけたいのは、極端にアップにした撮影だ。花など小さなものを大きく撮ろうとすると立体感に無理が出てしまうので注意したい。ワイド端では約80cm、テレ端では約7.5m以下の距離では像が二重になってしまうので、説明書ではそのような場合は2D撮影が推奨されている。

「Gレンズ」を2眼搭載。レンズ間隔(ステレオベース)は31mm

裸眼で3D映像が見える視差バリア方式のタッチパネル液晶

液晶モニターの2D/3D切り替えをする専用ボタン

2D/3D撮影モードの切り替えは背面にある

マニュアルダイヤルで、3D奥行き調整もできる

マニュアルダイヤル機能割り当てメニュー

上面のアクティブインターフェースシュー

液晶モニター収納部にメモリーカードスロットを搭載

上から外部マイク端子、ヘッドホン端子、HDMIミニ端子、AV端子

グリップ部のフタを開けるとUSB端子と電源端子

5.1chサラウンド対応高感度マイクを搭載

持ち運び時も安心な電源連動レンズシャッター

3D機能をチェックするべく、テスト撮影に出掛けた。裸眼で立体視できるのは面白く、まるで液晶モニターの中にもうひとつの世界が広がっている感じだ。実際撮影を進めていると、普段目にしている景色がこれほどまでに立体だったのかと驚く。そもそもビデオカメラは被写界深度が深く、ボケによる立体感の表現が苦手だ。被写体と背景の距離差があれば多少のボケが出るが、被写界深度が深いと自然、例えば木々や葉が重なっているような場合は平面的な映像になってしまう。2Dで撮影しているときには当たり前だった距離感のなさが、3Dではきちんと表現できる。まったく次元が違う映像に仕上がるのだ。

3Dモードでは顔検出枠が表示されないが、実際は顔検出機能も動いている。被写体をタッチして自動で追尾しフォーカスを合わせ続ける「追尾フォーカス機能」は、2Dのみ動作する。ほかにも、2D撮影時はシャッタースピードや絞り、AEシフトやWBシフトなどができるマニュアル機能も、3D撮影時はフォーカス、明るさしか調整できなくなる。基本的にはカメラまかせの撮影になるが、普段撮影していて特に問題になるようなことはない。顔認識、シーン認識、手ブレ検出を組み合わせて最適な撮影ができる「おまかせオート」で撮影するのが最も簡単だろう。

木々の葉など小さい被写体が密集する映像では、2Dよりも3Dの方が立体感、距離感を表しやすい

【画角比較】

ワイド端:2D動画撮影時/手ブレ補正OFF

ワイド端:2D動画撮影時/アクティブ手ブレ補正

ワイド端:3D動画撮影時/手ブレ補正OFF

ワイド端:3D動画撮影時/アクティブ手ブレ補正

テレ端:2D動画撮影時/手ブレ補正OFF

テレ端:2D動画撮影時/アクティブ手ブレ補正

テレ端:3D動画撮影時/手ブレ補正OFF

テレ端:3D動画撮影時/アクティブ手ブレ補正

3D撮影と2D撮影では撮影時の画角(焦点距離)が若干違ってくる。光学ズームは、3D撮影時では広角34.4mm~望遠344mm、2D撮影時だと広角29.8mm~望遠357mmとなる(35mm換算)。2Dでは光学12倍ズームだが、3Dで10倍となるのは視差を作り出す関係だろう。2D撮影時には、撮像素子の使用部分をトリミングして劣化の少ないデジタルズームをする「エクステンデッドズーム(光学ズームと併せて17倍)」を使うこともできる。

撮像素子は 1/4型"Exmor R"CMOSセンサーを左右それぞれに搭載。撮像素子の情報を処理する映像エンジン「BIONZ」も2個搭載されている。"Exmor R"CMOSセンサーは裏面照射型で、高感度および低ノイズが特徴。それでも低照度下の撮影ではノイズ成分が出てしまうのはしかたがないが、実は3Dで見ると左右それぞれの映像が補完しあってノイズが目立たなくなるという効果もあった。

いいことずくめの3Dだが、バッテリー消費が少々速く感じた。カメラ2台分を動かしているのと同じようなもので、消費電力も他のハンディカムと比べると大きくなってしまうのだろう。別売アクセサリーのバッテリー、できれば容量が約1.9倍ある「NP-FV100」を追加で購入したいところだ。

夜景など、暗い場所でもかなり明るく撮影できる。ノイズは3Dだとあまり目立たない

1日中撮影したいなら付属バッテリーに加え、予備バッテリーを購入したい

メニューのホーム画面。撮影モードの変更や各種設定の選択も分かりやすい

撮影モード選択画面。なめらかスローやゴルフショットは面白いが3D対応は動画のみ

カメラ・マイクの設定画面。3D撮影にしているとマニュアル設定できない項目もある(画像は2Dでのメニュー)

画質・画像サイズ選択画面。2Dなら、より高画質の60pも選択可能だ

手ブレ補正メニュー。画角は若干狭くなるが強力なアクティブモードにしておきたい

再生機能。イベントビューは一覧、ハイライトはショートムービー作成。保存したハイライトを見るのがシナリオ再生となる

再生では、2Dモードなら2Dのファイル、3Dモードなら3Dのファイルが表示される

裸眼で立体視できる液晶モニターを搭載しているため、本体だけで3D映像を楽しめるが、気になるのがテレビでの視聴や保存方法だ。冒頭で説明したとおり、1920×1080ドットのフルHD映像を1つのファイルで記録するフレームパッキング方式を採用しているため、この方式に対応したテレビで見れば、高精細で立体映像が楽しめる。

3D対応ブラビアと3Dメガネで視聴。大画面で見る立体映像は迫力が違う

今回、LEDバックライトの3D対応ブラビア「KDL-32EX720」と、3Dメガネ「TDG-BR250」を使って撮影した立体映像を視聴した。32型というと今どきの液晶テレビの中ではそれほど大きくないが、カメラ本体の3.5型液晶モニターと比べるとやはり迫力が違う。左右それぞれがフルHDなので、細かい部分までよく見えるのもいい。TD10の出力はサイドバイサイドにも対応しているため、フレームパッキング方式に対応していないテレビでも3D映像を楽しめるようになっている。

付属ソフト「PMB(ピクチャーモーションブラウザー)」がバージョンアップしたのも注目だ。もともと編集したビデオをYouTubeにアップロードする機能を持っていたが、今までのバージョンでは3Dとしてアップできず、2Dに変換されていた。それが今のバージョンでは3Dのままアップロードできるようになったのだ。ただし、サイドバイサイドに変換され、解像度も720pとなってしまうのはちょっと残念だ。

カメラ本体では、2D/3D各モードで、2Dなら2Dの一覧と再生、3Dなら3Dの一覧と再生しかできなかったが、PMBでは同時に一覧で表示できる。各ファイルのトリミング(切り出し)と結合を組み合わせれば、簡易ながら編集することも可能だ。3D映像も、3Dのまま編集することができるのがいい。2D、3D混在編集(結合)も可能だが、2Dに変換されてしまうので注意したい。また、トリミングや結合をすると、どんどん新しいファイルが作られていくため、HDD容量には余裕がほしいところだ。

3D映像の保存も、ブルーレイ/HDD搭載液晶テレビ「ブラビア」の対応モデルや、3D対応のソニー製ブルーディスクレコーダーを使えば、3DのままBDへ保存できる。対応機器がなければ、パソコン(PMB使用)や外付けHDDに保存するしかない。パソコンでは再生や編集時は2Dで表示されるが、データは3Dのままだ。今後、3Dが一般化していけば、アウトプットの方法も増えてくるだろう。

付属ソフト「PMB(ピクチャーモーションブラウザー)」では、2Dと3Dが一覧で表示される

YouTubeのアップロード画面。3Dのままアップロードできる