デジタルフォトレタッチ黎明期の業界事情

2011年3月10日、都内にて「Wacom Creative Seminar ~for Web Design~」が開催された。「Intuos4」を使ったWebサイトデザインを紹介したセミナーに続いて、プロのフォトレタッチャーによるセミナー「フォトレタッチャーが教える画像処理のいろは」が開かれた。登壇したのはヴォンズ・ピクチャーズ 代表取締役社長 片岡氏と、同社のデザイナー 大里氏。ヴォンズ・ピクチャーズは、1997年に片岡氏が東京 新橋に設立したグラフィック制作全般を手掛ける会社。

1990年代後半、片岡氏はプロフォトグラファーとして活躍しており、写真のデジタル処理に興味を持ち始めた。当時、以前は数千万円もするグラフィックワークステーションでしかできなかった画像処理が、Macの普及により、1台のPCと『Photoshop』でできるようになってきていた。片岡氏が勤めていた会社にもMacが導入され、この時期から撮影した写真を自分で画像処理するようになったとのこと。ただ、当時のパソコンは処理能力が低く、「まるまる1週間徹夜で作業することもよくあり、とにかく体力のいる仕事だった」という。

しかし、フォトレタッチの作業は他の何よりも楽しく、その魅力にどんどん引き込まれていったと片岡氏は語る。片岡氏は近い将来、フォトレタッチ需要が高まることを予測して、起業することを決意した。周囲は、「フォトレタッチだけの仕事などありえない」と否定的だったそうだ。しかし、1997年3月にヴォンズ・ピクチャーズを立ち上げると、片岡氏の読みは的中。フォトレタッチの仕事が徐々に舞い込んでくるようになり、軌道に乗ることになった。そして2000年頃からはWebサイトの制作も始め、現在は映像制作も行っている。

ヴォンズ・ピクチャーズは、多くの大企業の広告を手がけている