iPad 2ファーストインプレッションの後編は、A5プロセッサ、グラフィックス、JavaScript実行性能、カメラ機能など、iPad 2の強化点を検証。さらにiPad 2をターゲットにした新アプリをチェック、米国での売れ筋モデルを紹介する。

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Appleのタブレット第2世代「iPad 2」の強化点の目玉は、なんと言ってもデュアルコアになったカスタムチップA5である。CPUコアのベースがARM Cortex-A9に変わったと言われている (A4はARM Cortex-A8)。以下はGeekbenchの結果(値が高い方が高性能)だ。

■Geekbench
デバイス 総合 Integer Floatng Pt. Memory Stream
iPad 2 736 680 909 743 322
iPad 446 358 448 663 313

Geekbenchの情報だと動作クロックは852MHz (実際は1GHz)。RAMは502MB

GeekbenchではA5の動作クロックが852MHzとなっている。Appleの仕様情報によれば動作クロックは1GHzのはずなので、ベンチマークツールの信頼性に怪しいところがあるものの、A5の基本性能がA4を大きく上回っていること(Appleは2倍高速と主張)に疑いの余地はない。

続いて、PowerVR SGX 543MP2が採用されていると言われるグラフィックスの性能を、「OpenGL Extensions Viewer」の3Dベンチマークで調べた(値が高い方が高性能)。

■OpenGL Extensions Viewer Benchmark (OpenGL ES:2.0)
デバイス Cube Many Cubes
iPad 2 58.6 fps 58.0 fps
iPad 58.7 fps 19.4 fps

iPadでは、1つのオブジェクトをレンダリングする「Cube」は60近いスコアだが、複数のオブジェクトをレンダリングする「Many Cube」では20以下に急落する。これに対してiPad 2は、どちらのテストでも60近いスコアを維持した。iPadで一部から指摘されたフィルレートの貧弱さを、iPad 2は克服しているといえる。

ボックス1つをレンダリングする「Cube」のテストでは、iPadとiPad 2がほぼ同じスコア

複数のボックスをレンダリングする「Many Cubes」のテストでは、iPadとiPad 2に大きな差が出た

ただ、こうしたプロセッサのベンチマークは目安にはなるものの、結果がそのまま利用体験に反映されるわけではない。例えば、初代iPadはGeekbenchでiPhone 4を上回り、どちらもGPUにPowerVR SGX535を搭載する。プロセッサ性能を単純に比べれば、iPadの方が上である。ところが、日常的な使用においてiPhone 4の方が快適に動作するように感じることがしばしばだ。利用体験はバランスによって引き出されるので、性能だけの問題ではない。処理能力が向上しても、バッテリー駆動時間が減退しては、モバイルデバイスとして使いにくいものになる。

3月11日にEpic傘下のChAIR EntertainmentがiPad 2のグラフィックスプロセッサに最適化した「Infinity Blade」の無料アップデートをリリースした。同作はUnreal Engine 3を活用した美麗なグラフィックスが話題になったが、iPad 2ではディテールまでクリアに表現される。まるで昔聞いていた音楽をリマスター版で聞き直して感動し直したような気分だ。

iPad 2が発売された3月11日に、ChAIRがiPad 2のグラフィックス機能に最適化した「Infinity Blade」をリリースしている

Webアプリの実行性能もモバイルデバイスの利用体験を引き上げる重要な要素である。iPadをiOS 4.3にアップデートすると、NitroエンジンのおかげでSafariのJavaScript実行が飛躍的に速くなる。A5を搭載したiPad 2ではさらに高速だ。以下はSunspiderベンチマークの結果 (時間が短い方が高速)。

■SunSpider JavaScript Benchmark
デバイス 時間
iPad 2 2138.6ms
iPad (iOS 4.3) 3468.2ms
iPad (iOS 4.2) 8153.1ms

A5プロセッサはSamsungの45nmプロセス技術で製造されているという。chipworksによると、A5のダイサイズは10.1×12.1mm(122.2平方mm)で、A4(7.3×7.3mm、53.3平方mm)の2倍以上である。より微細な製造プロセスを待たずに、ダイサイズ2倍でデュアルコア化を実現しているのだから消費電力は確実に増しているはずだ。実際iPad 2を手に持ちながら使い続けていると、iPad以上に手のひらに熱を感じる。

しかしながらiPad 2は、初代iPadと変わらない長いバッテリー駆動時間を実現している。画面の明度を固定してビデオを再生し続けるテストでは、10時間21分を記録した。標準設定のまま映画をいくつか再生したところ、1本あたりのバッテリー残量の減少は12%-16%だった。

"2倍高速"に偽りがないほど、A5プロセッサは速い。だがiPad 2の本当のスゴさはiPadやiPhone 4のバランスの良さの延長で、デュアルコア・プロセッサ採用を実現している点にある。