そこで川口市では、日本HPのサーバとシンクライアント端末の導入を決定した。実際の導入にあたって、公募で選ばれたのは地元ベンダーである彩ネットだった。

彩ネット代表取締役 井上太郎氏

「市からハードウェアの指定はありませんでした。日本HPを選択したのは、シンクライアント端末が豊富なこと、サーバ仮想化実績が豊富なことが理由でした。選択課程での相談でも十分な対応をしてもらえ、これならば安心して導入できると判断しました」と彩ネット代表取締役の井上太郎氏は語る。

仮想化にはXenServerが使われている。アプリケーションの仮想化にはXenAppを利用。200台のシンクライアント端末が導入された。XenServerが稼働しているサーバは9台で、イメージ配信用等を含めるとシステム全体で20台程度のサーバが稼働している。

シンクライアントに利用されている日本HPのサーバ

「1台のサーバに20~25台の端末がぶらさがっています。計算上8台のサーバでまかなえるので、1台はトラブルに備えた予備ということになりますね。トータルコストで考えると同一台数のPCを購入するより若干割高なのですが、管理するハードウェア数が大幅に少なったことによる管理コストの低減や、同等にセキュアな環境の実現まで考えると、トータルで良かったと考えています」と大山氏。

端末の一時的な増加などにも柔軟に対応できるようになり、すでに国勢調査時に20端末を即座に増加させることができたという実績もある。

生活福祉課の窓口で利用されている日本HPのシンクライアント端末

ホストコンピュータは現在まだ稼働しており、仮想サーバへの業務移行は2013年3月をめどに順次進められる予定だ。これが完了した場合、業務系の仮想サーバ群とアプリケーション配信サーバ群による業務系ネットワークが完成する。

将来的には他地域での利用も可能に

現在、川口市ではサーバの仮想化も進めている。仮想サーバ群も2011年度中には構築される予定だ。また、モバイル活用やペーパーレスを目指したいという思惑もある。福祉関連業務は戸別訪問などもあるため、モバイル対応の需要はある。しかし個人情報を扱うため、簡単には対応できずにいた。

「情報流出が怖いからと紙ベースで対応していたのですが、紙でも個人情報は個人情報です。そして通常の廃棄用紙は資源として売却できるのに対して、個人情報が記載された紙は費用をかけて処分しなければなりません。コスト節減のためにも安全にモバイルできる画面転送方式のシンクライアントが必要でした」と初見氏は語る。

モバイルシンクライアントの具体的な利用はまだ開始されていないが、準備は進められている。IP-VPNを利用することでインターネットを経由せず、業務系ネットワークとの間および外部接続部にファイアウォールを設けたセキュアなシステムになる予定だ。

今後はモバイル環境も整備

川口市 企画財政部 情報政策課 課長 本山政志氏

さらに、将来的には川口市が提供者となり、他市でもこのシステムを活用できるようになる可能性もあるという。

「現在は川口市によるプライベートクラウドですが、小規模な市町村で独自に何かするよりもコストメリットがある、という所があるならば、地域連携として共同利用ができればと考えています。ただし、それには文字基盤の確立と社会保障番号の統一が不可欠です」と企画財政部 情報政策課 課長 本山政志氏は語る。

近い将来、川口市から広がる地域連携が実現されるかもしれない。

将来的には、川口市のシステムをクラウドサービスとして他市に提供する構想もある