日常的にWindows OSを使っている方に対し、説明するのはおこがましいが、使い慣れた環境とは何物にも代えがたいものである。客先に出向き、コンピューターのメンテナンスを行う場合、相手が作り上げた環境をカスタマイズするわけにも行かず、普段と違う作業を強いられてしまう。友人・知人宅ならば、ある程度の設定変更も許容されるかも知れないが、普段から使い慣れた環境に勝るものはないだろう。

つまり、自身の環境を持ちあることに越したことはないのだ。LinuxであればカスタマイズしたブータブルCD/DVDを作成すればよいが、Windows OSの場合、Windows PEにいくつかのツールを組み込むことで同様の環境を生み出すことができる。だが、独特の導入手順を学ぶ必要があるなどハードルが高いため、多くのユーザーは前述の辛苦を黙従するしかない。

この様なケースに役立つのが、アーク情報システムから登場した「BOOT革命/USB Memory Ver.3」だ。そもそも同社のBOOT革命シリーズには、外付けUSB-HDD(ハードディスクドライブ)からWindows OSを起動できる「BOOT革命/USB」や、稼働中のWindows OSから必要なファイルを取得し、起動用CD/DVDを作成する「BOOT革命DVD」といったラインアップを揃えているが、「BOOT革命/USB Memory Ver.3」はUSBメモリからの起動に特化したユーティリティである。

対象となるストレージメディアはUSB(フラッシュ)メモリだけではなく、SDカードやSDメモリーカード、コンパクトフラッシュ、メモリースティックなどのメディアも使用することが可能。ただし、Windows OSがリムーバブルメディアとして認識するものに限られ、SSD(Solid State Drive)のようにディスクとして認識されるデバイスは対象外となる。

もっとも本製品に含まれるツールから起動可能な、OS標準のディスク管理ツールから確認できるので、手持ちのメディアが使用可能かどうか確認しておこう。また、USBメモリなどにコピーするWindows OSの種類のよって、必要な容量も異なってくる。導入済みアプリケーションなど環境によって大きくことなるものの、同社は最低ラインとして、Windows XPは4GB以上、Windows Vistaは16GB以上、Windows 7は16GB以上(32ビット版)/32GB以上(64ビット版)と定めているので参考にして欲しい(図01~03)。

図01 「BOOT革命/USB Memory Ver.3」のインストール後に起動するArkランチャーから、「便利ツール」→「コンピューター情報の取得」とクリックする

図02 「コンピューターの情報の取得」ツールが起動したら、<ツール>タブにある<ディスクの管理を開く>をクリック

図03 これでOS標準のディスク管理ツールが起動するので、ここから使用可能なメディアか確認する

USBメモリへWindows OSをコピー

それでは「BOOT革命/USB Memory Ver.3」がなぜ、Windows OSをUSBメモリにコピーし、起動可能にできるのか、実際の操作を交えて追いかけてみる。同製品では、Windows XP/Vistaに限り、ファイルリストの作成を必要としている。これは、Windows XP/Vistaの起動に必要なファイルを分析し、リストを作成することで最小限のファイルのみをUSBメモリにコピーするための事前準備だ。

最近は大容量メディアが増えているものの、限られた容量を効率よく活用する姿勢は好ましい。ここでコピー対象となるファイルの取捨選択を行っておけば、コピー直前にうながされるファイルの取捨選択作業も軽減されるため、確実にリストを作成しておこう。なお、Windows 7上で本製品を使用する場合、コピー先のUSBメモリがコンピューターのホストドライブ全体のサイズより小さい場合でも、ホストドライブの空き容量を縮小してコピーする機能が自動的に働く仕組みだ(図04~08)。

図04 Arkランチャーから、「起動するUSBメモリーの作成」→「システムドライブのコピー」とクリックする

図05 「ファイルリストを使用する」をクリックしてチェックを入れてから、「ファイルリストを新規作成」ボタンをクリック

図06 起動時に必要となるファイルのチェックを行うため、「はい」ボタンをクリックしてコンピューターを再起動する

図07 再起動後にファイルリストの作成をうながされるので、「はい」ボタンをクリックしてリスト作成を実行する

図08 チェックボックスのオン/オフでリストに含めるファイルやフォルダーの取捨選択を行う。「完了」ボタンをクリックすると、コピー作業をうながされるので「はい」ボタンをクリック

ファイルリストの作成を終えたら、USBメモリへのファイルコピーとなる。通常はそのままコピーを実行するだけだが、初期状態では壁紙(デスクトップの背景画像)が同社独自の画像を選択しているので、ユーザーの好みに応じて変更するとよい。

再びコピー対象となるファイルの取捨選択をうながされるが、ここで注目すべきは赤色で表示されているチェックボックス。これは、Windows OSの起動に必要と判断されたファイル/フォルダーのため、チェックを外すことができないことを意味している。また、例えばファイルリストには含めていなかったが、緊急時に使用するツールを含めたい場合は、ここから選択するとよい。

後は画面の指示に従ってコピー作業を進めるだけだが、コピー中にエラーダイアログが現れることがある。図13の例ではログファイル用フォルダーに生成された一時ファイルが見つからなかったことが原因なので、このようなケースの場合は気にせず先に進めよう。HDD側に何らかの問題が発生している場合は、システムファイルでも同様のエラーダイアログが出る可能性があるので、その際はメッセージ内容を吟味し、対応する必要があるだろう(図09~図13)

図09 再び図05と同じダイアログが現れるので、必要に応じて壁紙の設定を行ってから「次へ」ボタンをクリックする

図10 USBメモリにコピーするファイルの取捨選択を行ってから「次へ」ボタンをクリック

図11 確認をうながすダイアログが現れたら、「はい」ボタンをクリックしてコピーを実行する

図12 進捗状況を示すプログレスバーを見ていれば、数分から数十分でコピーは完了する

図13 最後に「完了」ボタンをクリックすれば作業完了だ

図14 コピー中にエラーダイアログが現れた場合は、「以降に発生したエラーを全て無視する」にチェックを入れてから「無視」ボタンをクリックした方が簡単だ

なお、Arkランチャーに並ぶ「エクスターナルインストール」は、BOOT革命シリーズでお馴染みのWindows XP/Vista/7セットアップCD/DVD-ROMを使用して、既存のWindows OS環境ではなく新規インストールを用いて作成する手法だ。手順は少々異なるものの、画面の手順を追えば簡単に使用できるので、今回は割愛する。

なお、マイクロソフトが販売しているWindows OSセットアップCD/DVD-ROMではなく、メーカー製コンピューターに付属しているインストールディスクの場合、メーカー独自仕様が加わっている可能性があるため、本機能が使用できない可能性がある。また、リカバリーCD/DVDと言われる付属品も一般的にはディスク内容やファイル内容をイメージ化しているものが多いため、同様に使用できないことが多い。あらかじめ注意して欲しい。