NECは15日、モバイル向け新商品「LifeTouch NOTE」の製品発表会を開催した。Android 2.2搭載でキーボード付きのモバイル端末という今回の新製品については、CES 2011での展示が行われていたことなどから注目度も高く、記者からの質問では同社の往年の名機「モバイルギア」の名前も飛び出していた。

PCとスマートフォンの中間に位置する"クラウドコミュニケーター"

NEC パーソナルソリューション事業開発本部長 西大和男氏

説明会ではまず、NEC パーソナルソリューション事業開発本部長の西大和男氏が、同社が"クラウドコミュニケーター"と呼ぶ「LifeTouch」シリーズ全体の紹介と新製品の位置づけを行った。

「NECはクラウドコンピューティングを社是のひとつにしている。多彩なアプリケーション・先進のクラウド基盤を構築したうえで、そこからユーザーとつながっていくクラウド端末の部分が、これから成長していく領域」とし、そのキーとなる"クラウド端末"について、クラウドと連携し、想定される利用シーンに合わせたユーザーインタフェースを実現する製品として"クラウド端末"を位置づけた。このクラウド端末にはPCやスマートフォンなども含まれ、その新たなカテゴリとしてLifeTouchのような"クラウドコミュニケーター"という領域を広げていきたいとした。

アプリケーション・クラウド基盤とユーザーをつなぐ"クラウド端末"は今後の成長が見込める領域だという

このカテゴリは、PCと携帯・スマートフォンの中間に位置するものとして、これまでNECでは"中間領域"と呼んでいた。それに今回、クラウドコミュニケーターという新たな位置付けを行ったのは、この領域がたんに2つの製品カテゴリの中間に位置するというだけではなく、新たな用途が広がる、そしてその用途に最適な端末を作ることで新たな価値を提供できる領域だからだという。

そのコンセプトは、「クラウド時代に人に優しく、親しみやすく、誰にでも使える端末」。また、たんにクラウドに置かれたデータを端末側から参照するというだけでなく、クラウドに対して端末側から情報を発信し、双方向にクラウドを活用することでより高度なサービスを展開したいという。そのひとつの仕掛けが、キーボードを装備した今回の「LifeTouch NOTE」ということになる。

PCと携帯・スマートフォンの中間に位置するのがクラウド端末。今回の「LifeTouch NOTE」では、キーボード搭載による双方向性がひとつのポイント

「LifeTouch」という製品名は、昨年11月に発表された企業向けのクラウド端末にはじまる。この時点では明確にシリーズとして定義されていたわけではなかったが、今回の第2弾製品のリリースにより、シリーズとしての展開を行っていくことになった。また、CES 2011では、本をイメージした2画面の「LifeTouch W」という製品も参考展示しており、今後の商品化が検討されているという。

2010年11月に発表された初代「LifeTouch」と、CES 2011に参考展示された2画面の「LifeTouch W」

そのシリーズの中で今回の「LifeTouch NOTE」はとくに「SNSやブログを利用する人に使いやすいキーボード付きで、ライト(Write=文章入力)してもらえる端末」というのが最大の特徴だという。「上がタブレットの端末で下にキーボードが付けたような、"スマートブック"と呼ばれる端末」という「LifeTouch NOTE」は、通常のタブレットでは難しい"文章の入力をしたい"というニーズに最適な製品というのが訴求ポイントとなる。そのために、打鍵感にもこだわったキーボード、日本語入力システムATOK、独自アプリ「ライフノート」といった環境を用意したという。

西大氏は最後に、「『LifeTouch』のシリーズは、今後ユーザーニーズの拡大に合わせ、それぞれの利用シーンに合わせたさまざまな端末を出していきたい」として話を締めくくった。

「LifeTouch」シリーズには、今後もさまざまな商品が投入されるという

情報を参照するだけでなく、クリエイトするデバイス

NEC パーソナルソリューション事業開発部 エグゼクティブエキスパート 渡邉敏博氏

具体的な商品の説明を行ったのはNEC パーソナルソリューション事業開発部 エグゼクティブエキスパートの渡邉敏博氏。同氏は、「クラウド端末のさまざまな形を考えたとき、2つの軸が考えられる」という。その1つの軸というのは大きさ、もう1つの軸には端末の用途を挙げ、今回の「LifeTouch NOTE」については、大きさとしては"カバンの中に入る大きさ"、用途としては"情報を参照するだけでなくクリエイトするもの"として位置付けた。利用シーンとしては、自宅でじっくり作業するときはPC、外出先でちょっとだけ使うときはスマートフォン、そして持ち歩いてしっかり作業するときにはこの「LifeTouch NOTE」というように使い分けることを想定しているという。

「LifeTouch NOTE」の位置づけは、『カバンに入る大きさで、参照だけでなくクリエイトする端末』。用途にあわせてスマートフォン/PCと使い分けることを想定する

特徴として第一に挙げたのは、Googleの認証を受け、Googleモバイルサービスやタッチパネル・GPS/電子コンパス・加速度センサーなど、スマートフォンとしての機能をフルに利用可能な点。Androidアプリについては、NECビッグローブが提供するandronaviにより、優良アプリを日本語でわかりやすく情報提供できることを紹介した。

Androidスマートフォンとしてのフル機能を利用可能。Androidアプリについては、andronaviにおけるナビゲーションにより、より利用しやすいという

そして3つ目のポイントとして紹介したのが、「今回の最大の特徴」というキーボード。「LifeTouch NOTE」のキーボードは、Android標準のキーだけでなく、Insert/Deleteといったパソコンによる文字入力には必須のキーも備えている。また、メニュー/検索/ホーム/戻るといったAndroidで定義されているボタンについてもキーボード上に備えており、キーボードで操作を完結させることができる。これらにより、スマートフォンとしての操作も、PC同様の文字入力も、キーボードから統一して行えるという。

最大の特徴となるキーボードは、PCキーボードの長所とAndroidにおける使いやすさを両立させたもの

また、日本語入力のもう1つの要素として、日本語入力システム「ATOK for LifeTouch NOTE」を紹介。ファンクションキーも搭載していることにより、PCからの入力とまったく同様の入力が可能になったという。さらに、予測変換のようなスマートフォンではおなじみの機能も兼ね備えることで、より快適な入力環境を実現できたとした。そして独自ソフト「ライフノート」は、文章や背面のカメラで撮影した写真をブログやSNSにすばやく送れるものとして、文章入力環境を活用するために用意されたものということになる。

おなじみの「ATOK」と独自ソフト「ライフノート」が、キーボードを活用するために用意された

ハードウェア面については、「高性能とモバイルのバランス」をポイントとして挙げた。高性能さについてはNVIDIA Tegra 250と7型ワイドVGAのLED液晶を搭載している点、モバイルについてはコンパクトサイズ・軽量、バッテリ駆動時間の長さを強調。バッテリはWebサイト閲覧で最大約9時間、待機状態ならば4日間もつとのことで、「1日外出中にフルで使い、帰宅して充電するという使い方ができる性能」であるとした。

最後にデザインについて、角アールをつけたことによる手なじみのよさ、フラットな形状による出し入れのスムーズさ、3色のカラーバリエーションをこだわりのポイントとして紹介した。

ハードウェア面でのキーワードは「高性能とモバイルのバランス」。デザインも携帯しての利用を想定したものだ

「モバイルギア」という名前も検討された

質疑応答でまず飛び出したのは、今回の製品がAndroid 2.2搭載ということで、すでにリリースされている2.3へのアップデートを考えているかどうかという質問。これに対しては「この製品はAndroid 2.2に最適な環境で提供しているので、2.2で使っていただきたいというのが弊社の考え」との回答だったが、同時に今後については「AndroidプラットフォームのバージョンアップにNEC全体としてはもちろんキャッチアップしていくし、Android 2.3/3.0へも対応していく」とした。

またターゲットとするユーザー層に関連して、ネットブックユーザー層を取り込むのが狙いなのかという問いには、「ネットブックを外に持ち出して使っているユーザーは、ひとつのターゲット。ただし、ネットブックの使い方の中でも、家庭におけるサブとしての使い方は、『LifeTouch NOTE』の狙いとは違う」とした。業務用としての販売については、検討は進めているものの、現時点では業務用レベルのセキュリティレベルが達成されていないという。

海外展開についての質問には、ATOK搭載にみられるように今回は日本市場を想定しているというものの、将来的には海外に市場があるなら考えていきたいとの回答。レノボとの提携で「LifeTouch NOTE」はその対象になっていないが、そことも話をしつつグローバルに広げていきたいとのことだった。

また今回、「LifeTouch」の第1号機とは異なる販売形態をとったことについては、「タブレットでは、アプリが充実していないとユーザーには使いきれない。このため、『LifeTouch』では他事業者にアプリを作り込んでもらうB2B2C型のビジネスモデルをとったが、今回の『LifeTouch NOTE』ではキーボード、日本語入力、SNS、ブログというキラーアプリがあるので、一般ユーザーにそのまま使ってもらえる」とその理由を説明した。

今回の製品については、正式発表の前からコンセプト的にかつての「モバイルギア」との類似が指摘されていた。そこでやはりというか、商品の名称について「『モバイルギア』とすることは考えなかったのか」という質問が飛んだ。これに対しては、「正直、『モバイルギア』という名前も俎上に上がっていた。今回はクラウドデバイスとして統一ブランドを作ろうということで、『LifeTouch』を採用した」との回答だった。

「担当者が相当こだわった」というキーボード。右上にInsertキー/Deleteキーを配置したほか、F1~F10のファンクションキーも装備。ファンクションキー右には、メニュー/検索/ホーム/戻るの各キーが配置されている

ディスプレイ裏側には200万画素カメラを内蔵。このカメラで撮影した写真にコメントをつけてブログやSNSに投稿するということも「ライフノート」から行える

本体左側面にはUSB 2.0ポート(miniUSB)とヘッドホン端子を装備。USBポートはパソコンとのデータ交換専用で、周辺機器の接続はできない

右側面にはSDメモリーカードスロットを配置している

会場には初代「LifeTouch」および「LifeTouch W」も展示されていた