日本通信は22日、Android OS搭載スマートフォン「IDEOS」(中国Huawei製)を発表した。低価格・小型軽量の端末で、IP電話機能を内蔵したことで音声通話にかかるコストを低減し、データ通信料金を含めても低価格で運用できるようにした。「お小遣いでも使ってもらえるスマートフォン」(三田聖二・代表取締役社長CEO)を目指したという。

端末の出荷開始は、今週末を予定。IP電話サービスの提供は1月中旬を予定している。同社オンラインショップ「bマーケット」での価格は26,800円。10日間の定額データ通信ができるSIMカード「b-mobileSIM U300」をセットにして提供する。なお端末は、SIMロックフリーで提供される。

コンパクトで手のひらにすっぽり収まるIDEOS

IDEOSは、OSにAndroid 2.2を搭載したHuawei製のコンパクトなスマートフォン。14日にイー・モバイルが発表した「Pocket WiFi S」と同型の端末で、2.8インチQVGA液晶、256MBのRAMと512MBのROMを搭載する。

本体のサイズ・重量は104(H)×54.8(W)×13.5(D)mm・約100g。手のひらにすっぽり収まるサイズとなっており、同社では「多機能な100g、スマホ100g」(福田尚久・代表取締役専務COO)という呼び方をしている。

通信機能は、EDGE/GSM/GPRSの850/900/1800/1900MHz、3Gの850/1700/1900/2100MHzをサポート。HSDPAに対応し、下り最大速度は7.2Mbps。このほか、無線LANのIEEE802.11b/g/n、Bluetooth 2.1、GPS、電子コンパスなども搭載する。さらに、最大32GBのmicroSDカードも利用できる。

本体背面

背面のカラーリングは3色

表面。下部には円形の十字キー、中央に決定キー、その左右に発話、終話キーがある。Android端末としては少し珍しいが、電話もしやすい

本体左側面にはボリュームキー。ちなみに右側面はフラット

本体上部には電源ボタンとイヤホン端子、本体下部にはUSB端子が設置されている

IDEOSの特徴は、「メーカーの思いをそのまま届ける」(福田尚久・代表取締役専務COO)ことを目的にしており、Huaweiがグローバルに販売するモデルに手を加えずに、日本の法規制にかかわる認証だけを取得して提供する。メーカーが作り込んだ機能の制限もしていないため、SIMロックフリーであり、Android 2.2から搭載されたテザリングの機能もそのまま利用できる。イー・モバイルのPocket WiFi Sも機能としては同等だが、SIMロックフリーであり、日本通信のサービスとの組み合わせが可能な点が違い。さらに日本通信独自のカスタマイズもなく、日本語フォントや日本語入力といった機能もデフォルトのままだ。

日本通信 代表取締役社長CEOの三田氏

同 代表取締役専務COOの福田氏

スマートフォンは、「高機能携帯」などとも訳されるように、これまでの携帯電話(フィーチャーフォン)に比べて機能は豊富だが、液晶画面が大きいため端末サイズも大きく重く、価格も高いのが一般的だ。これに対して携帯キャリアはSIMロックをかけて自社回線以外は使えないようにして、その上で端末価格を値下げして利用料金から回収するモデルを採用している。たとえばSIMロックフリー版iPhone 4は7万円以上の価格になることもあり、回線契約がないと高機能なスマートフォンの端末価格は高価格になりがちだ。

現在日本に登場しているスマートフォンの例。高機能が売りで、普及価格帯の製品がほとんどなかった

しかし、来年には日本でもSIMロックフリーが始まる情勢となっており、その時に回線契約がないとスマートフォンは高価格でなかなか購入できなくなる。同社では、現状の端末は「気軽に持てる普及価格帯のモデルがない」(福田氏)ため、結局SIMロックフリーになっても端末価格がスマートフォン普及の障害になるとみている。また、スマートフォンの利用者は、ネット利用を多くするために、通信料金がパケット定額料金の上限に達しやすく、そこからさらに通話向けの月額料金と通話料が必要になるため、利用料金が従来よりも高くなりがちだ。

同社が今回発表したIDEOSは、従来の携帯電話より安い価格のスマートフォンを投入することで、前述した障害を乗り越えるねらい。SIMロックフリーでありながら26,800円という低価格を実現した。

SIMロックフリーが一般化すると、キャリアブランドの端末ではなく、メーカーブランドの端末が増える。そのメーカーブランドの製品をそのまま持ち込んだのが今回の製品

電話やメール、Web閲覧、Android Marketからのアプリダウンロード、テザリングによるポータブル無線LANルーター機能などは利用できる。コンパクトで低価格ながら多機能な端末だ

販売方法も独特で、10日間の定額データ通信ができるSIMカード「b-mobileSIM U300」を同梱して提供する。音声通話に対応せず、データ通信のみで提供されるため、本人確認などの契約手続きが不要というのが特徴だ。通常の物品販売として扱われるため、家電量販店だけでなくコンビニエンスストアやオンラインストアなどでも販売できるため、幅広い販路を開拓できるという。

10日間限定のデータ通信のみのSIMカードを同梱し、26,800円の低価格を実現

音声通話が必要な場合のみ、契約を行う

10日間の利用後、さらに継続利用する場合は「b-mobileSIM U300」などを購入すればよい。無線LANで運用する場合は、特に追加料金は必要なく、そのまま利用できる。

なお、音声通話を利用したい場合は、日本通信のWebサイトから本人確認書類などを提出する契約手続きを行えば、音声回線を利用できるようになる。

他社に比べても低価格の音声通話料金。その秘密はIP電話を導入したこと。080番号も割り当てられているが、実際に使われるのは050番号となる

音声通話を利用する場合、月額利用料金は490円で、30秒間当たりの通話料金は10円だ(15分間の無料通話も含まれる)。スマートフォン向けの音声通話の場合、月額980円、30秒当たり21円というのが一般的で、イー・モバイルのみ月額0円、30秒当たり21円18.9円というプランがあるが、それに比べても低価格を実現している。

b-mobileSIM U300の1年間使い放題だと月額約2,483円となり、データ通信とあわせても2,973円程度で収まる、「お小遣いで使ってもらえる。子供にもあげられて、クリスマスプレゼントにもなる製品」(三田氏)となっている。

通常の音声通話と同じUIで利用できるIP電話で、3G回線で利用できるのは世界初だという

b-mobileSIM U300のデータ通信料金と合算しても1カ月3,000円以下に収まる(毎月の通話時間が15分以内の場合)

音声通話の低価格を実現したのは、一般的な回線交換方式ではなく、IP電話機能を搭載したため。IP電話は、固定電話向けにも提供されているインターネットベースの音声通話サービスで、050で始まる電話番号が付与される。IP電話を利用することで、通話コストを低減し、低価格化が実現したわけだ。なお、IP電話同士での通話も、通常通りの料金が必要となる。

無線LAN経由でも、3G回線経由でもIP電話が利用可能で、「3G経由のIP電話は世界初」(三田氏)だという。また、Android標準の電話機能と統合された状態で提供されるため、通常の携帯電話で利用する場合と同じUIで発着信ができる点も特徴だ。標準のアドレス帳もそのまま利用できるの。Googleアカウントなどで同期したアドレスもそのまま使え、IP電話になっても使い勝手は全く変わらない。

IP電話を利用する場合は、最初にアプリをダウンロードして端末に情報を登録する形となる。端末自体のサポートは日本通信が行うが、内部に手を加えていないため、OSのバージョンアップはHuawei側のアップデートがそのまま利用できるそうだ。

今回、同社がIDEOSで提供するサービスは、IP電話によってコストを下げたため、十分な収益が見込めるという。同社では、「携帯市場では価格競争が起きているが、単に値段を下げるだけで、(キャリア側の)コストを下げないと経営モデルが崩れる」(三田氏)とみており、単に値下げするだけの競争に警鐘を鳴らす。

ドコモの携帯網開放によりレイヤー2接続のMVNOとして新たな事業モデルを構築した日本通信が、新たなモバイルIP電話技術でコストを削減した

さらにグローバル端末をそのまま持ち込んだため、スケールメリットによるコストダウンも図れ、全体としてコストを下げた

日本通信はNTTドコモのMVNO(仮想移動体通信事業者)として昨年3月からサービスを開始。b-mobileSIM U300で通信速度を抑えて低価格化を実現。音声はIP電話によって「価格破壊」(三田氏)を実現。"携帯電話(フィーチャーフォン)よりもトータルで安いスマートフォン"をコンセプトに開発したのが今回のサービスだという。

Android標準の電話アプリから電話を発信すると、自動的にIP電話で接続され、ユーザー側は意識せずに利用できる

最上部の通知領域にあるのがIP電話アプリ

IP電話アプリを起動してみたところ。「設定」以外は、Android標準の電話アプリやアドレス帳アプリを起動するだけ

設定画面。3Gや無線LANを利用する設定が選べる

IDEOSのホーム画面。Androidの標準的でシンプル

デフォルトのアプリ一覧もシンプル

Googleマップアプリを起動したところ。マルチタッチには対応しないようだ

Webブラウザを使ってPCサイトを閲覧できる

ただ、画面が小さく、解像度も低いため、一覧性は良くない

ワイヤレスの設定からテザリングを選択できる