"データ容量爆発"の主要因は、オフィス文書の"肥大化"

――メールに添付されたPowerPoint資料を出先のモバイル端末で受け取ろうとしたら、ダウンロードにやけに時間がかかる。わずか5枚のスライドと言っていたのに変だなと思い、ファイル容量を確認すると30MB超。原因を調べたところ、スライド内に貼り付けられたJPEG画像が巨大であることが判明。1枚2MB程度の写真が、画素数を落とすなどの加工なしに何十枚も貼り付けられていた……。

こうした経験をしたことのある人は多いはず。デジタルカメラの性能が向上したことで、撮影できる写真の画素数はメガピクセル、1枚数MBが一般的になった。そうしたオリジナルの画像を単純にスライドに貼り付けてファイルを作成すると、出先のモバイル端末では受け取れないような大容量ファイルが簡単に出来上がってしまう。ネットワーク環境が整備され、数MBのファイルをメールに添付することが珍しくなくなった分、ついついそうしたファイルを作成して、送受信してしまいがちだ。

実は、企業が利用するストレージ容量が増加の一途をたどっている背景の1つには、こうしたユーザーが作成するオフィス文書の"肥大化"があると言われる。例えば、サムネイル画像を利用すれば数百KBで収まるPowerPoint資料が30MBに膨れ上がり、そのコピーが関係者10人に配布されれば、それだけで300MB近いストレージ容量がムダに消費されることになる。

実際、調査会社ITRの資料「ITR White Paper 2009 コラボレーション環境の理想と現実」によれば、業務で作成される資料の76%は「異なる複数の種類のファイルや文書を組み合わせて使用」されるもので、そのファイルや文書の内訳としては「デジタル画像や写真」が74%とトップに位置している。また、IDC Japanが2010年10月に発表した調査結果では、今後、ファイルベースの容量がストレージ全体の40%以上を占めるほどに増加すると予測している。ファイルベース容量に対する需要を拡大させる要因として、テキスト、イメージ、オーディオ、ビデオなど、生成されるファイルデータの多様化やデータ個数の増大に加えたことに加え、2010年以降はファイルサイズの大型化が挙げられている。つまり、業務で作成される資料の半数以上には、デジタル画像や写真などの重いデータが利用されており、そのことが、ファイルサイズを大型化につながるためにストレージ容量の増加を招く主な要因になっていると推定できるわけだ。

逆に言えば、個々のファイルを小型化する仕組みを作れば、ストレージ容量のムダは劇的に削減できることになる。企業のストレージ管理の分野で近年、こうした「オフィス文書の肥大化を防ぐ」というアプローチで注目を集めているのが、英国ニューパワーソリューションズが開発する「NXPowerLite」という製品だ。

データ圧縮と重複排除に続くテクノロジー

オーシャンブリッジ マーケティング部マネージャーの藤森俊吾氏

NXPowerLiteの国内総販売代理店のオーシャンブリッジで、マーケティングを手がけるマーケティング部マネージャーの藤森俊吾氏は、こう語る。

「ストレージ管理の分野では、データ容量を抑えるために、これまで大きくデータ圧縮と重複排除という2つのテクノロジーが注目を浴びてきました。それぞれ不可欠なテクノロジーなのですが、例えば、ネットワークの負荷軽減などのストレージ運用の問題を解決できないケースやファイルの種類によっては高い効果が期待できないケースがあります。NXPowerLiteのアプローチは、それらのデメリットを解消するものと言えます」

データ圧縮は文字通り、ファイルそのものを独自のアルゴリズムでデータブロック単位での圧縮を削減する方法だ。だが、もともと圧縮されているJPEG形式や、すでにZIPで圧縮されているOfficeファイル(docx、xlsx、pptx)では高い効果が得られにくい。ユーザーが利用する際に圧縮・解凍のための遅延(レイテンシー)が生じるというデメリットもある。一方、重複排除は、元データとの重複を排除して総ストレージ容量を削減する方法だが、元データを小さくする効果はないため、前述のIDC Japanの調査にあるように個々のファイルが大型化されている場合は、効果が得られにくい。

「NXPowerLiteのメリットは、ユーザーが利用するオフィス文書やデジカメ写真のファイル形式をそのままに、容量だけ圧縮する点にあります。仕組みとしては、オフィス文書内に貼り付けられた画像の画質・解像度を用途に合わせた最適値を見極め、それに応じた処理を自動で行うというもの。それにより、見栄えを損なわず、重いファイルを劇的に軽量化することが可能です。解凍ソフトなどは不要で、普通のオフィス文書とまったく同じように利用できます」(藤森氏)

NXPowerLiteはデスクトップ向け製品として2006年から国内販売を開始しており、ソフトバンクBB、海上自衛隊、パナソニックエナジーなど、すでに6600社、6万3000ライセンス以上の導入実績がある"ファイル容量軽量化ソフト"だ。さらに、昨年からは、ファイルサーバ向け製品を展開している。通常、企業内の「共有フォルダ」には、社員のデスクトップ環境に配布される以前の"オリジナルの肥大化文書"が蓄積されている。それらをあらかじめ圧縮しておけば、ストレージ容量の削減効果がさらに大きくなるからだ。

NXPowerLite開発元CEOが語る、ストレージ戦略のあるべき姿

ちなみに、NXPowerLiteによる圧縮率は、米海軍での実際の利用調査(NXPowerLite Trident Warrior Experimentation & Results, FORCEnet)で、PowerPointファイルが平均で88%(110MBから13.2MB)、Excelファイルが同76%(10MBから2.4MB)、Wordファイルが同84%(10MBから1.6MB)という結果だ。最適化したファイルを共有するかたちで利用していけば、ストレージ管理コスト、ネットワーク配信コスト、デスクトップでの展開コスト(表示にかかる時間)など、コスト削減効果はさらに高まることになる。

企業においても、社内外のコンピューティングリソースを自由に組み合わせて利用するクラウドコンピューティングが本格化しようとしている。クラウド環境への移行が進めば、ファイル容量の削減が直接的にネットワークコストやデリバリーコストの削減へとつながると言える。そんななかで、NXPowerLiteのアプローチは、企業のストレージ戦略にどのようなインパクトを与えることになるのか。

オーシャンブリッジでは、「データ容量爆発時代のストレージ戦略~データ圧縮、重複排除、それに続く第三のテクノロジーを比較検証『NXPowerLite Day 2010』」と題したイベントを11月12日に開催する。

基調講演には、NXPowerLiteの開発元であるニューパワーソリューションズのCEOマイクパワー(Mike Power)氏が登壇し、データ圧縮、重複排除、NXPowerLiteのテクノロジーについて、それぞれのメリット・デメリットを比較検証し、今後のあるべきストレージ戦略を描く。また、国内事例としても、1500名規模でNXPowerLiteを導入し、iPhone、iPadといったモバイル端末での利用を推進することで効果を上げているソフトバンクBBが登壇する。現在のストレージテクノロジーの潮流を知り、クラウド時代のストレージ戦略を探るうえで大きなヒントを与えてくれるはずだ。