HTV講演会
2009年、技術実証機(初号機)がほぼ完璧とも言える見事なフライトを見せた宇宙ステーション補給機「HTV」。2010年度は初の運用機となる2号機の打ち上げが予定されているが、宇宙実験棟(W-3)では、HTV2号機でリードフライトディレクタ(FD)に任命されている田邊宏太氏による講演が実施されていた。
HTVの運用において、全体をまとめて最終的な決断を下すのがフライトディレクタ(FD)の役割だ。打ち上げ後は24時間体制での運用になるため、数名のFDが交代で運用にあたるが、リードFDはその中でもリーダー的な立場である。初号機では、山中FDや麻生FDが前面に出ていたが、HTVは現計画でも7年7機、しかも延長される可能性が高いという長丁場のプロジェクト。両氏も引き続きFDとなるが、若手を鍛えるという意味で、田邊氏に白羽の矢が立ったようだ。
講演では、HTV初号機に関して振り返る内容が中心であったが、最後に種子島で組み立て中の2号機についても言及、順調に作業が進んでいる旨の報告があった。初号機では、スラスタの異常過熱やGPSソフトウェアのバグといったマイナーな問題もいくつか出ていたが、2号機ではこれらについてもすでに対処済みということだ。
8カ月半も宇宙に放置
研究開発棟(S-6)にて、「宇宙からただいま!『いや~キツかった~』」というタイトルで紹介されていたのは、「微小粒子捕獲実験及び材料曝露実験(MPAC&SEED)」。内容を紹介するコントが子供達にウケていたが、これは、人工衛星で使われる素材の耐久性がどのくらいあるのかを調べる実験(SEED)と、宇宙空間を飛んでいる微小な粒子を捕らえる実験(MPAC)から成り立っているもの。1つの実験装置に試料を乗せて、8カ月半の間、日本の実験棟「きぼう」の曝露部に設置されていて、2010年4月、山崎宇宙飛行士とともに地球に帰還した。
人工衛星ではポリイミドなどの素材が広く利用されているが、原子状酸素や紫外線などによって、打ち上げた後にそれがどう劣化したか、調べる機会はなかなかないのが現状。SEEDは、長期間実験できる国際宇宙ステーションを使って、いろんな素材の耐久性を検証したもので、開発中の新素材についても実験が行われた模様だ(ただし、論文発表前ということで、詳細な結果については教えてもらえなかった)。
ロボットアーム関連
宇宙ステーション試験棟(W-4)の3Fからクリーンルーム内を見られるのが最近の定番の1つであったが、この中にあったHTVの試験モデルが新展示館に移ったということもあり、今回は3Fの公開はナシに。その代わり、2Fで「きぼう」ロボットアームの操作訓練室が初めて公開。これは宇宙飛行士による訓練に実際に使われているそうで、室内への立ち入りはできなかったのだが、次に長期滞在する古川宇宙飛行士もここで訓練を行ったとのこと。
その隣には、「きぼう」での作業を3DのCG映像で紹介したコーナーも。これは、もともと宇宙飛行士の訓練用に作ったものを、公開用にアレンジした映像ということで、野口宇宙飛行士が2010年3月に実施した、子アームをエアロックから船外に出した作業を再現していた。
訓練を体験
いつも開場してすぐに整理券がなくなってしまうほど人気なのが、宇宙飛行士の模擬訓練体験ツアー。宇宙飛行士の訓練や選抜などに利用される宇宙飛行士養成棟(C-5)の空き時間を有効に活用するため、民間企業のAESが有料の体験ツアーを提供しているのだが、一般公開ではこのダイジェスト版を無料で楽しめるようになっている。
前回までは、なるべく大勢に体験してもらうために内容はかなり圧縮されていたが、今回は各コースとも人数を8名に制限し、その代わりに体験時間を50分に延長。より有料コースに近い内容が体験できるようになっていた。有料コースは普段も実施されているので、興味がある人はAESのWebサイトを参照のこと。
それにしても遠い「衛星間通信実験棟」
今回の一般公開では、珍しく衛星間通信実験棟も公開されていた。この施設だけほかと大きく離れており、かなり歩かないと辿り着けないのだが、よりによってスタンプラリーのスタンプがここにあるため、景品をもらうためにやむなく足を運んだ人も多いだろう(まぁそのくらいしないと、誰もここまで来てくれないという気もする…)。とは言え、このサイズのパラボラアンテナを間近で見る機会もなかなかないので、これはこれで面白い。
新商品をチェック
個人的には、物販コーナーでの買い物も楽しみの1つだ。筆者は今回、イカロス君ストラップと「はやぶさ」再突入クリアファイルなどを購入した。