本機は、前モデルの「MP640」より搭載インクが1色増えて6色になり、従来の最上位機種「MP990」と同等になっている。増えたのはグレーインク。その効果がもっとも分かりやすいのがモノクロ写真プリントだ。たとえば、ハイライト部分のわずかなトーンの変化やシャドウの微妙な色の変化などが、より滑らかに再現される。

写真用紙に画像をプリントしているところ。ノズル数が合計6144ノズルもあるため、A4全面フチなし(きれいモード)でも非常に高速にプリントされる

モノクロプリント以外でも、グレーインクがもたらす効果は大きく、カラーの色再現性が従来より向上している。とくに分かりやすいのが、人肌などの彩度の低い色だ。5色インクの場合、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)のような色味のあるインクを混ぜて彩度の低い色を表現するため、色かぶりや色の転びが生じてしまうことが少なくない。しかし、本機の場合は下地にグレーを使うため、CMYの使用は最小限で済む。そのため、色転びの少ない安定した色再現が可能になっている。

参考までに、実際に写真をプリントしたあと本機のスキャナ機能を使ってスキャンした画像と、オリジナルの写真を載せておく。スキャンという工程が入っているため単純比較はできないが、大まかな傾向は分かるはずだ。なお、肉眼でプリントを見た限りでは、粒状感に関しては印画紙の写真とほとんど区別がつかないレベル。色再現に関してもオリジナルにかなり忠実で、今回試しにプリントした画像については、彩度の低い部分も色転びや色かぶりは見られなかった。

それぞれ、オリジナルの画像と、プリント画像、プリントの一部を切り出したものを並べてみた(プリント画像は、いずれも本機のスキャナ機能を使ってスキャンしたもの)。スキャン時に明るく補正されてしまったため、オリジナルからだいぶ色が変わってしまっているが、実際にプリントされたものはオリジナルに非常に忠実。プリントの一部を切り出した画像を見ても分かるように、彩度の低い色やシャドウ、ハイライトなどの微妙な階調が滑らかに再現されている