8月1日、東京神保町のIIJ大会議室において、Security.GSがさまざまな業界の人、生徒・学生などがオフラインで繋がる事を目指したのがセミナー「Security.GS Fes 2010 in 東京」を開催された。

Security.GSは2009年10月より活動を開始した組織で、当初はセキュリティ情報の配信を行うウェブマガジン「Security.GS Magazine」の運営を行うために設立されたが、現在では中高生を中心に現在23名のスタッフ(うち社会人4名)で、セキュリティのほか、ネットワーク技術、エレクトロニクス技術などの分野に向け、さまざまな情報発信を行っている。

学生主体の組織であるため、当初は規模が大きくなるようなことをやるとは生意気だという声もあったという。が、そうした声の一方、その意気を買って、当日の会場を提供したIIJのようにスポンサーとしてバックアップを行い、彼らの活動に声援を送る企業も出てきたという。

当日は、司法書士による未成年でも起業が可能か、といった話や、現役中学生iPhoneアプリ開発者によるスマートフォンアプリケーション開発の現状、ドワンゴの中の人によるHTML5の話、そして、CPUの話といった、幅の広い話題が取り上げられた。

筑波大学2年生の伊藤剛浩君

CPUの話としては、筑波大学2年生の伊藤剛浩君が「ソフトウェアを支えるハードウェア」と題して話をしたので、その様子をお届けしたい。

伊藤君は「CPUの創りかた」(発行:毎日コミュニケーションズ)を読んで自分でもCPUを作りたいと思ったことがきっかけとなって、CPUの本格的な勉強を開始したという。とは言っても、今回の講演は高校生や情報系の大学生などが中心となったセミナーということで、アーキテクチャ的な話や実際にIPなどを組み合わせてASICをどう作るのかといった話ではなく、FPGAを活用することで、今では誰でもCPUを作ることが可能となったという話を中心に説明、そうしたCPUが活用できる現在におけるCPUの進化の背景(CPUの発熱の増大やマルチコア化へのテクノロジーのシフト)、マルチコアにおいても1コアの処理性能の向上が必要である理由などを説明した。

伊藤君のCPU講演のもくじ。現状のCPUについての簡単な説明や高性能化に向けた各種技術の説明が行われた

簡単に説明したといっても、マルチコア時代におけるCPUコアの性能向上については多めに時間を割き、アウトオブオーダーやパイプライン、条件分岐予測、SIMDといった各種技術の話やIntelのIntel Turbo Boost TechnologyやHyper-Threading Technologyといった技術についてもその特性、弱点などの説明を行った。

SMT(Simultaneous Multithreading:同時マルチスレッディング)に関する説明などはかなり詳しく説明された

また、すべての講演が終了後、セキュリティ系、デザイン系、起業系、CPUの作成の4つに分かれたワークショップが実施された。CPUの作成は、実際に伊藤君が作成したFPGAボードとソースコードを活用してCPUを作って遊ぼうというワークショップ。

このFPGAボードの製造はインフローが運営するP板.comが担当。FPGAにはAlteraのCyclone IIIを採用し、これに伊藤君が作成した8ビットCPUを搭載して、LEDの点灯を行おうという試みだった。

赤いつまみを回すとクロック速度が変わりLEDの点灯タイミングが変化するという仕組みも導入。赤いつまみの値を「0」にするとマニュアル操作となり、スイッチ2(赤いボタン右側)を押してクロックを調整することが可能となる。ちなみに各部品は伊藤君を始めとした筑波大の学生が頑張ってはんだ付けを行ったとのこと

同ワークショップへの参加者は手始めにCPUの仕組みについて、クロックの概念、プログラムカウンタを活用したアドレスの生成やジャンプ、条件分岐などのほか、各レジスタセットやNOP、MOVE、NOT、OR、AND、JUMPなど14個の命令セットなどの説明を受け、実際にFPGAボード上のFPGAへLED点灯用のプログラムの書き込みをAlteraの論理合成ツール「Quartus II」を活用して行い、LED点灯を行った。

ワークショップの様子。FPGAボードは本当は8枚作成したのだが、当日のPCとの相性が良くなく、稼動した4枚を活用して行われた。ちなみに参加した4名のうち3名が情報系の大学生で、残り1名が高校生とのことだった

そして最後にこのCPUをどうすれば高機能化が可能か、といった解説が行われ、CISCとRISCに関する説明が行われ、それぞれのメリット、デメリットを提示、将来的な方向性が示された。

なお、同セミナーは8月7日に京都でも内容は異なるが「Security.GS Fes 2010 in 京都」と題して京都リサーチパーク町家スタジオにて行われる予定のほか、Security.GSでは今後も小規模のワークショップの開催や1年に1回はこうした大きなイベントを行っていきたいとしている。