サイバーリンクは、これまでのPowerDVD 10をさらに機能強化したPowerDVD 10 Mark-II(以下、Mark-IIと略記)の無償アップデートを発表した。まずは、PowerDVD 10についてであるが、2010年3月よりダウンロード版が販売されている(パッケージ版は4月から)。ラインナップには、最上位のUltra、そしてDeluxe版やStandard版などがある。価格は、最上位のUltraがダウンロード版で11,800円、パッケージ版が13,440円となっている。詳細は、サイバーリンクのWebページを参照してほしい。特に3D再生においては、必要なハードウェアが異なるので、若干注意が必要である(後述する「PCで3D再生を行うには」でも確認方法を紹介する)。

図1 PowerDVD 10

さて、今回のMark-IIへの無償アップデートの対象となるのは、

  • PowerDVD10 Ultra 3D通常版/アップグレード版(ダウンロード版/パッケージ版)
  • PowerDVD10 Deluxe通常版/アップグレード版(ダウンロード版のみ)

PowerDVD 10 Standard版やOEM版、PowerDVD 9以前の旧バージョンなどはアップグレード対象外となっている。アップデート方法は、PowerDVD 10中のポップアップから進めるダウンロードページ、またはダウンロードページからダウンロード可能である。

注目のPowerDVD 10 Mark-II新機能

今回のMark-II版は、ブルーレイ・ディスク・アソシエーション(BDA)より正式に取得したBlu-ray 3Dロゴに対応し、Blu-ray 3D規格への準拠によりPC上でBlu-ray 3Dタイトルを楽しめることが、なによりもまず大きな特徴である。

図2 PowerDVD 10 Mark-II起動画面

これまでのPowerDVD 10とMark-II版の機能を比較したのが、表1である。

表1 PowerDVD 10とMark-II版の機能比較

機能 Ultra 3D Ultra 3 Mark-II Deluxe Deluxe Mark-II
Blu-ray 3D再生 × × ×
DVDのリアルタイム3D変換&再生(DVDの2Dto3D機能)
2Dビデオファイルのリアルタイム3D変換&再生(ビデオファイルの2Dto3D機能) × ×
ネイティブ3Dビデオファイル再生(side by side 3Dファイル) × ○(注) × ○(注)
アナグリフ形式3Dのサポート × ×

(注):ネイティブ3Dビデオファイルの再生は後日、再アップデートにより対応の予定

もう1つ注目したい新機能が、2Dビデオファイルのリアルタイム3D変換&再生(ビデオファイルの2Dto3D機能)である。これは、PCに保存された既存の動画ファイル(MP4やAVIなど、PowerDVDで再生可能な動画ファイル)を3D化して再生できる機能だ。これまでもDVDのリアルタイム3D変換&再生機能は存在した。しかし、この機能により、もっと手軽に自由に3D映像として、手持ちのコンテンツを楽しむことができるようになった。

3D再生の仕組み

サイバーリンク社では、「3D Zone」という特設サイトを開設し、3Dの仕組みやさまざまな情報提供を行っている(図3)。詳細はそちらのWebサイトをご覧いただくとして、ここでは簡単に3Dの仕組みと再生方式などを解説しよう。

図3 サイバーリンクの3D Zone

まず、3Dの仕組みであるが、図4の左を見ていただきたい。人が物を見る際に、左右の目の位置の違いにより、少しではあるが、同じ物でも違った角度や状態で認識をする(視差とも呼ぶ)。この左右の目からの視覚情報を脳がひとまとめにすることで、立体的に感じるのである。3D映像では、意図的に左右の目に対応した映像を出力する(視差を作成する)。しかし、そのままでは、両方の目に同じ映像が映ってしまう。そこで使われるのが、3Dメガネである。3Dメガネを経由することで、左右それぞれの目に対応した映像のみを届くようにするのである(図4の右)。結果、脳は立体的な映像として認識するのである。

図4 3D映像化の仕組み(サイバーリンクの特設サイト3D Zoneより引用)

3D映像を実際に実現するには、いくつかの方法がある。まずは、アナグリフ方式と呼ばれるもので3Dメガネに赤と青のフィルタを使ったものである。かなり昔からある方法で、簡単に3D映像が作成できる。しかし、映像の質などはさほど高くはない。偏向方式は、光の波長を応用したものである。元画像を垂直方向と水平方向に分離し、左右の画像とするのである。3Dメガネやモニタには、偏向フィルタがコーディングされる。ハード的には安価で実装できる点が注目される。しかし、解像度が半分になるなど画質の劣化がおきやすく、また映像全体が暗くなりやすい、見る位置によって影響を受けるといった欠点などが指摘されている。

最後に紹介するのはフレームシーケンシャル方式である。これは、モニタに左右の映像を交互に表示する方法である。1秒間に左右それぞれ60枚の映像が出力される。3Dメガネはアクティブシャッター方式のメガネを使い、高速にレンズの開け閉めを行い、それぞれの目用の映像を透過させる仕組みである。この方式では、映像の解像度が下がることもなく、プロジェクタや大画面でも高精度の3D映像を楽しむことができる。しかし、3Dメガネなども比較的高価なものが多い。また、蛍光灯などの影響を受けやすいといった欠点も指摘されている。PC用には、NVIDIAが自社のグラフィックカード用に3D Visionという製品を提供している。

偏向方式とフレームシーケンシャル方式であるが、現時点では、どちらにも一長一短という感がある。PC用の3D再生環境とした場合、若干、質は落ちるが偏向方式の利便性は捨てがたい。一方、大画面での3D再生に関しては、まちがいなくシーケンシャル方式に軍配があがるだろう。このあたりは、利用環境なども含め検討すべきであろう。

3Dを体験レポート

さて、今回はサイバーリンク社を訪問し、実際に3D映像を体験させていただいた。残念ながら本誌では、どうやっても3D映像をそのまま再現して紹介することはできない。筆者の個人的な感想になってしまう点をあらかじめ了承いただきたい。まずは、2Dビデオファイルのリアルタイム3D変換&再生であるが、Mark-IIでごく普通に動画を選択し再生するだけである。3Dの設定は、ナビゲーションバーにある[3D]ボタンをクリックする。3Dディスプレイの設定の画面となる(図5)。

図5 3Dディスプレイの設定の画面

「3Dシーン深度」とあるが、ここで奥行き感などを調整する。もう1つは、モニタなどにあわせ3D再生方式(偏向方式など)を選択する。基本的には、この2つ設定を行うだけで、3D映像を楽しむことができる。実際に、ごく普通の2D映像を視聴したのだが、Mark-IIで再生するとCGなどを使った立体感のあるシーン、実写と文字要素など組み合わせたシーン、山や森、海などの自然を遠方から撮影した映像やシーンでは、3D感を実感できる。アニメなど見慣れた映像の中のごく普通の雲の動きが、じつにうまく3D映像として表現されていたのも印象に残った。

そして、Blu-ray 3D再生。最初から3Dオーサリングが行われ、その演出が施されたコンテンツを視聴したのであるが、さすがに非常にリアルに3Dを感じることができた。花火のシーンなどでは、実際に顔の前にまで花火が飛んできているような感覚にさえなる。しかし、現時点ではBlu-ray 3Dに対応したコンテンツはさほど多くはないので今後の普及に期待したいところである。

となると、現状ではMark-IIの2DビデオファイルやDVDの3D再生機能が活きてくる。これまでたくわえてきたコンテンツを手間いらずで、3D映像として楽しむことができるのである。映画やTV放送だけでなく、自分で撮影したビデオクリップなども3D化させることができる。筆者も手持ちのコンテンツで、これを3D再生したらどうなるのであろうといった興味がわいてきた。また、ゲームなどでも今後3D再生を利用したコンテンツの登場も予想される。余裕があれば、ぜひ楽しみたいという印象であった。

PCで3D再生可能かをチェック!

先ほど紹介したWebサイト「3D Zone」には、各方式に対応するハードウェアなどの情報も掲載されている(図6)。導入にあたっては、ぜひ参考にしてほしい。

図6 PCで3D再生に対応するハードウェア

さらに実際に3D再生が可能かを確かめる方法を紹介しよう。サイバーリンクでは、「CyberLink BD & 3D Advisor(ベータ)」を無償で提供している。このツールを使うことで、ユーザーの環境が3Dに対応しているかを確認できる。

図7 CyberLink BD & 3D Advisorダウンロードページ

実際にダウンロードし、起動したのが図8である。

図8 CyberLink BD & 3D Advisor

ここでは、Blu-rayディスクや3Dコンテンツに対応するかをハードごとに確認できる。実際に実行したものが、図9である。

図9 CyberLink BD & 3D Advisorの実行結果

項目ごとに対応・なしが表示される(筆者の環境では3Dディスプレイがないことがわかる)。3D再生は一般のTVなどでも、対応する機種が増えてきた。しかし、その価格帯は正直、筆者の感覚ではまだ高価なものが多い。そこで、PCに目を向ける。偏向方式ならば、3D再生に対応したモニタを購入することで、3D再生を楽しむことができる(価格も実勢で4万円前後である)。

グラフィック性能も現時点では、さほど高いレベルが必要ではない。また、国内メーカからも3D再生対応のPCも登場している(再生ソフトにはMark-IIがプレインストールされている)。ハードに詳しくない方には、よい選択肢になるのではないだろうか。価格的には3D再生TVよりは安価に購入でき、3Dが手軽に楽しめる。手持ちのコンテンツが豊富であるなら、楽しみも増えるというものだ。最後に、「百聞は一見にしかず」ではないが、3Dは自身で体験してみないとわからない。最近では、量販店などでデモをすることが多くなっている。興味を持ったのであれば、ぜひ一度体験してみてほしい。