NVIDIAからDirectX 11世代のデスクトップ向け新GPU「GeForce GTX 460」が登場する。開発コードネーム"GF104"と呼ばれていたミドルクラスのGPUで、名称からは"Fermi"すなわち"GF100"系のGPUコアを採用するものと見られるが、そう単純な話でも無い様だ。実機の入手に成功したので、さっそくベンチマークレビューをお届けしたい。

「GeForce GTX 460」のGPUパッケージ

さて、つい先日に「GeForce GTX 465」が発表されたばかりなのに、さっそくGTX 460が登場するというのは如何なものかと思っていたのだが、型番が近い割に両者の間には結構な違いがあるようだ。そもそもGTX 465はGTX 480/470と同じGF100コアのGPUダイを採用したスペック制限版なのだが、GTX 460はGPUダイからして別物な感じだ。まずは判明している仕様を以下の表にまとめたので、確認しておこう。

GTX 460 768MB版 GTX 460 1024MB版 GTX 465 GTX 470 GTX 480
コア名称 GF104 GF104 GF100 GF100 GF100
プロセス 40nm 40nm 40nm 40nm 40nm
CUDA Core(SP) 336基 336基 352基 448基 480基
Texture Unit 56基 56基 44基 56基 60基
ROPS 24基 32基 32基 40基 48基
コアクロック 675MHz 675MHz 607MHz 607MHz 800MHz
シェーダクロック 1350MHz 1350MHz 1215MHz 1215MHz 1401MHz
メモリタイプ GDDR5 768MB GDDR5 1024MB GDDR5 1024MB GDDR5 1280MB GDDR5 1536MB
メモリ接続幅 192bit 256bit 256bit 320bit 386bit
メモリクロック (データレート) 900MHz (3600MHz) 900MHz (3600MHz) 801.5MHz (3206MHz) 837MHz (3348MHz) 924MHz (3696MHz)
DirectX/ Shader Model DX11/ SM5.0 DX11/ SM5.0 DX11/ SM5.0 DX11/ SM5.0 DX11/ SM5.0
最大消費電力 150W 160W 200W 215W 250W
発表時参考価格 199ドル 229ドル 279ドル 349ドル 499ドル

わかりやすいのは、GF100では、以前から判明していたとおり、32基のCUDA Coreごとに「Streaming Multiprocessor」と呼ばれるアレイを構成しており、このアレイを16単位(つまりCUDA Coreが512基)分備えるのがGF100=Fermiで、製品としては、アレイ×15のGTX 480と、アレイ×14のGTX 470、アレイ×11のGTX 465が存在していたわけだ。GTX 460の336基というCUDA Core数が"32"で割り切れない点からも、GF100とはアーキテクチャが異なると推測できる。実際、この後のベンチマーク結果でもスコアの出方に特徴的な違いが見られたので、単なるGF100ベースとは考えないほうが良さそうである。

「GeForce GTX 460」のCUDA Core構成。SM(Streaming Multiprocessor)アレイあたりのCUDA Core数は48基で、フルスペックで8アレイのところ、GF100と同じように1アレイ無効にして7アレイとしたのがGTX 460のようだ

さて、そのGTX 460の仕様でテスト前に確認しておきたいポイントがもうひとつ。GTX 460は、メモリ容量の違いから2モデルをラインナップしているわけだが、よく見るとROPユニットの数とメモリ接続幅まで違う。どんな事情があるのかはうかがい知れないが、性能へのインパクトがそれなりにありそうな違いだけに、どちらも「GTX 460」という名称なのは少しわかりづらいのでは? と思う。ちなみにカード価格の方は、NVIDIAによる参考価格で768MB版が199ドル、1024MB版が229ドルと、30ドル程の価格差が設定されている。

今回の機材と環境、オーバークロック版も用意

GeForce GTX 460は、いわゆる200ドル価格帯の製品であり、ライバルの現行製品で競合するのは、すぐ上が250ドルで登場した「ATI Radeon HD 5830」で、すぐ下が159ドルで登場した「ATI Radeon HD 5770」ということになる。NVIDIAの日本担当者の話によれば、店頭での実売価格でもHD 5830以下に落ち着く見込みだそうだが、HD 5830もだいぶ価格がこなれてきているので、当初はHD 5830より少し高めくらいのお値段になるだろう……と予想した。というわけで、対抗GPUはHD 5830に設定させていただくこととし、MSIの「R5830 Twin Frozr II」を用意。GF100との比較には、GTX 465を搭載するMSIの「N465GTX Twin Frozr II」を利用する。

Radeon HD 5830を搭載するMSIの「R5830 Twin Frozr II」

GeForce GTX 465を搭載するMSIの「N465GTX Twin Frozr II」

GTX 460のカードとしては、都合3枚の製品を揃えてみた。うち2枚はリファレンスデザインの「GeForce GTX 460 768MB版」と「GeForce GTX 460 1024MB版」で、もう1枚がメーカー純正オーバークロック版でMSIの「N460GTX Cyclone」。N460GTX Cycloneは、コア675MHz→728MHz、シェーダ1350MHz→1450MHzと、結構なOCが施されている製品となっている。今回OC版をあえて混ぜたのは、GTX 460では、各カードメーカーが当初から純正OC製品の投入を積極的に行なうと見られているからである。というのも、情報筋から「定格電圧のままでコアクロック675MHz→800MHzくらいは簡単」という景気の良い話が聞かれるほど、どうやらGTX 460はOC耐性が高いようなのだ。

「GeForce GTX 460」のリファレンスカード。補助電源は6ピン×2

GTX 460の純正オーバークロック版でMSIの「N460GTX Cyclone」

「GeForce GTX 460」の768MB版と1024MB版。見た目は一緒で、基板も同一のようだ

GPUパッケージの周辺にメモリチップが配置されており、右下に2チップ分の空きパターンがある写真の個体が768MB版。1024MB版はここにチップが実装される

左からRadeon HD 5830、GeForce GTX 465、GeForce GTX 460と並べてみた。GTX 460はカードサイズがかなり短くなっていることがわかる

そのほか主な環境を以下の表にまとめる。

GTX 460 768MB GTX 460 1024MB GTX 460 OC GTX 465 HD 5830
カード リファレンス リファレンス MSI N460GTX MSI N465GTX MSI R5830
GPU GTX 460 768MB GTX 460 1024MB GTX 460 768MB GTX 465 HD 5830
Driver GeForce Driver 258.80 Cataryst 10.6
CPU Intel Core i5-750(2.66GHz) ※Turbo BoostはOFFで利用
M/B ASUS P7P55D-E XL(Intel P55 Express)
Memory Corsair XMS3 DDR3 SDRAM 1333MHz CL9(2GB×2)
HDD Seagate Barracuda 7200.11(500GB)
OS Windows 7 Ultimate 64bit

GeForce各モデルをGPU-Zで確認してみた画像。一部表示がおかしいが、クロックなどは実際の数字のはずなので一応確認しておこう。左上から順にGTX 460 768MB、GTX 460 1024MB、GTX 460のOC版、GTX 465となっている