コンピュータに慣れてきたユーザーほど、バックアップを取らない傾向にある。なぜならコンピュータに初めて触れたユーザーは、説明書や注意書きの文言に素直なため、OSの標準機能もしくはバンドルされたバックアップツールを用いて、ユーザーデータのバックアップを行う場合が多い。その一方で上級者と呼ばれるユーザーは、ハードウェア障害などでコンピュータが起動しなくなった、もしくはデータが消失した時に生じるリスク(復元作業やデータ再作成に要する時間や労力)を踏まえ、バックアップ作業を欠かさない。

そして初心者と上級者のはざ間にいる中級者。彼らはコンピュータの操作に慣れることでデータの重要性を軽視し、おろそかに扱うようになるため、ことさら面倒なバックアップ作業を、ついついサボってしまうのである。

確かにバックアップ作業は面倒だ。コンピュータ中級者が怠けてしまう気持ちもわかる。だが、本来同じデータを複数のデバイスに保存し、一方がハードウェア障害などで失っても、残されたデータを使えるようにするバックアップ作業を軽視すると、人為的ミスやウイルスなどで、長年蓄積していたデータが使用できなくなる可能性は非常に大きい。

また、OSの再インストールやアプリケーションの再セットアップといった作業は、筆者が述べるまでもなく繁雑な作業である。だが、バックアップがあれば、前述のような作業を強いられることはない。正に「備えあれば憂いなし」なのである。

様々なバックアップ方法と種類

バックアップという作業に少し興味を持たれた方に、バックアップの基本的な方法を解説しよう。一般的なのがユーザーが作成したデータを対象にバックアップを作成する「ユーザーデータのバックアップ」である。ユーザーフォルダ(\Users\{ユーザー名})下にあるドキュメントフォルダやピクチャフォルダなどに格納されたデータファイルをバックアップする手法だ。対象となるデータ量によって異なるが、所要時間は比較的早い。

もう一つは「フルバックアップ」。OSを導入したパーティションもしくはボリュームを対象にドライブをイメージファイル化し、バックアップするというもの。ユーザーデータのバックアップと異なり、OSやアプリケーションの再インストールおよび設定は必要ないものの、バックアップに要する時間は長くなってしまう。ちなみにイメージファイルを作成する経緯から「イメージバックアップ」と称されることもある(図01~02)。

図01 ユーザーデータのバックアップ。軽度なため毎日実行するバックアップに向いている

図02 フルバックアップもしくはイメージバックアップ。OSを導入したパーティションを丸ごとバックアップする

バックアップの種類も大別すると、「完全バックアップ」「差分バックアップ」「増分バックアップ」の三種類となる。一つめの完全バックアップは、文字どおり必要なデータをすべてバックアップする方法であり、差分バックアップは前回行った完全バックアップ時から変更が加わったファイルや追加されたファイルのみをバックアップする方法だ。そして増分バックアップも完全バックアップをベースとし、変更が加わったファイルや追加されたファイルがバックアップ対象となる点は差分バックアップと一緒。しかし、次回増分バックアップを実行する際、ベースとなるのは前回増分バックアップをおこなったデータをベースになるため、バックアップ時間が短縮される(図03~04)。

図03 差分バックアップは最初に作成した完全バックアップをベースにするため、差分データが増大していく

図04 増分バックアップは前回のバックアップデータをベースにするため、管理しやすいが復旧時はすべてのバックアップデータが必要となる