宇宙航空研究開発機構(JAXA)は6月30日、都内で山崎直子宇宙飛行ら7名のSTS-131ミッションクルーが参加したミッション報告会を開催した。

会場入り口にはSTS-131ミッションポスターやスペースシャトル「ディスカバリー号」の模型、船外活動用の宇宙服やスペースシャトルの打上げや帰還時に着用する宇宙服(パンプキンスーツ)などが展示され、来場者が記念撮影を行っていた

当日、会場となったメルパルク東京には日本全国から850名の聴講者が来場、STS-131ミッションの概要や宇宙でのできごとの説明に加え、山崎宇宙飛行士が呼びかけた俳句募集の選考結果などが発表された。

山崎宇宙飛行士の俳句募集の呼びかけに応じ、「きぼう特別賞」を受賞した10名の表彰式も開催された(1名は米国カリフォルニア州在住の方のため、欠席だったが、残りの9名は日本国内、北海道や高知、富山などからこの日のために東京にやってきたという)

冒頭に挨拶に立ったJAXAの立川理事長は、スペースシャトルと日本人宇宙飛行士の関係に触れ、「これまでスペースシャトルに搭乗した日本人は恐らく最後となるであろう山崎宇宙飛行士を含めて全部で7人、12回のフライトが行われた。これにより日本の宇宙活動がかなり進んだ」としたほか、国際宇宙ステーション(ISS)で先に滞在していた野口聡一宇宙飛行士と、2人の日本人宇宙飛行士が同時に宇宙に滞在したことが日本の宇宙科学史にとって大きな意味を持つことを強調した。

3部構成のミッション報告会

同報告会は大きく3部に分かれて行われた。第1部はSTS-131クルーによるミッションの報告およびそれに関する質問、第2部は国内外から1479件の応募があった俳句の選考結果の発表、そして第3部がトークショー「STS-131クルーが語る国際宇宙ステーション」と題した国際宇宙ステーション計画によって得たもの、意義、今後の利用計画などが語られた。

STS-131ミッションクルー7名。左からアレン・ポインデクスター船長、ジェームズ・ダットン宇宙飛行士、リチャード・マストラキオ宇宙飛行士、ドロシー・メカフ・リンデンバーガー宇宙飛行士、ステファニー・ウィルソン宇宙飛行士、山崎直子宇宙飛行士、クレイトン・アンダーソン宇宙飛行士

ISSが建造される長い時間の中、人、物、双方の運搬の主役を担ってきたスペースシャトルは2010年中に全機退役が決定している。シャトルが退役した後、人間を運ぶのはロシアのソユーズのみとなる。一方、物資を運ぶ方法は色々と考えられるが、その中で最大級のものが6tの貨物を運ぶことが可能なHTVであり、山崎宇宙飛行士は「実験装置などを運ぶことができるという意味で米国でも期待されている」とするほか、スペースシャトルの退役について日本人の立場として、「スペースシャトルからは日本も色々と学んだ。最初の打ち上げからここまで、すべてのフライトミッションに感謝している。スペースシャトルがなければISSの完成もなかった」とし、今後の宇宙開発に向けて、2つの希望、1つがより多くの人が宇宙にいけるようにしてもらいたい、ということ。そしてもう1つがスペースシャトルの軌道が上空400kmであったが、将来的には、より高い軌道での人間活動が実現されれば、ということを述べた。

STS-131ミッションでは500kg級の実験装置が日本の実験棟である「きぼう」に運び込んだが、こうした巨大な装置の運搬については、HTVがしばらくの間は担うことになる可能性が高い。現在、きぼう内では10個のラックがあり、そのうち5つが米国の実験、残り5つが日本の実験に用いられているが、そのきぼうについて、STS-131クルーであるクレイトン・アンダーソン宇宙飛行士は「日本人はきぼうの存在をほこりに思って良い」とし、その理由を「静かできれいな場所で、住むにも働くにも遊ぶにももってこいの場所だから」と表現した。

また、STS-131のミッション中は、ISS内に史上初めて4人の女性が滞在することとなった。こうした女性の宇宙飛行士の増加について、ステファニー・ウィルソン宇宙飛行士は、「現在、宇宙飛行士の20%が女性。色々なトレーニングを受ける中で、女性でも男性でも同じことができるようになった。だから、女性がコマンダーになったり、船外活動(EVA)なども男性同様にできるようになったり、さまざまな活動ができる今の現状は、非常に宇宙を目指す女性にとって良い状態になってきている。ぜひ、宇宙飛行士を目指したい女性は、理系のエンジニアを目指し、チャンスを掴んでもらいたい」と、宇宙を目指す女性に向けたメッセージを送った。

山崎宇宙飛行士は、15日間のミッションフライトについて、「何もかも初めてで、すべてが美しかった」と感想を述べたほか、ISSについても、「宇宙空間にあれだけ巨大な建造物を築いたに人間のすごさを感じた」と表現。ISSに関与することは日本にとって初めての本格的な宇宙での有人活動ということで、そういった意味では装置などをどう設計すれば過酷な環境でも対応可能なのかなどが学べたことに意義があったほか、CO2を吸収し、O2へと再生したり、尿から水を作るなどのシステムを活用することで、「そうした成果の1つひとつが将来の地球を生かすことにつながる知識として役に立っていく」と、地球環境のミニチュアのようなISSを活用していくことが、地球そのものを生かしていくことにつながっていくとした。

また、ISSの活用については山崎宇宙飛行士に加えて、アレン・ポインデクスター船長が「ISSは宇宙を探査するためにあるものだが、それは人間という生き物を知ることにつながる。自分たちが暮らす宇宙というものを知ることは地球そのものを学ぶことと同様に重要であり、それを国際協力の下で進めていくことは非常に重要な意味を持っていく」ことを強調した。