ソフトバンクは6月25日、定時株主総会の後に「新30年ビジョン発表会」を開き、代表取締役社長の孫正義氏がスピーチを行った。今年で創業30年を迎えるソフトバンクの、次の30年を見据えた理念とビジョンや戦略などが語られた。孫氏自身が「現役としてはおそらく最後となる、最も重要なスピーチ」と前置きした通り、約2時間にわたる壮大なスピーチとなった。

冒頭で孫氏は、これから語る30年のビジョンについて、「情報革命で人々を幸せに」と結論を述べた。その上で、「幸せとは何か」「悲しみとは何か」についてTwitterで意見を募ったことを紹介。悲しみについては「死・孤独・絶望」、幸せについては「生きていること・自己実現・愛し愛されること」が意見として多く寄せられたことを明かした。そして、幸せの輪を広げていき、悲しみを減らしたいと決意を述べた。

ソフトバンク30年の歩み

続いて、これまで30年の歩みが説明された。コンピュータの時代がやって来ることを予見し、ソフトを販売する企業としてソフトバンクを創業したことや、インターネットの時代が来るとしてYahoo! JAPANを設立したこと。ADSLサービスのYahoo! BBでブロードバンドのインフラを整備し、次はモバイルの時代だとしてVodafoneを買収し携帯電話事業に参入したことなど、常に先頭に立って時代を切り開いてきたことを強調。「情報革命のためにすべての壁を乗り越えてきた」と述べ、これからもチャレンジは続くと締めくくった。

さらに孫氏は、ADSLで3,000億円の累積赤字を抱えたりしながらも、歯を食いしばって頑張ってきた結果として、現在日本で3位の営業利益をあげる企業に成長したことを説明。その上で、そういう時こそ原点に戻る必要があるとした。また、「創業当時から志は変わっていない」と述べた。

300年前の世界

次に、具体的なビジョンの説明に移ったが、孫氏は「自分たちがいなくなっても、会社は存続していく」として、30年でなく300年後のビジョンを語った。まず、「未来を見据えるには過去から学ぶ」と述べ、今から300年前がどのような時代であったかを振り返った。

庶民の平均寿命が33歳であった当時は、産業革命の時代であり社会の変革期にあった。機械の登場により仕事を奪われた人々の間では、機械の排斥運動も起きたということを指摘。人間と機械が共存している現在と照らし合わせ、機械によるビッグバンとパラダイムシフトが起きたとした。

そして、これから300年の間には、情報革命のビッグバンが起こると予想し、現在はまだ、パラダイムシフトの入口に過ぎないと述べた。

コンピュータの進化

引き続いて孫氏は、コンピュータの進化について触れた。コンピュータと脳細胞のメカニズム似ているとして、2018年にはトランジスタが処理能力で人間の脳を超えると予想。その後は脳を超えるトランジスタが登場すると述べた。

また、脳の特長を「データとアルゴリズムを自動的に獲得する」点だとし、誰かのプログラミングにもとづくのではなく、脳と同様に自動で学習する「脳型コンピュータ」が現れると予想した。

さらに、脳のもう一つの重要な機能を感情であると述べ、「コンピュータに感情を持たせることを許してよいか、という議論になるだろう」と指摘した。

孫氏は、人間と脳型コンピュータが共存していく社会について、平均寿命が200歳になったり、脳からチップに通信し、さらにチップ同士が無線で通信して自動翻訳が可能になるのではないかと大胆予測。その実現のために、優しさと愛情を持って、人々の幸せにのために情報革命を広めて行きたいと語った。

30年後のビジョン

300年と比べれば30年はあっという間だとしながらも、孫氏は30年後には、無限大のストレージ、無限大のクラウド、超高速のネットワークが実現し、人々のライフスタイルを劇的に変えると述べた。

また、歴代の時価総額トップ10だった業種を引き合いに出し、その時代に最も必要された企業がトップ10に入っていると指摘。世界の人々から最も必要とされる企業になりたいと述べ、30年後に世界のトップ10に入り、時価総額200兆円規模となることを目標に掲げた。さらに、現在約800社以上あるグループ会社を、30年後には5,000社に拡大したいと語った。

そして、最先端のテクノロジーを活かし、最も優れたビジネスモデルを選択して、300年成長し続ける企業のDNA設計や組織作りを行ってきたと自信を覗かせた。特定のテクノロジー、特定のビジネスモデルにこだわるのではなく、色んな企業とパートナーを組んでいくと述べた。

最後に、現在52歳の孫氏は、60代では次の代に事業を継承するという人生の計画を明かし、後継者育成機関となる「ソフトバンクアカデミア」を7月に開校すると発表した。