「どうすれば、納入したシステムを正しく効果的に使ってもらえるか」――これは、すべてのITエンジニアやコンサルタントに付きまとう"永遠の命題"だが、この命題にとりわけ真剣に向き合っているのが、パッケージベンダーのSAPである。

ユーザーにシステムを正しく使ってもらうのは簡単なことではない。ユーザーのITリテラシーにはばらつきがあり、全員に正しく使ってもらうためには根気よく訓練する必要がある。また、扱うデータ量が増え、パフォーマンス低下などの現象が生じると、想像もしなかった運用方法が蔓延してしまうことも少なくない。

こうした課題を解決するための"切り札"としてSAPが開発したのが「SAP User Experience Management by Knoa」だ。果たして、この製品で一体どんなことができるのか。以下、SAPコンサルタントに解説をお願いしよう。

本稼働したSAPは、効果的に使われていますか?

「経理システムがSAPに変わったが経理処理に時間がかかるようになった」という、経理担当者。「ユーザーが処理に時間がかかると不満を言うが原因がわからず、打つ手がない」というSAPシステム管理者。「エンドユーザーからの問い合わせが多く、問題解決までに非常に時間がかかってしまう」という、ヘルプデスク担当者。このような不満の声が上がると、「うちのSAPはちゃんと動いていないのでは」、「業務が回っておらず、システム投資に期待した効果が得られていないのでは」と、疑問に思ってしまうのではないでしょうか。

エンドユーザーが使いやすいと評価し、SAPで業務が効果的に回っていれば、SAP導入は限りなく成功と言えるでしょう。しかし、そうではない場合、このような不満の声を減らし、SAPを効果的に使いこなすにはどのような対策が必要でしょうか。あるいは、稼働前の段階においても、順調なサービスインを迎え、SAPで業務を円滑に行うためには、どのような対策が効果的でしょうか。

それは、エンドユーザーがSAPを効率的に使いこなしているか、PDCAサイクル(Plan→Do→Check→Action)を実行して、問題を継続的に改善していくことに尽きます。しかし、多くの企業では、そのPDCAサイクルが実行されていないのが現状です。

エンドユーザーは「SAPの処理が遅い」
理由が分からない

なぜ、SAPの効率的な利用のためのPDCAサイクルを回すことが難しいのでしょうか。1つの理由として問題分析の難しさがあります。

SAPユーザーが非効率になる、つまりSAPでの業務処理に時間がかかる理由を考えてみましょう。たとえば、ユーザーが操作方法を間違っている、操作方法は正しいが操作に不慣れで時間がかかる、偶然その時間にSAPシステムの負荷の高い処理が流れていて応答が遅い、ネットワーク障害が発生してSAPの応答が遅い…など、さまざまな原因が考えられます。

しかし、エンドユーザーにとってはどの問題も、「SAPが遅い」、「SAPが使いづらい」と見えてしまいます。よって、問題を抱えたユーザーから問い合わせを受けたシステム管理者やヘルプデスク担当者も、その問題の真の原因にたどり着くまでに時間を要してしまいます。

SAPユーザー効率化のためのPDCAサイクルを回す
~「User Experience Management」という考え方~

では、SAPの効率的な利用のためにPDCAサイクルを回し、ユーザーがシステムを効率的に使うための管理方法はあるのでしょうか。それがUEM(User Experience Management)という考え方です。

UEMの大きな特徴は「ユーザー視点での管理、ユーザー行動への着目」です。ユーザーパフォーマンス管理の仕組みには、すでにいろいろな方法がありますが、多くの場合、それはシステム視点での管理でした。しかし、システム上は何も問題がない場合でも、ユーザーの処理に時間がかかっているケースがあり、その原因はシステムからは見えません。ユーザーがどのような手順で、どこでエラーが生じ、どこに時間がかかっているのか、エンドユーザーの効率を妨げている問題を可視化するには、ユーザーの行動に対して着目した情報処理が必要です。

UEMは、ユーザー視点でのPDCAサイクルを回し、ユーザーの効率化を図るのが目的です。今まで勘に頼り、漠然と評価されていたユーザーの効率性という課題に対して、問題の可視化を行い、計量的に評価していく手法です(図1)。

システムをユーザーに定着させるには