ペンタブレットとレコーディング作業の親和性
――杉山さんは、最近スタジオワークで「Intuos4」を取り入れてみたそうですが、スタジオワークでペンタブレットをどのように使われるのでしょうか?
杉山「まだ、試してみたという程度なんですが、色々と使い方はあると思います。僕はLogicを10年使用していて、キーボードやマウスでの操作が慣れているのですが、これから音楽制作ソフトを初めて使うという人にはお奨めできます」
――それはどんな部分なのでしょうか?
杉山「例えば波形をいじるときに、マウスよりも、ペンタブレットのほうが少ないアクションで楽に操作できると思います。ボーカル音源なんかだと、細かいリップノイズという物がどうしても所々で入ってしまうのです。そのリップノイズに関して、最後のミックスの時、音を聴きながら波形を見て除去していくという結構細かい作業があります。それがペンタブレットだと、マウスより楽に出来るという印象がありますね。慣れは必要ですが、腕の動きも少なく、疲労も少ないかもしれません」
――波形の処理は、確かにペンタブレットだと作業し易いかもしれませんね。
paris match |
杉山「あと、フェーダの上げ下げのような、フィーリングの操作はPC上のマウスだと難しい部分もあるんですよ。例えば、フェーダはいくつかのつまみを同時に操作するんですが、PCだと、マウスでこっちのつまみをいじったから、次はこっちというような感じで、段階を踏まないとならないのです。ミキサーの実機に近い形で操作するには、どうしても高価な専用コントローラが必要なのですが、ペンタブレットを使いこなせば、コントローラを購入しなくても、代用可能な部分があるかもしれません。ペンタブレットでも、液晶タブレットなら、より親和性があるかもしれませんね」
――それでは、最後にこれからPCで楽曲制作を始めたいという読者にひとことお願いします。
杉山「僕らが自宅で録音を始めた20年前に比べたら、今は夢のような時代です。ドラムマシンひとつで10万円はしていましたし、minimoogなんて単音しか鳴らないものでも数十万円しました(笑)。今ならほんの数万円で、当時なら数百万円した機材が揃います。何でも出来るからこそ、何をしたらいいのかでつまずく人も多いと思います。でも、ソフトを購入したその日から機能を使いこなせるわけないですし、楽曲が簡単に出来るわけはないのだから、とにかくいじり倒して欲しいですね」
撮影:石井健