富士通研究所と富士通テンは、3次元仮想試作システムVPS(Virtual Product Simulator)上で、製品の3次元設計モデルに仮想的なカメラを設置し、カメラ画像をリアルタイムに確認することができるカメラ画像シミュレータを開発したことを発表した。

従来、車載カメラでは広い視野を得るために魚眼レンズなどの広角なレンズを使用していたが、広角なレンズは画像の歪みが大きく、正確なカメラ画像を生成するためにはレンズによる画像歪みを再現する必要があった。また、検討作業ではカメラ画像を確認しながらカメラ位置を調整できることが望まれため、ユーザのカメラ移動操作にリアルタイムに追従できる高速なカメラ画像生成技術が求められていた。

同シミュレータは、歪みの大きい魚眼レンズをはじめ、各種カメラに対応しており、これを活用することで、実機を使用することなくカメラで映し出す画像の範囲や見え方などの確認が可能となり、設計段階でレンズ仕様や最適な取り付け位置などさまざまな検討を行うことができるようになる。

従来方式と今回開発した技術との比較

今回、歪みの大きいカメラ画像を高速に生成するために2つの技術を新たに開発した。1つ目はレンズ特性データに基づき任意の射影特性を再現するカメラ画像生成方法で、もう1つはグラフィックスボードを使用した高速画像処理方法。この2つの技術を3次元仮想試作システムVPSに組み込み、VPSの豊富な設計検証機能を利用することで、効率的に車載カメラの配置設計を行えるカメラ画像シミュレータを実現したという。

これにより、現物がない設計段階で、カメラに映る範囲や周辺物の見え方(車両部品に隠れる部分や、人や車、道路の歪みなど)の確認が可能となるほか、実際の車に取付ける方法では対応困難な、正確なカメラ位置の設定ができるようになる(例:下へ1度、右へ0.5mm変更した場合の画像確認)。

レンズデータに基づき歪み特性を画像に加えて再現することで、実際の様子を再現

また、レンズスペック(画角や屈折率)の変更、搭載車両変更、昼夜間の道路状況再現、などさまざまな条件設定を変更しての画像確認が可能となるほか、従来、実際の車に取付けて画像確認を行っていた作業を、PCで対応可能となるため、実験車の手配や部品の脱着が不要となり、設計段階の検討工数の短縮が可能。富士通テンで開発する車載用製品では、実際に車両にカメラを取り付ける必要が無く、パソコン上でカメラ画像の確認が可能となるため、設計段階の検討工数を約1/10に短縮することができたという。

レンズスペックに応じた画像などをPC上で切り替えることが可能であり、実作業にかかる工数を削減することができるようになる

なお、同技術は2010年5月に発売されるトヨタ自動車のディーラーオプション製品「マルチアングル全周囲モニター」の開発にも活用され、取り付け誤差を考慮したカメラ画像や、車両周辺の任意の位置に配置した人や物の見え方の確認など、実機では実現困難な条件下での確認に用いられており、今後は自社で開発する車載カメラ搭載製品に活用していくほか、建屋・都市空間での監視・モニタリングシステムの設計など、富士通グループで広範囲の応用を検討していくとしている。