マイクロソフトは、10月5日よりWeb開発会社を支援する画期的なプログラム「WebsiteSpark」を開始している。Webの使用用途はビジネスからコンシューマまで多岐に渡り、Webに携わる企業もWeb開発会社からホスティング企業、サービス提供企業まで多様化している。同社は、こういった現状を踏まえ、Webを使う全てのユーザーがWebプラットフォームをより有効に活用できるような様々な支援に、積極的に取り組んでいる。同社がWeb開発会社を支援するプログラムとして提供している取り組みにひとつが、この「WebsiteSpark」だ。

「~Spark」と名のつくマイクロソフトのプログラムは3種類個存在している。将来を担う学生の支援を目的とした「DreamSpark」、起業間もない企業の支援を目的とした「BizSpark」とふたつのプログラムがこれまで実施されており、WebsiteSparkはその第3弾となる。このWebsiteSparkとはどのようなプログラムなのだろうか。

WebsiteSparkのページ

新しいWebビジネスをマイクロソフトが支援したい

マイクロソフト デベロッパー&プラットフォーム統括本部パートナーテクノロジー推進部
金尾卓文

WebsiteSparkでは、マイクロソフトのWeb開発ツール「Visual Studio 2008 Professional Edition」をはじめ、「Expression Studio」、「Expression Web」、サーバーソフトウェア「Windows Web Server 2008」、「SQL Server 2008 Web Edition」といったWeb開発ツールが、最大3年間、無償提供される。また、技術資料やトレーニングマテリアルなど、技術的なサポートも受けられる。このプログラムは、プログラム参加半年以内にWebサイトを構築する意思を持つWeb制作・開発業務を中心にビジネス展開している従業員数25名以下の企業が対象となっている。今回、WebsiteSparkプログラムの責任者を務める同社のデベロッパー&プラットフォーム統括本部パートナーテクノロジー推進部の金尾卓文氏にWebsiteSparkの魅力を語っていただいた。

「WebsiteSparkは2009年の10月から日本でスタートしました。DreamSparkは学生向けのプログラム。BizSparkは起業して短い期間のソフトウェア開発会社向けの支援策なのですが、WebsiteSparkはWeb制作をする会社様向けの支援策です。BizSparkは起業から3年以内という条件が付くのですが、WebsiteSparkでは従業員数25人以下の企業様などの制限があります。それをクリアすれば、どのWeb開発会社様も参加可能となっています」(金尾氏)

――このWebsiteSparkは、「起業して3年以上経過していても参加可能」であったり、「半年以内にWebサイトを作る意思があれば参加できる」などかなり参加条件がゆるやかな印象があります。端的に言うと、これらの条件さえクリアすれば、その開発会社は40万円相当のツールを無償で入手できます。このプログラムには、どういった狙いがあるのでしょうか?

「やはりBizSparkはソフトウェアを作る企業様、いわゆるISVを対象としていました。そういった企業様には、ソフトウェアのプラットフォームとしても、多くのソフトを使っていただくというのを想定しておりました。WebsiteSparkでは、プログラム参加条件は緩やかなのですが、使っていただくソフトはあくまでも、Web制作・Web開発に限定させて提供させていただいています。Web開発の世界では、個人事業主の方なども多く、企業数はISVと比較するとかなり多い。その方々に対して、弊社のプラットフォームを活用して新しい事をやっていただくとき、設備投資の面などで、やはりハードルが高いと思うのです。そういう意味で、『なにかWeb世界で新しいビジネスをやっていこう』という方々に入り易いようにという事で開始されたプログラムがWebsiteSparkなのです」(金尾氏)

――このプログラムに参加者したWeb開発会社に御社は、どんなことを期待しているのでしょう?

「3つのどのプログラムでも共通なのですが、期待というよりは、新しいことに取り組んでいただく時、弊社から支援をさせていただきたいというのが根底にあるのです。このプログラムのミッションは弊社のプラットフォームを活用して、新しいビジネスを立ち上げたり、何かしたいというWeb開発者の方々を、企業から学生の方々まで包括的に支援するということなのです。現在、Web市場は様々な変化がある時期だと思います。その時期は、新しいビジネス拡大のチャンスです。そのチャンスにアイデアがあるのに予算がなく、新しいビジネスに活かせないというケースも多々あると思います。そういうビジネスチャンスを逃さないよう支援するというのが、弊社のこれらのプログラムの役割です」(金尾氏)

40万円相当の開発ツールを数百のWeb開発会社に無償提供

――新しいチャンスがあると言っても、市場は冷え込んでいるという印象もあります。不況のこういう時代だからこそ生まれた支援プログラムという解釈もあると思うのですが。

「確かに、昨今の市場の流れと、弊社の考えが時期的に合致した部分も大きいと思いもいます」(金尾氏)

――40万円相当の開発ツールを数百社の開発会社に、これほど緩やかな条件で無償提供するというのは、かなりの思い切ったプログラムだと思います。単なる開発・ビジネスチャンス創出支援だけではなく、やはり御社のレベニューを増やすという狙いもあるのでしょうか?

「このプログラムでは、関連して弊社のソフトウェアのレベニューを増やそうという意図がベースにあるのではありません。マイクロソフトという会社の性質というか、ミッションとしてのステートメントにあるように、全ての方々のビジネスのポイテンシャルを最大限に引き出すお手伝いをする取り組みのひとつと純粋に考えていただけたら嬉しいです。プラットフォームの拡大という狙いはもちろんありますが、あくまでもレベニューの拡大が目的ではありません」(金尾氏)

すでに国内400社のWeb開発会社がWebsiteSparkに参加

――このプログラムに対する手応えは感じていますか?

「参加していただいたあとに、自分たちでWebサイトを作るという部分まで持っていかなくてはならないという部分に、まだハードルの高さを感じて参加を躊躇している企業様もあるようで、そこは我々の課題だと思っています。ただ、参加企業様の数は1月14日時点で国内約400社を越えていて、開始約3カ月で強い手応えを感じています」(金尾氏)

――御社の開発ツールに慣れていないWeb開発者に対する技術的なサポートはどの程度用意されているのでしょうか?

「今後「WebsiteSpark マイクロソフト×マイコミ 共同セミナー」のような、オフラインのイベントやツールに関する勉強会を、精力的に開催していきたいと思っております。Web市場でビジネスをやられている企業様向けのWeb上での技術情報を、弊社としても増やしていく予定です。こうした活動を広めて、弊社の技術に詳しくない方々にもアピールしていきたいと思います」(金尾氏)

――開発ツールを3年間無償提供した先がどうなるのか、知りたい企業も多いと思うのですが。

「3年間経過後も、弊社のツールを使っていただけるような、特別パッケージを用意するという計画があります。3年間無償提供というのは確かなのですが、そのプログラム終了以降も、参加した企業を様々な形で支援していきたいと考えておりますので、ご安心ください」(金尾氏)

――直接ビジネスに結びつく支援としては、どのような施策があるのでしょうか?

「技術情報を継続的に行うだけでなく、ビジネス支援という面にも力を入れたいと思っています。今年の1月からこのプログラムの新しい特典として「WebsiteSparkパートナーカタログ」というWebサイトを開設しています。ここでは、プログラムに参加した企業様の中でマイクロソフトのプラットフォームでWebサイトを構築してくださった企業様を紹介させていただいています。あくまでも『ビジネス機会の創出』を支援する方法のひとつでしかありませんが、このサイトの中でプログラムに参加した参加企業様を紹介していくことで、ビジネス面での支援もできればと考えています。このサイトはまだ始まったばかりですが、多くの方に活用していただけるよう周知していきたいですね。」(金尾氏)

気楽にマイクロソフトの技術を試して欲しい

――御社では、どのような企業にこのプログラムに参加して欲しいと考えているのでしょうか?

「先ほどもお話させていただきましたように、Webを活用したビジネスは、色々な可能性が広がっている時期だと思います。新しいビジネス、単純にWebページを作るというビジネスだけでなく、その中でノウハウを、Webサービスにしていただくなど、一歩踏み出したい意欲の高いWeb制作会社の方にぜひ参加していただきたいですね。それによってWeb市場が活性化していくと思います」(金尾氏)

――気楽な気持ちで参加したいという企業でも構わないのでしょうか? 例えば、「マイクロソフトの技術を試してみたいが、それで自身がアウトプットを作れるか不安」というような開発者やデザイナーでも構わないのでしょうか?

「そこは気楽に試してみて欲しいですね。半年という期間の中でとにかくトライしてみてください」(金尾氏)

――プログラムに参加する6カ月前から、御社の技術を使いWebサイトを作るという案件があるかどうかという部分も、大きいと思うのですが。

「おっしゃる通り初めから案件をお持ちではない方も多くおられると思っています。もちろんできるだけ半年以内に作れるように努力していただきたいですが、できなかった場合に即退会いただくということはありませんので、その点はご安心いただければと思います。今、案件がなくても是非、弊社のテクノロジーに触れて欲しいですね。また、ASP.NETがわからないと弊社のテクノロジーでWebを作ることができないわけではないですし、共同セミナーでもご紹介したのですが、Visual StudioもCSSやJavaScript、jQueryなどを使う際のオーサリングツールとして使っていただくこともできます。まずは『弊社の技術だけでないと駄目』という意識を持たれずに、皆さんのビジネスのワンパーツに取り入れる部分があるかという部分も含めて、気軽に検討していただけたらありがたいです。例えば、Web制作業務を依頼されたとき、『このパーツを作る時に、マイクロソフトの環境を利用すると楽かもしれない』という部分に気がつくきっかけにもなると嬉しいですね」(金尾氏)

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インタビュー撮影:石井健