New York Times本社ビル。今回の決断は吉と出るのか凶と出るのか……

米New York Times (NYT)がオンライン版コンテンツへの課金を間もなく発表する計画だと、米New York Magazineが同件に近い筋の情報として1月17日(現地時間)に伝えている。NYTは過去に有料課金を実施したことがあり、その後、課金なしの登録制から無料開放へと段階を踏んで現在のスタイルに落ち着いている。こうした経緯を踏まえ、同社はまた有料課金の数少ない成功事例である米Wall Street Journalの形態へと倣おうとしている。

New York Magazineによれば、同件は数日中にもNYT会長のArthur Sulzberger Jr.氏によって決断され、数週間のうちに発表される見込みだという。課金形態としては3種類が想定され、WSJと同様の無料と有料記事を組み合わせたサブスクリプション型、Financial Times (FT)などにみられる従量型、NPR (National Public Radio)のメンバーシップ型としているが、3つめについてはすでに検討廃止済みだという。実際の課金開始は今年春頃になるとしている。

こうした課金システムへの移行の背景には、News Corp.が表明している傘下のオンラインメディアすべてにおいてのオンライン課金開始があるとみられる。同社会長兼CEOのルパート・マードック(Rupert Murdoch)氏はGoogle検索インデックス化の遮断も表明するなど、従来型のオンラインビジネスとの決別も宣言している。

もうひとつは、1月27日発表が噂されるAppleのタブレット型新製品の存在だ。Webブラウザ経由で記事を配信するよりも、電子ブックリーダーのようなデバイスでより出版スタイルに近い形で記事を配信するほうが課金が容易だという狙いもある。これについてはTime Warnerの出版部門であるTimesが複数の出版社と一緒に電子スタンド形態での記事や雑誌の有料配信を検討しているほか、タブレット型製品や電子ブックリーダーブームに便乗するといったアイデアがある。いずれにせよ、米国の既存の新聞・出版社が生き残りをかけて新たな道を模索し始めた段階に入ったといえるだろう。