11月5日、米Microsoftの最高経営責任者(CEO)であるスティーブ・バルマー氏が来日し、記者会見を行った。バルマー氏は、Windows 7の発売後の反響や今後の取り組みについて約15分間のスピーチを行い、記者からの質疑応答を受付け、それに答えた。

Microsoft CEO スティーブ・バルマー氏

バルマー氏はスピーチで、「ユーザーの生産性を上げ、より多くのエクスペリエンスを与える『イノベーション(革新)』に今以上に力を入れていくことが、何よりもの優先事項である」というメッセージを強調した。

「これから10年後に2009年を振り返ると、『あの頃はアクセスするにもまだ不便で、紙にメモを取ったりしていて、何て古い技術の古い時代だったろう』と言っていることだろう」とし、未来へ向けてのイノベーション実現に、何よりも力を注ぎ投資もして行くと述べた。

Exchange、Azure、OSといったWindows技術全般、検索分野、学術分野などを含め「95億ドルの開発費用を投じる」とし、この"次の時代のイノベーション"のテーマとして、「クラウド」や「NUI(ニュイと発音)」を挙げた。「NUI」とは、グラフィカルな「GUI」よりもさらに直感的で自然なUIである「ナチュラル・ユーザー・インターフェイス」のことを指す。

「デバイス+クラウドによって、シームレスにネット上のサービスがつながり、新たなユーザーエクスペリエンスも生まれる」とし、クラウド戦略としてのテーマを「3スクリーン+1クラウド」として説明した。3スクリーンとは、「Phone」「PC」「TV」と異なる形態のデバイスを指している。基本にあるのは、やはり"Windowsで走る"ということのようだ。

興味深かったのは、記者たちの質問に答える形で各分野でのライバルの名を挙げ、どう見ているかを述べたことだ。

Windows vs Macについて
「ユーザーはOSを買うのではなくOSの入っているPCを買う。その限りではGoogleは競合には含まれず、Appleだけと言える。そして、フォームファクターの多様性、周辺機器、対応アプリケーション等を比較すれば、Windowsは圧倒的に、そのエコシステムを含めて強力だ。リッチカントリー(経済力の強い国)におけるコンシューマ層の100人中85人がWindowsを選んでいる。ユーザーも、スピードやユーザビリティの良さを実感してくれているからこそ製品を選んでくれている。もちろん、残りの人たちに選ばれなかった理由を追求し改善して行く」

Internet Explorer vs Firefoxについて
「Webブラウザの分野では、GoogleやAppleも見ているが、いいライバルという意味ではFirefoxと言えるだろう。もっと積極的にWebサイトの開発者に向けてアプローチしていく必要があると感じている。もっと頑張れなければいけないと思っている」

Windows Mobile vs iPhoneについて
「東芝のWindows Mobile端末『TG01』のような創造性のある、とても良い製品が出てきている。今後、iPhoneやその他のスマートフォンと比べた場合の優位性と、Windows Mobileの実力をきちんと証明していかなければいけない」

「日本市場では後発。やらなければいけないことがたくさんある。日本の携帯市場を踏まえて、これからはコンシューマフレーバーを入れていきたい。11月にWindows Mobile 6.5を搭載した「Windows Phone」のローンチを予定している」(日本法人 樋口泰行社長)

Bing vs Googleについて
「検索分野では、グーグルはリーダーであり、王者だ。我々は小さな駒だが、革新的で興味のある分野の追及に努めている」
「日本ではまだまだこれからだが、米国では、サービス構築やコンテンツ、サーチ技術開発など多くの取り組みを行ってきており、自分たちのしっかりしたコンセプトを証明した上で、各国にも順に展開して行く。米Yahoo!とのパートナーシップを結んだが、まず米国内でその効果を証明し、今後他国での展開を検討していく」

Microsoft Cloud Services vs Amazon/ Salsforceについて
「検索以外のクラウドの分野では、マイクロソフトが断然にリーダーだ。メールやインスタントメッセージなどのコンシューマ分野のサービスシェア、つまりソーシャリゼーションプラットフォームに関しては、我々がナンバーワンだ。ヤフーでもグーグルでもない。クラウドコンピューティングの分野でも、何千という企業ユーザーがクラウドバージョンのExchangeを活用している。他社で同じ規模で展開しているところは見当たらない……。唯一Salsforceは、"いい仕事"をしていると言えるだろう。クラウドコンピューティングのプラットフォームという視点では、Amazonが他を圧倒的に引き離しリーダーとなっていると言えるだろう。我々はWindows Azureやその他のクラウドサービスをラウンチしているが、プラットフォームを、クラウドと企業データセンターの両方に置くことのできる唯一のプレイヤーとして、チャンスの拡大があると見ている」

バルマー氏は、マイクロソフトを「唯一のプレイヤー」という言い方を何度かしていたが、こうしてみると、どの企業ともライバルという立場でありながら、どの企業ともパートナーを組まなければ、同社が目指す革新的な開発を進めていくことが難しいという「業界唯一、悩ましい立場にいる企業」なのかも知れない。