アメリカでG-SHOCK認知度がグンと一気に高まったのは、去年大成功を収めた25周年イベントによるところが大きいという。この夏またニューヨークにやってきたG-SHOCKワールドツアー「Shock the world tour 2009」も大いに盛り上がり、アメリカのG-SHOCKファン層はさらに拡大の一途を見せている。

実際、ニューヨークのストリートやショップ、レストランでその姿を目にする機会が激増しているG-SHOCK。いったいどんな店で、どう売られているんだろう? 店のタイプはやっぱりカジュアル系…? と勝手な予想を胸に向かったニューヨークのG-SHOCKショップ巡り、まずは一軒目。ムム、ここは高級老舗ブランドがひしめくミッドタウン、しかも次第に聞こえてくる、何やらチクタク時を刻むこの音は……あ! トルノーだ!

世界最大の時計店に、G-SHOCKコンセプトショップ出現

世界各国の時を刻む大きな時計が20数個、ぐるりと外壁を囲むこの建物は、世界最大のセレクションを誇る時計店。スイス出身のトルノー家が創業した、約110年もの歴史をもつ老舗で、アメリカ国内だけで現在44店を展開しており、時計店としては量・質ともに最高峰と言えるだろう。

大きな世界時計が看板の、時計専門店トルノー

訪れた旗艦店の名称は「トルノー・タイムマシン」。店内に入ると吹き抜けがちょうど時計の内蔵部分を模したデザインになっている。ショップ全体が巨大な時計になっているというわけだ。

地下に出現したG-SHOCKのコンセプトショップ

地上二階・地下一階、巨大なフロアには世界の高級時計がズラリ並び、それぞれが放つ強烈な存在感であふれかえっている。そしてその先には、8月1日にオープンしたばかりのG-SHOCKコンセプト・ショップが。

トルノーの副社長、リチャード・E・ゲルマンさん

もう10年以上G-SHOCKを扱ってきているトルノーだが、今回の専用コーナーオープンにあたり什器もカーペットも全て新調したという。目の高さのディスプレイケースに手をかざすと、中がライトアップ! こうしたモーションセンサーの仕掛けなども、まさにG-SHOCKの"ワクワクさせるテクノロジー"そのものだ。

カシオアメリカ副社長の伊東重典氏が「トルノーではハイエンドの商品を中心に展開しています」と語っていた通り、「MT-G」や「GIEZ」などG-SHOCKの高価格帯モデルが並んでいる。

Baby-Gのディスプレイ前では、身なりのよい父娘が商品を指しながら何やら話し込んでいる。女の子のほうは高校生くらいだろう。

「"マイ・ファースト・G-SHOCK"を買いに来ているんですよ」。案内してくれたトルノーの担当者がそう耳打ちした。

バラエティ豊かな客層の、高級百貨店

高級ショッピングエリアにそびえる、ブルーミングデールズ

さて、場所は変わってこちらは百貨店のブルーミングデールズ。トルノーと同じくミッドタウンにある老舗で、愛称は"ブルーミーズ"。

商業施設はダウンタウンという当時の常識を覆し、アップタウンに創業したのが1872年。近所にメトロポリタン美術館がオープンしたのも相まって、以来このエリアを中心にさまざまな文化や芸術が開花した。もともとは庶民派の店だったが戦後は高級志向に転向。エリザベス・テイラーやエリザベス英女王も買い物に訪れる、ニューヨークを代表する有名店なのだ。

そんなブルーミーズの1階、コスメフロアやジュエリーフロアのそばにG-SHOCK売り場が今年5月、現れた。

次々に訪れる、客また客。人種や年齢、想像されるライフスタイルも様々だ。目当てのモデルを探しに来ている20代の女性から、「ん? G-SHOCKって何?」と足を止める家族連れの観光客まで、バラエティに富んでいる。

カシオアメリカ 商品スーパーバイザー フィリス・フレイザー女史によると、鮮やかなカラーのG-SHOCKが良く売れるそうだ。アメリカの商品は色に深みが乏しい。その点、G-SHOCKは色合いの微妙なニュアンスがとても高く評価されているという。

新モデルが入荷すると、情報を聞きつけたファンが飛んでくるとか

販売担当のミッチェル・エレンバーグさん

買い求めていくのは10代が多く、G-SHOCKが自分のスタイルやアイデンティティそのものになっている、そんな若者が多いとか。

ストリート系のDQMでは、店とのコラボモデルも

そして、こんどはマンハッタンをぐーんと南下し、ロウワーイーストサイドへ。

ダウンタウンのこのエリアは、元々移民の町。かつては荒れ果てた場所として知られ、すぐそばのバワリー地区などは有名な貧民街だった。文化施設といえば唯一CBGBがあるだけ。1970年代のNYパンクを生み出したこの伝説のライブハウスに行く以外は、地元民もまず足を踏み入れることのない、危険な場所だった。

それがここ4、5年で大規模な再開発が行われ、美術館や高級コンドミニアムがニョキニョキ生え、洗練されたレストランやショップ、ギャラリーのひしめく最新トレンディエリアへと変貌を遂げている。

DQMの入り口。こぢんまりとしてイイ感じ

オシャレといっても、アップタウンよりもうんと若くちょっとユルい、イイ感じのノリが特長だ。まさにこのエリアっぽい、ストリート系のブティックがこのDave's Quality Meat。

ファッションへの情熱と商品知識にあふれたスタッフたち

"デイブの良質な肉"という風変わりな店名は、元々ここにあった肉屋の名をそのまま残したもの。サーフボードやスニーカー、服が並ぶその奥には、今でも肉貯蔵庫の名残がある。同店での売れ筋はさまざまなコラボモデルが展開されるG-SHOCK「6900」シリーズ。DQMとのコラボも6900がベースになっている。

スタッフのカール・ウィリアムズくんに、今はウォッチそのものを身につけない若いコもいるよね? と尋ねてみた。すると彼はウエストをポンと両手で叩いてこう言った。

「僕らのファッションは、ここからスタートする。この下、つまりパンツは実用性・機能性でまず選ぶ。次はこの上、Tシャツをパンツに合わせて買う。上下揃えば全体のカラーが決まるから、それに合った"リッド&キックス"(フタと足、つまりキャップとスニーカー)を選んで、最後にココ! (と手首を指して)ウォッチでバシッと全体を締めてスタイル完成ってわけだ」。

そうかG-SHOCKって最後のシメ、いわば画竜点睛アイテムなんだ。
「だから、みんな同一モデルの色違いを買って行くよ」とも。

スタッフのカール君が見せてくれた、DQMコラボモデル

日本でも、G-SHOCKは様々なスタイルに合ったキメ細かい展開がなされている。 だがここニューヨークでは、ライフスタイルやバックグラウンドも多様なため、扱う店のタイプも買われ方も、その振り幅が実にダイナミックだ。

今年のG-SHOCKワールドツアーをさらなる起爆剤として、今後どう発展していくの目が離せない。