2009年6月19日。岡山にてG-SHOCKが放つワールドワイドなクラブツアー「Shock the world tour 2009」が開催された。すでに、6月11日にロンドンでスタート、日本では岡山がキックオフの場所となる。そして、この饗宴は、10月の東京、11月のファイナルのベルリンまで続いていく――。

そこでイベントの直前、岡山でのG-SHOCKの人気、認知度などを探るために、中国地方随一というG-SHOCKの品揃えを誇るショップ「CHRONO FACTORY 1038(以下、クロノファクトリー)」にお邪魔した。

「CHRONO FACTORY 1038」の外観。入口近くにG-SHOCKコーナーを設けるなど、G-SHOCKを前面に押し出している

岡山県岡山市表町。県庁通りとあくら通りに挟まれた、わずか150mほどの通称「おもてまちキャットウォーク」と呼ばれる商店街には、同一の会社が経営する9店舗もの時計・宝飾店が並ぶ。ラグジュアリーブランドを扱うショップが軒を連ねる中、ひと際異彩を放つ存在なのが、「G-SHOCK」をはじめとするリーズナブルな腕時計を展開し、若者に人気のショップ「クロノファクトリー」。それらを運営するトミヤコーポレーション(以下、トミヤ)常務取締役の古市聖一郎氏に、同社のブランド戦略や、その中でのG-SHOCKの位置づけなどについて伺った。

ジョーカーのような存在

現在は"トミヤストリート"と呼んでもいいほど、商店街の短い距離にトミヤが運営する時計・宝飾店が多く建ち並んでいるが、元々はトミヤ本店に、高級腕時計から宝飾品までが一堂に並べられていたそうだ。だが、「それではお客様に対し、きめの細かい対応ができないのではないか」という考えから、まずは腕時計と宝飾品のショップを分けることからはじまった。

トミヤコーポレーション常務取締役の古市聖一郎氏

「たとえば、手をつないで結婚指輪を見に来られた若いカップルと、高級腕時計を見に来られた年配のグループが、一緒の空間にいらっしゃるというのは、もしかしたらお互いにとって居心地が悪いのではないか、と考えました。まず腕時計とジュエリーの店を分け、その後にブランドや顧客層に応じたショップを次々とオープンさせていきました。そのおかげで、各店のコンセプトが明確になったと思っています」

G-SHOCKコーナー。ウィンドウディスプレイでは「Shock the world tour 2009」の告知も

トミヤの腕時計のラインナップには、オメガ、ブレゲ、パテックフィリップ、ロレックス、IWC、フランク・ミュラーなど、そうそうたるブランドが揃っている。そのような中にあって、G-SHOCKを扱う理由は何なのだろう。

「実は以前は、G-SHOCKを軽く扱っていたときがあったんです。店の中でも隅っこの見えないところに追いやってしまっていて……。でも、ある催事を行ったときにG-SHOCKに対してすごい反響があって。それがきっかけとなり、昨年、G-SHOCKを前面に押し出した若者向けのショップとしてクロノファクトリーをオープンさせたんです」

若者だけでなく、予想外に多くの年配のお客様に支持されたこともあり、オープン後のG-SHOCKの売れ行きは好調だという。だが、売り上げの面だけでなく、G-SHOCKにはさらに大きな期待をかけているそうだ。

26年という歴史をもつG-SHOCKは当初の狙いだった"若者"だけではなく幅広い層に受け入れられたという

「今はヨーロッパのブランドウォッチが高価格化したり、携帯電話が腕時計の代用になったりと、腕時計がとっつきにくいものになってしまいました。その中で若い人たちには、もっと腕時計に興味を持ってほしいと思います。あらゆるカルチャーに強く、若者にも人気のG-SHOCKにはアンバサダー的な役割を期待しています。G-SHOCKは国内で97~98%のブランド認知率を誇っているとか。そんな時計のブランドって他にはないんです」

「Baby-G」「OCEANUS」「PROTREK」などの他のカシオのブランドも展開

今年30歳になられる古市常務が最初に身につけた腕時計もG-SHOCKだったという。

「中学生のときにG-SHOCKをプレゼントしてもらったんです。最初は時計を腕に巻くというのに抵抗があったんですが、腕時計をつけて時間を見るという仕草を繰り返すうちに、だんだんと手放せなくなりました。ないと逆に落ち着かないというか(笑)。自分がそういう風に変化していったので、ぜひ若い方たちにもそういう体験をしてもらいたい。そのきっかけに、G-SHOCKがなってくれるのでは、と思っています。もちろん、僕も今でも愛用していますよ。職業柄、いろんな腕時計をつけますが、G-SHOCKはどんなシチュエーションでも、服装でも、気兼ねなくつけられるのがいいですね。バリエーションも豊富だし、どんなファッションにも合わせられるジョーカーのような存在。それに、G-SHOCKなら誰でも知っているから、つけているだけで話題が広がることも。僕もアンバサダーとして頑張っています(笑)」

若者を呼ぶ切り札、G-SHOCK

最近、岡山駅の近くに大型量販店ができたにもかかわらず、その影響を感じたことはないと語る古市常務。トミヤならではの品揃え、スタッフの専門的な知識、そして何よりもホスピタリティがお客様の支持を受けたことと、9店舗を展開することで、「おもてまちキャットウォーク」が腕時計のストリートとして認知されてきたことが大きな要因なのだろう。さらに、今後はG-SHOCKを通して多くの若者を呼び込んでいきたいという。

「岡山には2つの大きな商業エリアがあるんです。ひとつは岡山駅周辺。そしてもうひとつがこの表町界隈。今、多くの若者が集まっているのは前者なんです。対して、表町は猫が昼寝するようにのんびりしているというか……(笑)。でも、弊社の社長は、"猫"がのんびりするような穏やかさを残しつつも、表町でショッピングをしてもらって、モデルが颯爽と歩くような"キャット"ウォークのようなストリートにしたいと考えているんです。だから、『おもてまちキャットウォーク』。若い方々に来てもらうためにも、G-SHOCKの存在は大きいと思うんです」

トミヤ店舗が並ぶおもてまちキャットウォーク

トミヤの事業戦略上でも、街の活性化の点でも、大きな役割を果たすことになるG-SHOCK。今日の夜は、G-SHOCKのワールドツアー「Shock the world tour 2009」が、先行して開催されたロンドンに続き、ここ岡山でスタートする。

「夜はすぐに眠くなってしまうので(笑)、普段はクラブへは行かないのですが、今日は絶対に行きます。今月の25日に、クロノファクトリーはオープン1周年を迎えますが、7月中に店内でG-SHOCKのイベントを計画中です。社内はかなり盛り上がってきていますが、『Shock the world tour 2009』と連動して、どんどんお客様も巻き込んで盛り上げていきます」

取材、撮影を終えたのが18時前。それから3時間後、いよいよイベントが始まる。