日本最大級のゲーム開発者会議「CEDEC 2009」がパシフィコ横浜にて開幕した。
CEDECは初回の開催からずっと毎年、東京都内の大学施設を利用しての開催が行われてきたが、年々増加する来場者に対応出来なくなってきたことから、今年はついにカンファレンスセンターでの開催となった。会期は9月1日(火)から3日(木)までの3日間。例年通りのゲーム開発関連の技術セッションを中心に、今年は初心者向けのチュートリアルセッションが充実し、さらには海外の登壇者も多めに招いているのが特徴だ。また、今年は東京大学名誉教授の原島博氏、ガンダムの監督として知られる富野由悠季氏、ドラゴンクエストシリーズのゲームデザイナー堀井雄二氏など、業界内外の著名人を基調講演に起用したこともホットトピックとなっている。これらのことからも分かるように、今年のCEDECは、かなり"国際会議"色が強く押し出された開催となった印象がある。
DirectX 10.1の経験をDirectX 11に活かす
開催初日の1日、マイクロソフトのスポンサードセッションにて「DirectX 11関連セッション」が「AMD編」「NVIDIA編」の二部構成で執り行われた。最初にセッションを執り行ったのは日本AMD。題名は「AMD次世代GPUとATI Streamがもたらす可能性~世界で唯一のDX 11 GPUの実力」であった。
AMDはRadeon HD 3000シリーズ以降、大艦巨砲主義のGPU戦略をやめ、最新世代GPUを「パフォーマンスクラス」銘打たれた、ハイエンドとミドルレンジの中間クラスで投入し、速やかに新世代を浸透させる「スイートスポット戦略」を推進してきた。もっとかみ砕いて言うと、NVIDIAがGPGPUをフォーカスした設計のワンビッグチップで新GPUを投入してくるのに対し、AMDは3Dグラフィックスプロセッサをパフォーマンスクラスに投入することに注力したのであった。
また、Windows Vistaとともに提供されたDirectX 10.0のリファイン版であるDirectX10.1を実質的にサポートしたのはAMDだけであった。18カ月も遅れてNVIDIAもサポートしてきたが、実質的にDirectX 10.1のスタンダードはAMDが築き上げたといっていい。ただし、NVIDIAとの足並みが揃わなかったことから、DirectX 10.1はメインストリームになりきれなかった残念な部分もあるにはある。
しかし、AMDはこの件について、意外にも前向きに振り返っている。
DirectX 11に標準採用されたレンダリングパイプラインの新ステージ「テッセレーション」の仕組みは、Radeon HD 2000/3000/4000シリーズに搭載されてきた独自仕様のテッセレーションの仕組みを一般化してプログラマブルシェーダ化したものであり、そのDirectX 11世代GPUへの設計&実装のノウハウには競合に対して一日の長があった、というのだ。そういえばRadeonシリーズの独自仕様だったフィーチャーがDirectX 11仕様に取り込まれたものは他にもある。たとえばDirectX 11に新設されたGather()命令などがそうだ。これは1つのテクスチャ命令で任意の要素数のテクスチャーの4カ所から任意の要素(α/R/G/B)を読み出せる仕組みだが、もともとRadeon X1000系でサポートされていた「Fetch4」機能を一般化したものに他ならない。
AMDとしては、Radeonの独自フィーチャーの数々がDirectX 11の標準仕様に取り込まれたのだから、DirectX 11はAMD寄りの仕様だ……と主張したいのだろう。