NECの誇るロボットアームの母

一通り天体望遠鏡が完成し終えた後は、NECがこれまで培ってきた宇宙技術の話。現在、地球を周回する日本の人工衛星の多くにNECが技術開発として加わってきた経緯があるが、それは人工衛星のみならず、国際宇宙ステーション(ISS)にも用いられている。日本実験棟「きぼう」がそれに当たるが、そのもっとも特徴的な部分が船外実験プラットフォームの存在である。

同プラットフォームは、宇宙空間で直接さまざまな実験を行う装置が取り付けられるわけであるが、その器具取り付けを行うのが"ロボットアーム"である。このロボットアームの開発に長年関与し、「ロボットアームの母」とまで呼ばれるのがNECの宇宙システム事業部 宇宙システム部 エキスパートエンジニアである大塚聡子氏。大塚氏はNEC入社当時よりロボットアーム開発に従事しており、ロボットアームを「自分の実の子供よりもかわいい存在」(同)と評している。

ISS日本実験棟「きぼう」のロボットアーム開発を長年行ってきた経歴を持ち、「ロボットアームの母」と称されるNEC宇宙システム事業部 宇宙システム部 エキスパートエンジニアの大塚聡子氏(画面下に写っているのが「きぼう」の模型、ちゃんと船外実験プラットフォームも作られており、ロボットアームも動く)

ロボットアームは、長さ約10mで各箇所8カ所に取り付けられたカメラの映像を2台のモニタを通して見ながら、コンソールを操作し動かすというもの。ちなみに、稼働速度は10cm/sで、アームの稼働処理には3台のコンピュータが用いられているという。

実際に宇宙飛行士の地上訓練で用いられるロボットアームシミュレータをゲーム化したもの(ミッションとしては、180秒以内に取り外したペイロードを1つ隣のポートに移動させ、

先日、地球に帰還した若田光一宇宙飛行士を始めとした3人の宇宙飛行士が同アームを動かし、プラットフォームに3つのペイロードを取り付けた分けだが、「我々エンジニアが作ったものが、長い時を経て人々の役に立つ時がきた。これでようやく仕事をしたという気持ちになった」と大塚氏は語る。

なお、9月11日に打ち上げられる予定のHTVにもロボットアームが搭載される。現在、ISSに搭載されているのが"親ロボットアーム"となり、今回打ち上げられるのが長さ2m程度の"子アーム"ということである。

ロボットアームの基本原理の説明とそれを応用した紙と輪ゴムで作ったロボットアーム

世界の平和に科学で貢献

最後は、ガリレオ工房の理事長で、東京大学教養学部付属教育開発機構の特任教授である瀧川洋二氏が科学デモをここでも見せてくれた。

ガリレオ工房の理事長で、東京大学教養学部付属教育開発機構の特任教授である瀧川洋二氏(机の上にあるのが、磁石の力で高速で転がっていく球体デモの器具)

同氏が実演して見せてくれたのは、ネオジム磁石を球形にしたものを用いた実験。ループ上のレールを前にネオジム球と鉄球を1列に並べ、端にネオジム球をぶつけると、もう一端の球が相当な速度でレールを転がっていく、というもの。テレビでも放映されたことがあるので、見たことがある人も多いかもしれない。

こうした実演に目を丸くする子供達を前に瀧川氏は、「400年前のガリレオの研究があって、今の天文学の発展がある。最初、だれも宇宙に人が行けるなんて思ってもなかった。今は便利な生活が送れるようになった。こうしたことは科学の発達の恩恵だが、こうした分野は日本が貢献できる分野。科学分野の発展は、世界の平和と安全にも役に立つ。世界が仲良くしていくためにも日本が貢献していかないといけない」と語りかけ、そのためにも若い人たちがみんな一緒に、そういったことに取り組んでいってもらいたいとした。