旧バージョンのWindowsでは、すべての言語版が発売されるまでに数カ月もの長い時間を要していた。Windows 7では、全世界のすべてのユーザーがWindows 7を同時期に入手できるようにするため、ローカライズ版の作成方法を変更している。これから説明する事柄から、我々エンジニアがどのように仕事をし、また、公開テスト期間中にどのようにパートナー企業やエンドユーザーとやり取りをしているかを感じ取ってもらえれば幸いだ。

我々のアプローチを理解してもらうためには、まずは「ローカライズ」と「グローバライズ」というふたつの重要なコンセプトを説明した方がいいだろう。

ローカライズは、ユーザーエクスペリエンスを異なる言語に適合させる作業だ。文字列の翻訳やダイアログボックスのサイズ調整に始まり、ヘブライ語やアラビア語のような右から左に記述する言語ではアイコンの反転も行う。メニュー項目の翻訳ミスといったローカライズに関するバグはこの作業を行っている際に発生するものだ。

一方、グローバライズはユーザーインタフェースの言語設定に関わらず、どの国や地域においても問題なく動作する製品を作ることだ。グローバライズに関するバグは、ユーザーインタフェースの各要素が正しい言語で表示されないといった単純なものから、右から左に記述する言語を適切に扱えないといった複雑なものまで多岐にわたる。グローバライズに関するバグは、複数、またはすべての言語での使用時に影響を及ぼす上に、技術面で再設計を求められることが多いため、ローカライズに関するバグよりも本質的に深刻とされている。過去のWindowsの各バージョンでは、グローバライズに関するバグが修復されるまでに長い時間を必要とした。そのためWindows 7では、開発のなるべく初期の段階でグローバライズに関するバグの回避と発見、修正を行っている。

疑似ローカライズ

グローバライズ時にありがちなバグを回避するために、人工言語でローカライズを行った疑似ローカライズ版が作成された。使用された人工言語は基本的に英語と同一のものだが、唯一の異なる点としてアルファベットに似せた文字が採用されている。また、この疑似ローカライズ版は、自動生成するという点をのぞいては、通常のローカライズ版とまったく同じ手法で作成されている。英語しか話せないアメリカのソフトウェア開発者でも疑似ローカライズされたテキストを読めるため、開発サイクルの早い段階でグローバライズにあたっての問題をあぶり出せる有用なツールとして使われている。Windows 7ベータ版では、一部のユーザーインタフェースが疑似ローカライズされた状態のままだったため、それが何を意味するのか憶測を呼んだようだ。今回のエントリで謎が解けたのではないだろうか。

疑似ローカライズされたWindows 7のコントロールパネル