Lunascapeは、Webブラウザの最新版であるLunascape 5.1.2を発表した。同社では、6月24日にLunascape 5.1、7月3日に5.1.1と立て続けに公開している。しかし、今回のバージョンアップは、たんなるバグフィックスなどではなく、大きな変更事項を含んでいる。本稿では、それらについて紹介したい。

0.0.2に大きな進化が

一般的にこの程度のバージョン変更では、大きな変更はさほどないと思われるかもしれない。しかし、大きな変更事項がある。まずは、5.1.1では以下のように、GeckoはFirefox 3.5と同じエンジンを搭載、HTML5への対応などが行われ、Geckoでのパフォーマンスが大きく向上している。

  • 正式版Gecko 1.9.1を搭載
  • 最新のWebKit r45367を搭載
  • HTML5に対応

レンダリングエンジンのGeckoは、これまではプレバージョンであったのだが、正式版に対応したことがあげられる。また、HTML5に対応したことにより、Ogg Theora形式の動画、Ogg Vorbis形式の音声などの動画再生を拡張機能なしに行うことが可能となった。

図1 Lunascape 5.1.2

さらに5.1.2は、一見すると大きな違いはなさそうであるが、5.1より以上に、HTMLの読み込み性能や起動速度の向上が図られた。後者については、Lunascapeから提供された資料を紹介したい。

図2 起動速度の比較(Lunascapeのプレスリリースより引用)

1つ前のバージョン5.1.1によるものであることを先に、お断りしておく。これは起動からウィンドウ画面表示までの時間を、Lunascapeの計測ツールを使い計測したものである。ちなみに、CPUはCeleron M 420(1.6GHz)、メモリ1GB、Windows Vista SP2上で10回の計測を行い平均化したものである。

HTMLの読み込み性能については、実際のWebページの表示時間が、体感でもわかるくらいに高速化されている。実際のPCなどの環境による差異はあるが、おおむね1.25倍の速度向上が見られる(同社によれば、NUMIONの「STOP Watch」を使ったYouTubeのサイトでの計測結果による)。これにより、JavaScriptが多用されていないサイトでのブラウジングがより快適になった。以上のように、バージョンナンバーの差こそ小さいものであるが、大きな高速化を遂げている。

5.1とJavaScriptの実行速度を比較

高速化については、SunSpiderベンチマークを行ってみた。SunSpiderベンチマークは、JavaScriptエンジンのレンダリングの実行速度を測定するもので、3Dレイトレーシング、暗号処理、文字列処理などの26項目のテストを行い、その結果を表示する。表示された数値はミリ秒単位で、数値が低いほど高速となる。

純粋にJavaScriptエンジンの性能評価を行うことができるベンチマークである(Webブラウザの総合的な性能はこれだけでなく、HTMLの読み込み速度や起動時間、さらに機能などを総合的に見なければいけない)。各レンダリングエンジンごとの結果は、表1、図3から図8のとおりである。なお、この計測には、筆者の次の環境で行った。

  • CPU Intel Core 2 Duo E6600(2.4GHz)
  • メモリ DDR2 PC2 6400 4GB(実質2.8GB)
  • HDD Serial ATA接続:80GB(起動用)、500GB(データ作業用)
  • マザーボード ASUSTek P5B-VM
  • OS Windows XP SP3
  • NVIDIA GeForce 9800 GT

表1 SunSpiderベンチマーク結果

レンダリングエンジン 5.1 5.1.2
Gecko 994.4 959.8
WebKit 781.6 781.0
Trident 78910.4 58536.6

図3 SunSpiderベンチマーク、5.1.2:Gecko

図4 SunSpiderベンチマーク、5.1.2:WebKit

図5 SunSpiderベンチマーク、5.1.2:Trident

図6 SunSpiderベンチマーク、5.1:Gecko

図7 SunSpiderベンチマーク、5.1:WebKit

図8 SunSpiderベンチマーク、5.1:Trident

どのレンダリングエンジンにおいても、着実な高速化が図られていることが証明された。また、レンダリングエンジンのWebKitが、もっとも高速な結果をたたき出している点にも注目したい。

Luna Labs

またLnascape 5.1のリリースのタイミングで、Luna Labsを開設した。これまで存在したユーザーからの要望を実現した形となる。同社では、Luna Labsにおいて公開可能な実験プロダクトを広く提供し、Webの知的創造活動に貢献していく予定とのことである。オープン時には、フォーラム、ダウンロード、Wikis、Blogなどのコンテンツが用意された。さらにLABSの第一弾として「2ちゃんねるプラグイン」と「Twitterプラグイン」が公開された。

図9 Luna Labs

「2ちゃんねるプラグイン」はLGPLライセンスにて公開されており、ユーザーサイドでのカスタマイズなどを自由に行うことができる。

図10 2ちゃんねるプラグイン

2ちゃんねるプラグインは、2ch閲覧と快適なWebブラウジングとのシームレスな統合を目指すもので、ログ保存など標準的2ch専用ブラウザ機能を有する。図11の色分けは、発言者の発言数によって灰、青、黄、赤(左ほど発言が多い)のように表示される。

図11 2ちゃんねるプラグイン、サイドバーを切り離したところ

プラグインの開発をやってみたい、チャレンジしたいという方は、ぜひ参加をしてみてはいかがだろうか、開発サイドからの直接の回答や情報を得ることもできる。