グラフィックスカードでよく見る「オリジナル冷却ファン搭載!」の売り文句。静音性向上、動作温度低下、何となくカッコいい(?)等々、様々なメリットが謳われているが、実際のところはどうなのだろうか。今回は、標準モデル比で50%の静音化、かつ動作温度が20℃下がるとアピールするエムエスアイコンピュータージャパンの「R4870-MD1G」で、そのあたりの実力検証をしてみたいと思う。

今回試したエムエスアイコンピュータージャパンの「R4870-MD1G」

検証を行う前に、まずは対象となる「R4870-MD1G」の基本的な情報をまとめておきたい。モデル名からもわかるとおり、搭載GPUはAMDのハイエンドクラスに位置づけられる「ATI Radeon HD 4870」だ。肝心の冷却ユニットがどういったモノかというと、9cm角の冷却ファンに、かなりの太さのヒートパイプ2本、円状にひろがる放熱フィンを組み合わせたもので、見た目はいかにも"冷えそう"。ついでにちょっとカッコいいような気もする。

ヒートパイプはかなりの太さで、しかもカードからもハミ出すくらいの大きさ

冷却ユニットの厚みも結構ある。リファレンスクーラーと同様の2スロット占有タイプ

さらに「R4870-MD1G」、出力端子にHDMIを標準装備するという特徴もある

さて、その効果の程だが、冒頭で述べたように、リファレンス設計のATI Radeon HD 4870カードと比べた場合、50%静音化、かつ動作温度20℃低下と説明されている……んっ!? 「ちょ、さすがに"20℃下がる"は無いってば」と、記事のこの部分を書きながらリアルタイム一人つっこみである。「なんてこった! 筆者の体温でいえば、平熱が36℃だから、20℃も下がれば16℃で生存困難ッ!! 本日の東京の気温は30℃らしいけど、それが20℃も下がっちゃえば真冬に逆戻りで寒くて指先がシビれるゥ!」などと、わけのわからない興奮すら覚えてしまう温度の下がり具合なのだ。

「R4870-MD1G」の製品パッケージ。目玉がちょっと怖い

そのパッケージの左下をよ~く見てみると……20℃ッ!

とりあえず、製品パッケージにも「20℃ Lower temperature」とはっきり印刷してあったので、筆者の見間違いとか勘違いでは無いようだ。ましてや天下のMSIが滅多な事を言うとも思えない。しかしながら、製品パッケージに書いてあるのは、もしかすると印刷ミスかもしれない、などと思ってもいないし、誓って完全に決して疑っているわけでは無いのだが、まぁ手許に実物のカードもあるわけだし、実際に調べちゃおっと、というわけである。

テスト環境

とにかく20℃も下がったら大変なことだ、と言いたかったわけだが、そんな筆者が熱暴走気味な前置きパートも済んだところで、ようやく検証スタートである。いつものベンチマークテスト実施時のように、以下の表のような環境を作って、リファレンス設計のATI Radeon HD 4870カードと直接比較を行うこととした。

■テスト環境
VGA MSI R4870-MD1G ATI Radeon HD 4870(リファレンス設計)
CPU Intel Core 2 Duo E8500(3.16GHz)
M/B ASUS P5Q Turbo(Intel P45 Express)
Mem DDR2-800 SDRAM 2GB×2
HDD Seagate Barracuda 7200.11 1TB
OS Microsoft Windows Vista Ultimate 32bit

テストのポイントは3点で、1点目は肝心の動作温度の測定。これについては、ユーティリティソフトなどで計測するのは経験上誤差も大きく、どうも信用できなかったので、非接触で温度を測定できる放射温度計を使い、ちょうどGPUが実装されているあたりのカード裏面(下の写真参照)の表面温度を測ってみた。実際のGPU温度よりは低く出るが、相対的な温度差はより正確にわかるだろう。

写真の「○」が付いているあたり、ちょうどGPUの裏側の温度を……

こんな感じで、放射温度計を使って測定してみた

2点目のポイントは静音効果だが、測定機材が用意できなかったため、こちらの評価は筆者の主観でご容赦いただきたい。そして3点目のポイントはパフォーマンスである。仮に「静かで温度も低い」となっても、「その分パフォーマンスも下がっていました」、では元も子もないので、3DMark Vantageを利用した性能ベンチマークでこれを確かめる。これら3点に注目して、以降を読み進めていただければと思う。