選挙期間中は「HP更新とメール送信禁止」
その後、構想日本の伊藤氏が、「日本の公職選挙法ってどんなもの?」と題し、プレゼンテーションを行った。伊藤氏は公職選挙法の特徴について、「禁止事項が異常に多いが、運用は解釈によるものが多く、白でも黒でもないグレーゾーンが多数ある」と説明。公職選挙法の「何がおかしいか?」に関しては、(1)選挙期間中以外に選挙運動をしてはいけない、(2)演説会は候補者か政党しか主催できない、などの点にあるとした。
公職選挙法のインターネットについての規制については、第142条の「文書図画の頒布」において、選挙期間中の文書図画の頒布は、法で規定されているビラと葉書、マニフェスト以外は禁止されている。「文書図画」は人の視線に訴えるもの全てであり、ホームページや電子メールはディスプレー上に表示されていることから、文書図画と解釈されている。また、「頒布」については、不特定多数に配布する目的として一人以上の人の配布することを指す。これらの規定・解釈を総合すると、選挙期間中のホームページの更新・メールマガジンの送信は禁止されていることになる。
だが、伊藤氏によると、実際にはすでに、選挙期間中にホームページ更新やメール送信を行うなど「インターネット選挙」を行っている議員もいるという。この中には、違法と認識しながら1回目は警告処分で大丈夫だろうと考えている人や、違法の認識がなくメールを不特定多数に送信している人がいる。
伊藤氏は日本において、インターネット選挙を解禁する上での問題点として、(1)デジタル・ディバイド(受け手・発信者双方における情報格差)、(2)偽ホームページ・なりすまし、(3)メールや掲示板による誹謗中傷、などを挙げた。その上で、「日本の選挙制度は候補者中心で固くなっており、有権者のニーズに応えるものとなっていない。公職選挙法そのものを根本の趣旨から変える必要があり、その一つがインターネット選挙」と述べた。
マスメディアは「政治の一部のみ報道」
田中氏、伊藤氏のプレゼンテーションの後、第二部としてパネルディスカッションが行われた。パネリストには、田中氏、伊藤氏のほか、自由民主党衆議院議員の河野太郎氏、民主党参議院議員の鈴木寛氏、NPO法人ドットジェイピー理事長の佐藤大吾氏、フォーナイン・ストラテジーズの西村豊氏が参加。国際大学GLOCOM客員研究員の楠正憲氏がモデレーターを務めた。
田中氏は日本の公職選挙法について、「もう少し有権者の視点に立った法改正が必要」とし、「政治家が政策を語るという雰囲気にはなく、マスコミ報道も政局中心。政治家の商品は『政策』であるという方向で、もう少し日本でも進んでいく必要がある」。伊藤氏は「選挙期間を定めている国は世界でも少ない。日本では、選挙期間が始まった時にはもう実質的には終わっているというような状況にある」と現状を指摘した。
衆議院議員の河野氏は、「誹謗中傷を選挙の時にどう抑えるかなどの問題がある。また、オバマ大統領は数百億円を選挙費用として使えたが、日本は数千万円しか使えない」と公職選挙法の問題点を指摘。学生に政治家事務所などでのインターンシップを仲介しているドットジェイピーの佐藤氏は、「そもそも何のために公職選挙法があるのかを考えると、お金をかけないため。そう考えると、今ほど安く多くの人に政策などを伝えることができるインターネットが有効なのではないか」と政治におけるネット活用の有効性を訴えた。
参議院議員の鈴木氏は「民主党は4回もネット選挙解禁の法律を国会に提出している。ネット献金をどうやって実現するかも課題だ。コミュニケーションツールの技術を即座に取り入れていくためにも、公職選挙法ではやっていけないことだけ禁止して、それ以外はできるようにする。また、政治の一部の情報しかマスコミは伝えていないことを認識し、国民の政治に対する意識を変える必要もある」と述べた。
今回のイベントの呼びかけ人のフォーナイン・ストラテジーズの西村氏は「政治家のためというよりも、有権者の関心を高めるために呼びかけた。皆さんと一緒に前向きな議論をしていきたい」と話した。