安井氏は計画づくりにおいてのもう1つの大事な点として、状況の変化に対応するための多段階の計画づくりについて説明した。

「そもそも計画というのは将来の予想が含まれますが、遠い将来を正確に予想することは難しい。たとえば10年後に自分がどこに住んでいるのか、何の仕事をしているのか、年収がいくらになっていくのか正確に予想するのはかなり難しいはずですが、来年だったらかなり正確に予想できます」(安井氏)

つまり、近い将来は割と正確に予想できるが、遠い将来はあいまいで不正確であるということだ。しかし、計画の期間と精度とを調整することで、妥当な予想が可能になるという。

そして安井氏は、こういった考え方をベースにした計画づくりのモデルである「プランニングオニオン」を紹介。これは本書中でも重要な役割を担っているのだが、ソフトウェア開発を多段階に分けて計画を立てると良い、というものである

プランニングオニオン

プランニングオニオン。本書中にはもっと外側のレベルも登場するが、開発チームが取り組むのは主にこの3つ

プランニングオニオンの一番外側はリリース計画を示す。ユーザーの要望(ユーザーストーリー)をまとめて、それをいつまでに開発するかという内容を、だいたい1.5~3カ月先のこととして計画する。

そして、真ん中の層はイテレーション計画を示す。イテレーションは分析から設計、コーディング、テストまでの1セットで、リリースの計画をもっとブレイクダウンした個別のタスクを検討する。基本的には1-2週間、テクノロジーによっては3-4週間先のこととして考える。

中心は"今日"の計画を示す。その日何をするかを計画する。

このように、そのレベルごとに対象にしているものに焦点を絞って計画づくりをすることで、将来の不確実性を組みこむことが可能になるという。

安井氏「アジャイルな開発の現場ではすべきことが日々変わっていくので、毎日計画を立てるのです。"アジャイルは計画しない"というのは誤りで、こんなにも毎日、計画を立てているんです」と締めくくった。