グレープシティでツール事業部マーケティング部部長を務める福地雅之氏。もともとテクニカルサポート部門にいただけあって、開発に関わる話にも明るい

--今後の製品戦略について教えてください--

市川氏: これまで、海外の製品を日本語にローカライズするにあたって蓄積したノウハウには自信があり、それを強みとして、これからは自社開発の製品を海外の市場に出していきたいと考えています。

通常、当社のローカライズは、完成品として出荷された状態の製品を、一からテストし直すところから始めます。日本語に関わる部分だけでなく、製品機能そのもののテストも行うのです。実はこれがローカライズ作業のなかで、最も工数をかける部分です。

福地氏: テストの結果は海外のパートナーにもフィードバックしており、当社のテストで見つかったバグはオリジナルの製品にも反映されます。そのため海外のパートナーからは、当社と提携すると、製品のクオリティや機能がブラッシュアップされて製品価値が上がると歓迎されているのです(笑)。

テストと言えば、海外のパートナーに「文字化け」を理解してもらえなかったことが印象に残っています。例えば、彼らに文字が化けた状態の画面を見せても、ひらがなや漢字など、正しく表示されるべき2バイトの文字を知らないので、化けた状態の文字がおかしいとわからなかったのです。今では、彼らも2バイト問題を理解しており、対処してもらっていますが。

--パートナーにしてみれば、販路は広がるし、製品のクオリティは上がるしと、一石二鳥ですね--

福地氏: 昨年10月に、当社は帳票コンポーネント「ActiveReports」の所有権を獲得しました。この時も、同製品の開発元である米Data Dynamicsからは、「グレープシティだったら、製品と顧客を大事にしてもらえるから、所有権を譲りたい」という言葉をもらっています。

われわれは、単に外国語の製品を日本語翻訳して販売しているわけではありません。いわば、日本版の製品を作り上げていくくらいの意気込み、これが当社の目指すローカライズです。このような気持ちで対応していると、パートナーとの連携も自然と深まっていきます。

実際、オリジナルの製品と異なる機能もたくさん開発しています。例えば、帳票ツールを利用しているお客様から多くの要望が寄せられた外字出力の機能がそうです。しかし、当然ながら、英語版のパンフレットにはこの機能について触れられていません。こうしたこともあり、「当社で開発した製品を海外の市場にも出していきたい」「海外でも当社の製品が受け入れられるに違いない」と考えるようになりました。

--これからどのような製品の開発が予定されているのでしょうか?

市川氏: 注目している技術としては、マイクロソフトのSilverlightとWPF(Windows Presentation Foundation)が挙げられます。ただ現時点で、SilverlightはWPFに比べると制約が多く、業務アプリケーションの開発に用いるという点では弱いです。したがって、当社では、業務アプリケーションの開発に向いているWPF関連の製品の開発を先行し、力を入れていくつもりです。

天井が吹き抜けになっていて、窓から太陽の日差しが降り注ぐ開放的なエントランス

庭の中を流れる川から水が注がれる池。気候がよい時期は、庭の休憩コーナーでランチをとる人たちもいるとか

インタビューが終了した後、福地さんに社屋を案内していただきました。天井の高いエントランスと、芝が生えていて池がある庭には開放感がありました。頭脳労働で疲れたエンジニアの方も庭に出ればリフレッシュできるのではないでしょうか? また、エンジニアの方がいるオフィスもウッディなインテリアで、一人当たりが使えるエリアが広く、仕事に集中できる雰囲気が漂っていました。

丁寧なテストを繰り返しながら、海外の優れた製品を国内に紹介してきたグレープシティですが、今後は、ぜひ国産アプリケーションのよさを海外にアピールしていってもらいたいと思います。これからも同社の動向から目が離せません。