また、仮想化は既存のソフトウェア産業の枠組みを大きく揺さぶることになる可能性がある。「従来、アプリケーションの開発者は、ほぼすべてのOS、ミドルウェアに対してテストを実行する必要があった。アプリケーションはどこで使われるかわからないからだ。しかし、『仮想マシン』が中心になってくると、すでにOSもミドルウェアインストールされた状態になっているとともに、事前定義もされている『ソフトウェア・アプライアンス』が利用される。エンドユーザーはこれを『オン』にするだけでよい」(同)ことになる。
このような時代になると、従来のソフトの価格設定やライセンス・モデルは非常に大きな変革を迫られる。仮想化の進展は、ソフトがそれぞれのハードに固定化されなくてもすむ状況を現出させるからだ。となると、ソフトへの対価は、使用量、ワークロード、ユーザー、トランザクションなどにより決まってくるようになるという。このような潮流は、必要時に、必要な分だけサービスを提供するクラウド・コンピューティングを加速させる。
厳しい時代乗り切る手立てに
さらに仮想化は、OSのあり方にも大きな一石を投じる。「ソフトウェア・アプライアンスでは、OSには、すべての特徴が含まれていなくても十分だ。これまでは一般的だった汎用的なOSでなく、『軽い』OSであれば良い」(同)。さらに、データセンターのOSも変わるという。今後、データセンターのためのOSは、実際に必要な機能だけを用い、余分な部分は取り除き、アプリケーションのスケジューリング、管理などを担う「メタOS」と呼ばれるOSが求められるようになると、ガートナーではみており、OSの分岐が起きると予測する。
クランチ氏は「仮想化の広がりは、IT自体のあり方を変える。企業は、仮想化を戦略的な変更エージェントみなし、計画とビジョンをもって、活用していくべき。仮想化は、現在の厳しい時代を乗り切る手立てになる」と結んだ。