フィンランドNokiaは16日、スペイン・バルセロナで開催中のモバイル業界のイベント「Mobile World Congress 2009」でEseriesの最新機種「Nokia E75」「Nokia E55」を発表した。あわせて、同社のインターネットサービス「Ovi」ブランドの最新サービスとして、アプリケーションストア「Ovi Store」も発表、サービス戦略を強化した。

CEO、Olli-Pekka Kallasvuo氏。サービスで端末戦略を補完するとし、「Nokia端末は、インターネットの可能性を解き放つ」と述べた

Nokia 上級副社長のKai Oistamo氏

Nokia Service事業部コンシューマメッセージング担当副社長兼ゼネラルマネージャのTom Furlong氏

ビジネスユーザーから裾野を拡大、Eseries

E75は、カバーを開くとQWERTYキーボードが現れるスライド式端末。「Nokia 9000」「Nokia 9300」などのコミュニケーターの流れを引き継ぐモデルとなる。同社上級副社長のKai Oistamo氏は、「これまでで最高の電子メール端末」とアピールした。

E55は高級感を出しつつフォームファクタを小さくし、これまでEseriesが狙ってきたビジネスユーザーからターゲットを拡大。スタンバイモードで1カ月というバッテリ持続時間も特徴で、「最高のパフォーマンスを持つスマートフォン」だという。

両端末ともに、最新の電子メールインタフェースと「Nokia Messaging」を搭載するなど、電子メール機能をプッシュしていく戦略だ。Nokia Messagingは、「Gmail」「Yahoo! Mail」「Hotmail」や一部ISPの電子メールをサポートすることで、会社のメールと個人用メールアカウントを利用できる。設定は容易で、自分のユーザー名とパスワードを設定するだけで利用可能。電子メール機能を強化することで、カナダResearch In Motion(RIM)に対抗する。

「Nokia E75」

「Nokia E55」

また、米IBMや米Microsoftとの提携により、Windows Mobile端末向けのレプリケーション機能「Lotus Notes Traveler」などに直接アクセスできる。Oistamo氏は、高価なミドルウェアやサーバーを追加する必要はなく、「Eseries全機種に加え、40機種以上のNokia端末でモバイル電子メールを利用できる。世界の企業の受信ボックスの90%をモバイル対応可能だ。"BlackBerry税"は必要ない」とコメント。「グローバルにモバイル電子メールの採用を実現できるのはNokiaだけ」と自信を見せた。

モバイル電子メールに本腰、SNSも対応へ

RIMとの競合について、Nokia Service事業部コンシューマメッセージング担当副社長兼ゼネラルマネージャのTom Furlong氏は、「RIMはエンタープライズでモバイル電子メールを普及させたが、コンシューマはわれわれのテリトリ」と語る。E55の発表を契機に、一般ユーザーへのモバイル電子メールをNokiaが牽引していく狙いだ。

Nokiaのモバイル電子メール戦略は、提携戦略のエンタープライズ、メールサービス統合の一般ユーザー、さらにはメールアカウントを持たない新興国を意識した「Ovi Mail」の3本柱で展開する。Ovi Mailは昨年発表したサービスで、エントリ向けのUI「S40」でも設定可能。今年は、Nokia MessagingをS40に対応させるとしている。

Furlong氏はモバイル電子メールが一般ユーザーに普及しない原因について、「使いにくさよりも、そんなことができると知らないから」と分析する。機能の発見、設定、利用をシンプルにすることで、この課題に対応するという。

メッセージサービスの分野では、今年後半にIMに対応するほか、FacebookなどSNSサービスも統合していく予定だという。

パーソナライズが特徴、アプリ・ストア

Nokiaはこれまで、アプリケーションの入手チャネルとして「Download」「WidSets」「MOSH」の3つを提供してきたが、これを「Ovi Store」として1つにまとめる。Ovi Storeは、S40とS60に対応するアプリケーション、ウィジェット、メディアコンテンツをダウンロードできるという。

Ovi Storeのようなアプリケーションマーケットプレイスは、米Appleの「App Store」が成功を収めており、米Googleも「Android Marketplace」を開始している。Ovi Storeは、これらの後続となる。収益は、アプリケーション開発者とNokiaで共有する。配分は、開発者が70%、Nokiaが30%となる。

Ovi Storeが利用できる最初の端末は、今年6月に発売を開始する最新のフラッグシップ製品「Nokia N97」となる。開発者らは3月より、「public.ovi.com」を利用してアプリケーションをアップロードできる。Ovi Storeは5月に提供を開始する計画だ。