NTTドコモの山田隆持社長

NTTドコモは1月30日、2008年度第3四半期(2008年4-12月期)の連結決算を発表した。売上高は、対前年同期比4.1%減の3兆3,788億円、営業利益は同19.5%増の7,468億円、税引前利益は、同12.8%増の7,094億円、当期純利益は同16.3%増の4,377億円で、減収増益だった。

営業利益の通期見通しに対する進捗率は90%で、同社の山田隆持社長は「新たな割引サービス、販売モデルの効果があった。おおむね順調な結果」と評し、通期の営業利益見通しである8,300億円は据え置いた。また、同社は、第2世代通信サービスである「mova」、「DoPa」を、2012年3月で終了させると発表した。

「ファミ割MAX」、「ひとりでも割50」「オフィス割MAX50」などの新割引サービスの契約数は、2008年12月末時点で3,043万に達し加入率は56%となっている。また、新販売モデルの方では、バリュープランの契約数が同月末で1,640万、バリューコースの選択率は9割を超えている。これらの状況を反映し、解約率は第3四半期(2008年4-12月累計)で、0.49%にまで低下、同10-12月期だけをみると0.44%となっている。これは「ドコモ始まって以来の低い解約率」(山田社長)であるという。さらに、MNP(番号ポータビリティー)によるユーザーの増減でもこの12月にはプラス1,200で、「2006年11月には最大でマイナス16万4,000にまでなったが、大きく改善した」(同)と説明する。

減収だが、営業利益は19.5%増

ただ、経済全体の状況悪化の影響や新ビジネスモデルによる買い替え頻度の低下により、端末の総販売数は同23.5%減の1,478万台となっている。これについて山田社長は、「市場全体が冷え込んでいる。春の商戦期には引き続き販売に力を注いでいきたい」とする一方で「通期の販売数予測は、2,200万台に修正している。だが、景気動向にもよると思われるが、2,000万台を下回る可能性もある」との見通しを示した。

今回(2008年4-12月期)、同社のARPU(Average monthly Revenue Per Unit:1契約当たり月間平均収入)は、総合で前年同期比10%減の5,820円だった。通話による収入である音声ARPUは18.3%減の3,340円だが、データサービスによる収入のパケットARPUは同8.6%増の2,390円だ。パケットARPU増や解約率低下は好要因であったものの、音声ARPU減の影響により、携帯電話収入は今回、2,695億円の減だった。しかし、新販売モデルにより、端末の単価が上昇するとともに、販売店を支援してきた「販売奨励金」は減った。実際、「代理店手数料」は773億円の減。さらに販売数減少で端末調達費用が2,493億円の減となり、売上高は1,433億円減った。それにより、端末販売費用も3,266億円減り、営業増益の原動力となった。

全体では増益にはなっているものの、「総販売数の減には危機感をもっている」(同)ことから、同社では国内・海外を問わず、端末メーカーの開発費の一部を100億円規模で負担する方針を明らかにした。山田社長は「当社から、メーカーに対し、サービス強化を依頼する部分のソフト開発費を支援する。その部分の知的財産は当社が得ることになり、また、メーカーは端末を安くできる」と述べた。これは今年度の施策として実行され、来年度以降は「状況をみながら検討する」(同)意向だ。

販売減につながるかもしれない要因はまだある。文部科学省は、小中学校への携帯電話の持ち込みを原則禁止すべきとする指針を全国の教育委員会などに通知している。これについて山田社長は「携帯電話は便利だが、光と影の両方がある。フィルタリング機能強化などで、『影』の部分をできるだけ小さくしていく。持ち込み禁止には反対するつもりはない」と話し、「春商戦は、15歳以上の層に照準をあわせており、持ち込み禁止の影響は少ない」とした。

また、経済状況の影響に直撃されている、SIをともなう法人向け分野については、「金額にして、前年同期比で19%ほどの減になる可能性もある」(同)という。対策としては「携帯電話によるソリューションが、企業の効率化や販売強化などにむすびつき、利益拡大につながるということを訴求していきたい」(同)としている。

一方、雇用情勢が厳しくなっているなか、同社は2010年度の新卒採用を、前年度比およそ2割増の360人程度とするとともに、非正規従業員の正社員化も増員。従来の年間80人程度を2倍の160人程度に引き上げる。