米国時間の1月5日から9日の日程で、米サンフランシスコにおいてMacworld Conference & Expo 2009が始まった。Appleが出展する最後のMacworld Expoになるというさびしい話題が先行したものの、同エキスポにはMacコミュニティのためのイベントという側面もある。会場となるMoscone Center周辺に集まるMacユーザーの様子は、いつもと変わらない。6日に行われる基調講演のスピーカーはSteve Jobs氏ではなく、Phil Schiller上級副社長が務める。それでも基調講演の日の早朝(午前4時)にMacユーザーグループがApple Store前に集まり、発表の予想をしながら基調講演会場に乗り込むイベントが例年どおり行われる。
ここ数年AppleはMacworldとWWDCの基調講演に加えて、iPodイベント、さらに1~2回のスペシャルイベントを開催するようになっていた。これらの中でMacworldは唯一、ユーザー/ 開発者/ パートナーを含むMacコミュニティ全体が参加できるイベントである。そのためMacworldでの基調講演は、会場の熱気が講演をさらに盛り上げる独特の雰囲気になる。そのMacworldへの参加を取りやめるのだから、Appleにとって1つの時代に終止符を打つような大きな決断だったと言える。5日にAppleおよび同社の取締役会がJobs氏の健康状態に関する情報やコメントを発表して健康不安説を打ち消したが、それからも多くの人にとってAppleのMacworld撤退が予想外の決断だったことが分かる。
Appleは参加取りやめの理由として直営店やWebサイトを通じたユーザーとの結びつきを挙げている。加えて、ここ数年の同社のスペシャルイベントに対する注目度の高さである。これらを考え合わせると、発表の場としてあえて大規模なトレードショーを利用するメリットは見あたらない。逆にデメリットはいくつかある。まず1月上旬という開催時期がよくない。年末商戦が終わった直後であり、米国で8〜9月の新学年シーズン向け製品を発表するには早すぎる。ここ数年Appleは9月上旬にiPodイベント、その前後にMac新製品のスペシャルイベントを開催しているように、新学年シーズンやホリデーシーズンにタイミングを合わせて製品を送り出している。Macworldは時期的に、そのような消費者を見据えたマーケティングを行いにくいイベントだ。毎年秋頃になるとMacworldで発表される製品の噂や予想が出始め、ホリデーシーズンにそれらの現行製品の買い控えが起こる可能性すらある。またWWDCやスペシャルイベントのようにApple主催のイベントではないため、日程を含めてAppleがコントロールできない。毎年1月の上旬に向けて大きな発表の準備を整えなければいけないのはプレッシャーである。昨年AppleはiPhone 3G発売に合わせてMobileMeをローンチさせようとして失敗したばかりだ。準備が整った時に製品を提供する体制を同社が優先しているのは評価すべき選択と言える。
ただ前述の通り、Macworld ExpoはMacコミュニティのお祭りイベントである。今年は景気減速の影響からAdobe、Belkinなどが出展を取りやめたが、それでも数多くのMac、iPod/ iPhone向けの製品がMacworldで発表される。その場にAppleがいなくなるのは寂しい限りだ。サンフランシスコ開催とは言え、Apple不在のままMacコミュニティのイベントとしてMacworld Expoが存続していけるかは気がかりなところ。主催者のIDGは来年2010年について1月4日~8日の開催を発表しているが、中止となる可能性もある。同社は7日にタウンホール形式の討論会を用意しており、2010年以降の開催について広くMacworld参加者から意見を集める予定だ。
さて今年のMacworld Conference & Expoは米国時間の6日午前9時からPhil Schiller氏による基調講演、そして11時に展示ホールが開場となる。カンファレンスは200以上のセッションが用意されており、5000人以上の参加者が見込まれる。このほかNew York Times紙のテクノロジーコラムニストDavid Pogue氏、テクノロジーラジオショーのホスト/ブロガーであるLeo Laporte氏のプレゼンテーションが用意されている。また期間中はiPhone Intelligence Party、MacWorld Tweet Upなど数多くのコミュニティイベント、さらにEFFの18周年記念イベントなどが計画されている。