"カラダの歪み"を手軽にチェックする。そんなヘルスケアITソリューション『ゆがみーる』を開発したジースポートが、「Microsoft Innovation Award 2008」最優秀賞を受賞した。8月開催の「Microsoft Tech・Ed 2008 Yokohama」では優秀賞として出展し、ブースを訪ねたマイクロソフト日本法人 樋口泰行社長の歪みもチェックした。選出されたポイントとは?

ヘルスケアIT「ゆがみーる」のジースポートが最優秀賞

Innovation Awardは、マイクロソフト製品を使ったソリューションの開発ベンチャーを表彰する賞で、今年が2回目の開催となる。事前に同社イノベーションセンター選考員による書類審査で5社を優秀賞としてノミネート。8月開催の技術者向けカンファレンスTech・Ed 2008でノミネート各社が展示ブースを用意し、来場者投票を実施した。11月19日、東京都内で開催されたITベンチャー企業向けイベント「Microsoft Innovation Day」において、投票結果と同社審査員の審議を踏まえ、最優秀受賞企業が発表された。

ヘルスケアITソリューション「ゆがみーる」を開発したジースポートが最優秀賞受賞企業に。写真中央は同社代表取締役社長 黒田篤氏。トロフィーと賞金100万円が贈られた。写真右はマイクロソフト代表執行役社長兼マイクロソフト コーポレーション コーポレートバイスプレジデント 樋口泰行氏、写真左は同社業務執行役員 CTO 加治佐俊一氏

選ばれたのはヘルスケアITソリューション「ゆがみーる」を開発したジースポート。マイクロソフト 業務執行役員 CTO 加治佐俊一氏は同ソリューションを「世界的な健康志向の広がりをみると、世界中で採用される可能性は高い」と評価する。専用カメラで撮影した人体を分析し、姿勢評価や歪みの方向、筋肉の緊張などをレポートしてくれるシステムだ。これだけのことが、3ポーズ分の撮影と数分の処理だけで済む。ジースポート代表取締役社長 黒田篤氏は「自分のカラダを知りたいというニーズに応える」ものと説明。東京大学在籍時に研究していた人体モデルのCG技術などをいかしたソリューションで、すでにクリニックやスポーツ施設、健康イベントなどでの導入・レンタル実績を持つ。「ゆがみーる」の解析レポートが、たとえば、フィットネスクラブで各会員に適したトレーニングの組み立ての提供、肩こりや腰痛といった問題の改善に利用できるとして、高い評価を得ているという。同社はこのほかにも、筋肉や節骨格の動きを3DCGで再現できる解剖学ソフトウェア「解体演書」を開発し、NHKの番組制作に採用されるなどしている。

黒田氏はInnovation Awardについて、「(『ゆがみーる』などの)商品や技術の告知など、一般企業やユーザーに我々のような小さなITベンチャーを知ってもらう機会」の創出になっていると話し、今後も健康に興味を持つユーザーに向けてソリューションを提供していく。

「ゆがみーる」は、Microsoft Visual Studioで開発され、リアルタイムカメラコントロールにDirectShowを利用。数分で歪み解析に基づいた2枚のレポートが出力される

ちなみに、今年8月にパシフィコ横浜(神奈川県・横浜市)で開催されたTech・Ed 2008では、マイクロソフト代表執行役社長兼マイクロソフト コーポレーション コーポレートバイスプレジデント 樋口泰行氏が、Innovation Award優秀賞受賞各社のブースを訪問した。ジースポートのブースでは樋口氏も歪みチェックを受けていたのだが、果たしてマイクロソフトの"屋台骨"は大丈夫だったのだろうか(もちろんプライバシー情報である)。

Tech・Ed 2008 Yokohamaの会場において「ゆがみーる」を体験したMS樋口社長。ジースポートの黒田氏は何かを知っ……

Innovation Award受賞企業への支援は?

Innovation Award受賞企業に対しては、マイクロソフトからマーケティング面や技術面での支援のほか、グローバル展開サポートなどのプログラムが用意されている。

授賞式後の記者会見では、2007年の受賞企業であるネットディメンション代表取締役 林徹氏とLoiLo取締役 杉山竜太郎氏から、この1年間の支援内容や事業展開が紹介された。林氏は、強力なMSブランドの受賞歴によって大手企業からも評価を得られたほか、マイクロソフトのシリコンバレーやシアトルのオフィスツアーを通じたネットワーク作りができたと話す。「日本のIT製品が世界に出にくい状況で、(世界にアピールする)機会を色々な形で提供してもらっている」とそのメリットを強調した。杉山氏は、ユニークなGPGPU動画編集ソフト「LoiLoScope」を開発。Direct Xを活用したソフトで、マイクロソフトの技術者やエヴァンジェリストからの迅速で手厚いサポートによって「面白いアプリケーションができた」(杉山氏)。NHKエデュケーショナルと共同で、同ソフトのキッズ版「そうぞうライブラリー」を開発するという展開も見せている。そうした経験から、今回のInnovation Award受賞企業に対しても、マイクロソフト関係者と積極的に関係を築いて、製品開発に活かしてほしいとコメントした。なお、2007年のそのほかの受賞企業であるソフトアドバンス、チェプロ、ナルボ の3社は、学生支援プログラムに参加(関連記事)。Microsoft Imagine Cup 2008日本大会(4月)およびフランス本大会(7月)に挑戦した学生のメンターを務めるなど、同賞をきっかけにIT人材育成分野にも携わっている。

2007年のInnovation Award受賞企業、ネットディメンション代表取締役 林徹氏(写真左)、LoiLo取締役 杉山竜太郎氏がその後の経過を報告

「Innovation Award 2008」受賞企業

受賞 企業 サービス 概要
最優秀賞 ジースポート ゆがみーる ヘルスケアITソリューション。カメラ連動で人体の歪みを解析
優秀賞 アプレッソ DataSpider Servista ノンプラグラミングで、企業内のさまざまなシステムやデータを連携
ストローハット InfoPath地域連携パスシステム 「Microsoft Office InfoPath」を使った地域医療連携ツール
ビバコンピュータ Feelimage Analyzer デジタル画像から色を解析、人間の感覚にマッチした色名を表示する画像色解析システム
ユニバーサルロボット 静脈認証ソフトウェア スマートフォン搭載カメラを利用した静脈認証を可能にする

Innovation Award 2008受賞企業の方々