韓国内でSamsung電子の携帯電話は「Anycall」というブランド名で知られている。Samsung電子自体のブランド力とあいまって、信頼感・人気共に高く、現在シェアは1位となっている。そんなAnycallのブランド価値が、10年で10倍以上上昇したことが明らかになった。

資産価値、10年で10倍以上

上記の結果は、韓国の高麗大学校の経営学科パク・チャンス教授と、米スタンフォード大学のV.Srinivasan教授が共同で開発した、ブランド測定方法「EQUITYMAP III」によって明らかになった。これは市場のシェアと商品単位当たりの収益性などを基準として評価される数値だ。

これによりAnycallの資産価値は、5兆7,000億ウォン(約3,916億6000万円/1円=0.0687ウォン)に達すると計算された。10年前の1998年、同資産価値が5,244億ウォン(約360億3,200万円)だったので、2008年にはそれが10倍以上になっていることが分かる。

Anycallに対する韓国でのイメージといえば、「最先端」「技術力」「信頼感」といったようなものだ。常に新しい技術や機能を提案し、最先端を行くイメージがある。Samsungという、グローバルに活躍する企業イメージが強いため、製品に対する信頼感は高い。そうした1つ1つのイメージが、Anycallのブランドイメージを高めている要因であるといえる。

新しさを常に提案

Anycallブランドが初めて登場したのは1994年にまでさかのぼる。まだ携帯電話市場も草創期だった1995年には「韓国の地形に強い」というスローガンを掲げ、その名の通り、どこでも通じるという、信頼性の高いイメージを広めたのが功を奏し、シェア1位を獲得した。それ以降14年間、同社はシェア1位を維持してきている。

スローガンは時代に合わせて変わっている。現在は「Talk, Play, Love」という、感性的なスローガンとなっており、デザインやタッチ感、製品イメージなどを重要視する最近の傾向に合わせている。

「韓国の地形に強い」をうたった、95年のポスター

カラー画面の携帯電話をアピールする、2001年のポスター

画面が横倒しという新しい機能で、いちやく人気シリーズとなった「横本能」(2004年)のポスター

携帯電話のスリム化に拍車をかけた、2005年のスリム携帯のポスター

端末の機能では、画面のカラー化、横倒しディスプレイ、スリム化、高画素カメラなどで市場をリードしたことが印象的だ。とくに横倒しになるディスプレイがついた携帯シリーズ「横本能」は、地上波/衛星DMBの普及とともに人気を博したほか、「世界最薄」商品が連発された、端末のスリム化競争にも注目が集まった。また1000万画素のカメラ付き携帯「SCH-B600」を開発したことも、業界には大きなインパクトを与えた。

新しい技術をいち早く取り入れて商品化する最先端イメージが強いのも、こうした点からだろう。

ブランド力があるだけに、携帯電話のバグなども大きな話題となりやすい。2008年に大きく取り上げられたのは、「Soul(SCH-W590[SK Telecom])/SPH-W5900(KTF)/SPH-W5950(LG Telecom))」で警察署につながるはずの「112」番にかけると、消防防災庁につながってしまうミスがあったというもの。Soulはグローバルで販売された戦略的な携帯電話だけに、いっそう注目を集めた。

Samsung電子では最近、タッチスクリーンや高画素カメラを搭載した携帯電話を多く発表している。これらも韓国では一定の人気と話題を集めており、Anycallブランドをさらに高めているようだ。こうした人気はどこまで続くのか、そして続けるためにSamsung電子はどういった手を打ってくるのかは、注目に値するところである。

「Soul」。メイン画面とタッチキーパッドが上下に2つ並んでおり、メイン画面の操作内容に従って、下のタッチキーパッドのアイコンなどが自動的に変化するのが特徴だ