NVIDIAは11月7日、GPUの新しい活用法に関する記者説明会を行った。既存の製品・技術の話題が中心で、目新しい情報は少なかったものの、直近の同社GPUをとりまく最新状況がわかりやすくまとめられていたので、これをレポートしておきたい。当日のスピーカーは同社アジアパシフィック地域 テクニカルマーケティングマネージャーのJeff Yen氏。

NVIDIAのアジアパシフィック地域 テクニカルマーケティングマネージャー、Jeff Yen氏

ビジュアルコンピューティングのひろがり

ここ最近、同社が頻繁に提示している「ビジュアルコンピューティング」というキーワード。ユーザーのPC体験のビジュアル化という意味だそうだが、今後はそのビジュアルコンピューティングがますます加速して行くというのがNVIDIAの基本的な考えだ。

ビジュアルコンピューティングの拡大は今後さらに加速するという

先日Adobeがリリースした「Adobe CreativeSuite 4」について、Yen氏は、最も重要な要素にGPUの処理能力を導入した点を挙げる。また、今年の10月に発表されたばかりの新型Macノートについても、「GeForceが新しいMacにパワーを与えた」と強調する。そして、ソフトウェアとハードウェアを扱う両社の共通点が"クリエイティブ"であることに触れ、「クリエイティブなユーザーであれば、NVIDIA GPUは避けて通れない」とアピールした。

AdobeとAppleのコメントを紹介

ビジュアルコンピューティングはまずゲームからはじまった。そして現在、デザイナーなどが使うようなプロフェッショナル向けソリューションにもひろがった。続いて、その波は例えばコンシューマに身近なOSなどの分野にも届きはじめているのだという。「その中心にあるのはGPUだ」というYen氏はまた、ビジュアルコンピューティングがコンシューマの分野においても、これまでになかったひろがりを見せるだろうと予測する。

既にグラフィックスだけでは足りない

ビジュアルコンピューティングのほかにもうひとつ、「Graphics Plus」も同社が前面に押し出しているキーワードだ。GPUによる汎用並列処理のアーキテクチャ「NVIDIA CUDA」のアピールである。Yen氏は「GPUの付加価値は、単にゲーム、グラフィックスだけでなく、さらにそれを超えたコンピューティング体験を提供することができる」と話す。

ところでYen氏によれば、ライバルなどから「NVIDIAのグラフィックスパフォーマンスが振るわないから、Graphics Plusを言い出したのだろう」という指摘があったらしいのだが、「ベンチマークを見ればわかるが、GeForceは強力なパフォーマンスを持っており、今後の高性能化もさらに進む」。だからその指摘は「正しくない」のだと言い切る。

グラフィックスが劣っているからではなく、「ビジュアルコンピューティングのリーダー、パイオニア企業として、GPUが単にグラフィックスだけではなく、もっとたくさんのことができるとわかっている」から、「Graphics Plusなのだ」というのが、NVIDIAの主張だ。

ということで、そのGraphics Plus、つまりCUDAのアーキテクチャが具体的に実現すること……の前に、そもそもCUDAとは何なのか? GPUを汎用並列処理に利用できるC言語開発環境で……と、難解な話題になってしまうのでとっつきにくいのだが、ここで重要なのは「現在市場に出回っているCUDA対応GPUが1億ユニットを超えている」(Yen氏)ということ。既に普及の土壌ができていることがポイントなのだ。

CUDAによってグラフィックスだけではない様々なことが実現できる

上記スライドの4項目で一番右にある「3D Stereo」について。実機のデバイスを試すことができた。ハードウェアは倍速駆動のディスプレイ(3D化のため60MHz×2画面分の画像を出力するためだそうだ)のほか、写真の3D化のためのシャッター機能付きメガネと、メガネのシャッターをコントロールするレシーバー

加えて3D Stereoに対応するGPUはGeForce 9800 GTX以上。ハイエンドユーザー向けらしいので仕方ないが、最大のハードルはコストだろう

加えて、NVIDIAのGeForce GPUが「2つのモード」を兼ね備えていることもポイントだとされた。ちなみに、これはGeForce 8シリーズから既に盛り込まれている特徴だという。まずは、おなじみのグラフィックス・プロセッシング・アーキテクチャのモード。そしてもうひとつが、汎用並列処理アーキテクチャのモードだ。ここでは、一度にどちらかのモードしか使えないというのではなく、どちらのモードでも1つのGPUで、かつ同時に使うことができるというのが特にポイントだ。

GeForce GPUは2つのモードを兼ね備える

例えば1枚のGeForceグラフィックスカードでゲームを遊んでいる場合。GPU内部でプロセッサコアを2つのモードの各処理に割り振ることで(実際には、GeForce GTX 280ならプロセッサコア240基で、コア24基で1クラスタを構成し、10クラスタというように、プロセッサコアが何基か集まってひと塊のクラスタを構成。そのクラスタ毎にモード割り振る)、ゲームグラフィックスをレンダリングしつつ、CUDAベースのPhysXもあわせて有効にすることができる。

PhysXは新たなゲーム体験を提供し、また最新のGeForce GPUであればPhysXを利用しつつ高パフォーマンスも維持できるという

PhysXの対応ゲームは豊富で、今後も数多くの対応ゲームが登場してくると説明