ソフトバンクモバイルの孫正義社長

ソフトバンクモバイルは30日、携帯電話の待受画面上に小さなアプリを配置して簡単に実行できるようにした「モバイルウィジェット」サービスを発表した。会見で同社の孫正義社長は、「待受画面がポータルのような役割を果たすようになる」として、ウィジェットの利便性を強調した。サービス開始は11月下旬以降、対応端末が発売されてからになる。利用は無料だが、月額315円の「S!ベーシックパック」への申し込みが必要。

ウィジェットの動作画面。画面は931SHのため指でタッチしているが、十字キーなどでも操作できる

1画面に3つ以上、4画面以上のウィジェットを設置できる(931SHは4画面)

モバイルウィジェットは、待受画面に貼り付けた小さなアイコン上のアプリで、天気やニュースなどの情報や、Webサイトの新着情報などのさまざまな情報の表示、よく使う機能へのアクセスなどが簡単に行える。インターネット経由で情報を自動更新できるため、いつでも最新情報を待受画面に表示することができる。

同様のウィジェットはKDDIやウィルコムも提供しているが、孫社長は「他社よりはるかに本格的でフル機能(を備えている)」と自信を見せる。

当初対応するのはこの秋冬の新端末「AQUOSケータイ FULLTOUCH 931SH」(シャープ製)の1機種のみだが、「ほかの機種にも続々と載ってくる」(孫社長)という。同社によれば、まずはハイエンドモデルから搭載を拡大していく計画のようだ。

最初のモデルである931SHには、13種類のウィジェットをプリインストールする。同梱されるのはYahoo!天気情報のほか、「S!速報ニュース」「Yahoo!地図」「Yahoo!検索ランキング」など、同社またはグループ内からが提供するウィジェットに加え、ミクシィやディー・エヌ・エー(DeNA)などの企業からもウィジェットが提供される。

931SHにプリインストールされるウィジェット

同社ではモバイルウィジェットを広めるために、「代表的なネットカンパニー」(同)を集め、「インターネット・パートナーズ」として共同企画の実施や相互のサービスの融合、新しいビジネスモデルの構築を実施していく。

会見に参加したインターネット・パートナーズのメンバー。左からヤフー取締役兼COO・喜多埜裕明氏、マイスペースの大蘿淳司社長、孫社長、ミクシィ・笠原健治社長、ニワンゴ・杉本誠司社長、ディー・エヌ・エー南場智子社長

これに賛同したのがDeNA、ニワンゴ、ミクシィ、マイスペース、ヤフーで、DeNAは携帯向けゲームサイト「モバゲータウン」の最新ゲームやニュース、未読メッセージ、ランキング情報などを表示するウィジェットを提供。ニワンゴでは動画投稿サイト「ニコニコ動画」にすぐにアクセスできるようなウィジェットを開発中。

DeNAのモバゲータウンウィジェット

ニコニコ動画のウィジェット

なお、ニワンゴの杉本社長は、iPhone向けに開発中のニコニコ動画アプリを公開。開発は「順調」で、「ニコ動らしいものにしようと開発中」とのことだ

ミクシィは待受画面から素早く日記を作成できたり、新着情報の通知が見られるウィジェットを提供。マイスペースでは、通常のサイトとは異なるコンセプトだという「マイスペース@アーティストと友達に♪」ウィジェットを提供。マイスペースに投稿するアーティストとの出会いからアーティストの情報、ファン同士の交流、楽曲の試聴などが可能なウィジェットとなる。これに伴い、マイスペースに参加するアーティストの楽曲の着うたフルを毎月1曲、先着1万人に提供するサービスも行う。

mixi用ウィジェット

マイスペース用ウィジェット

ヤフーでは同社の8つのサービスと連携するウィジェットをそれぞれ提供。特に目玉にしたいというのが「Yahoo!マチモバ」ウィジェット。ヤフーが持つ60カテゴリ・600万件以上という地域情報をウィジェットから検索できるようにする。

ヤフーでは8つのウィジェットを一気に公開する

孫正義社長は、「ブロードバンドという言葉を広めたのは私で、流行語大賞と持った。ウィジェットもそれで広めていく」と意気込んでいる。

ウィジェットは、同社とヤフーが共同運営する「ウィジェットストア」で一元的に配信される。企業だけでなく個人でも配信が可能で、iPhoneのApp Storeに近い仕組みだ。掲載には審査が入るが、「簡単な審査」(同社)だという。

ウィジェットストアの画面

公式サイトに掲載されている企業であれば、ウィジェットの有料配信も可能。課金の仕組みのために公式サイトに入っていない企業や個人は有料のウィジェットは配信できないという。

同様に、公式サイトの企業は署名付きのウィジェットを配信でき、端末内のデータにアクセスできるなど、より高度なウィジェットを作成できる。ただ、署名がなくてもネットの情報を取得するなどさまざまなウィジェットは開発できる、としている。

また、ウィジェットをメモリーカードやメール経由で手渡すなど、ウィジェットストアを経由しない配布も可能。そのため、特定の業務だけで利用するウィジェットを企業内だけで配布するといったこともできる。

同社では、11月下旬以降のウィジェットストア開設時には、100件程度のウィジェットを集めたい考えだ。

実際のウィジェットの画面

ウィジェットの管理画面。ここから待受画面上にウィジェットをドラッグすれば利用できる

こちらはウィジェットとは関係ないが、待受画面に携帯の機能のショートカットを配置するための管理画面。操作方法はウィジェットと同じ

SDKを無料配布、総額1,000万円のコンテストも

インターネット・パートナーズとして集まった5社は、最初の施策としてモバイルウィジェットの利用と開発促進を目的とした「ソフトバンク モバイルウィジェット コンテスト」を実施する。11月下旬以降の931SH発売以降に募集を開始し、09年5月末に結果を発表する予定だ。

コンテストでは、ウィジェット作品を企業や団体、個人を問わず広く公募する。グランプリには賞金200万円など、賞金総額は1,000万円になる。これによって多くのウィジェットが登場することを期待する。

ウィジェット開発のためのSDKは無料で公開される。ウィジェットはJavaScriptを使って作成でき、プログラマーなどなら比較的容易に開発できるという。

ソフトバンクは、中国China Mobile、英Vodafone Groupと合弁会社Joint Innovation Lab(JIL)」を設立、携帯電話向けのウィジェットの実行環境の開発などを行うことを決めていた。今回のモバイルウィジェットは、JILを通じて両社も利用できる。孫社長は、3社で1つのプラットフォームを使うことで「世界最大のウィジェットプラットフォームにするのが戦略」と話し、日本で作られたウィジェットが世界に進出でき、世界のウィジェットが日本でも使えるようになる、と将来像を語っている。

現在配信が予定されているウィジェット