Agend 2015の「土台」を構成するのは、

  1. ダイナミックワイヤレス
  2. 拡張性のあるサービスプラットフォーム
  3. センサー

の3つだ。

CTOとして研究開発を統括するBob Iannucci氏

1のダイナミックワイヤレスは、Nokiaが得意とする無線通信技術の知識を活用する分野だ。Nokiaでは「コグニティブ・ワイヤレス(cognitive wireless)」と呼んでいる。端末が状況や用途に応じて利用する周波数帯を選ぶというコンセプトで、これまでの周波数帯の利用を変える可能性を秘めた大きな変化になるという。

2の拡張性のあるプラットフォームでは、堅牢性と拡張性のあるプラットフォームの構築を目指す。このようなプラットフォームを実現しているサービスは、現在非常に少ないという。

3のセンサーは、携帯電話、靴、時計、カメラなどユーザーを取り巻くセンサーがお互いに感知しあう世界。「携帯電話はデジタルとアナログの間のゲートウェイになる」とIannucci氏。

上層のサービスは、Web 2.0が実現したコラボレーションとクリエイティビティ、物理世界とSecond Lifeのようなデジタル世界を橋渡し、2つの世界を混ぜるような役割を携帯電話が果たすというものだ。

この8つの要素を組み合わせていくにあたり、Nokiaは「オープンイノベーション」を推進する。Nokiaの携帯電話出荷台数は、年間4億3,000万台に達している。研究開発部門に1万4,000人を抱えるが、幅広いポートフォリオを持つ自社携帯電話に必要なすべての技術を単独では供給できないという。「Nokia1社では限界がある」とIannucci氏。他者と共同でイノベーションを加速する、これが研究開発でのNokiaの戦略となる。

具体的には、大学とのコラボレーションなどがある。現在、英ケンブリッジ大、スイス連邦工科大学、ヘルシンキ工科大学などと進めており、ここでNokiaは研究過程にある最新技術を学生に提供し、自由に試してもらうという。最大の目的はフィードバックだ。Web 2.0的に得られたフィードバックをすぐにプロジェクトに反映させることで、イノベーションを加速するというものだ。

また、社内開発中の技術をNokiaコミュニティに試してもらうという「Nokia Beta Labs」もある。例として、GPSを利用して、ジョギングのコースなどを共有するアプリケーション「Sports Tracker」がある。Beta Labsで掲示したところユーザーから予想外の反応があった。いまでは、一部端末に搭載されるに至ったという。

センサー分野では、センサーからの情報を集めて何に活用できるのかの研究を進めている。Iannucci氏はここで、カリフォルニア大学バークレー校と共同で進めているプロジェクト「Traffic Works」を紹介した。GPSを搭載した車からのリアルタイムの情報を集め、交通渋滞状況を把握するというものだ。今年2月に実施したフィールド実験では、100台のGPS携帯電話を利用して行ったところ、交通予測よりも正確であることがわかったという。それだけでなく、高速道路以外の交通情報もわかることになる。

Iannucci氏は応用例として、車からのデータを集めてWebサイトに掲示して、PIM機能と統合してパーソナライズした場合どうなるかを紹介した。たとえば、スケジュール情報と交通情報をあわせて、「予定の時間に目的地にたどり着くためのルートが込み合っている」などの情報がプッシュされることが考えられるという。これだけでなく、他のルートを提案するような機能も考えられる。

車と交通情報以外にも、インフルエンザの感染、競技場の混雑、市民ジャーナリズムなどにも同じメソッドを適用できるかもしれない。Nokiaは今後、規模をさらに大きくしたトライアルを実施し、可能性を探っていくという。

端末側では、ケンブリッジ大とのコラボレーション「Morph」を紹介した。ナノ、センサー、柔軟性のあるエレクトロニクスなどの技術を利用した腕時計やクリップ型の携帯端末のビデオを作成した。これをYouTubeに掲示したところ、最初の1週間でアクセス数が15位だったという。

UIでは、Nokiaは「ヒューマン」をテーマとしている。「電話番号を思いついた(Alexander Graham)Bellは間違っていたかもしれない」とIannucci氏。電話番号はパーソナルとは正反対のアイディアだ。「人間はリレーショナル」とIannucci氏。Nokiaでは、「Facebook」のようなSNS、ソーシャルグラフを統合、連携させる可能性を探っているという。