パシフィックビジネスコンサルティング(PBC)は10月8日、マイクロソフトの中堅・中小企業向けERPパッケージ「Microsoft Dynamics NAV 5.0」の日本語版の提供開始を発表した。Dynamics NAV 5.0は米Microsoftが提供する英語版のERPパッケージで、PBCは日本語マニュアルや日本市場向けの機能拡張を行うローカライズを実施しつつ、導入コンサルティングサービスの提供も行っていく。

パシフィックビジネスコンサルティング取締役 戦略事業推進室室長の吉島良平氏

Dynamics NAVは、米Microsoftが2002年7月に買収したデンマーク企業NavisionのERPパッケージ製品。買収後にNavisionの製品名はDynamics NAVとなり、同社Business Solutions部門の基幹製品の1つとして世界規模での提供が行われている。買収後のNavisionはMicrosoft OfficeといったMicrosoft製品との親和性を重視して改良が加えられており、今回提供されているNAV 5.0ではさらに親和性を高めるとともに各種機能拡張が行われている。NAVの特徴は特定用途向けのカスタマイズが容易で、システム構築にかかるコストや工数が低いことから中堅や中小企業を中心に市場を開拓している。主な顧客はメーカーや流通関係などを中心にさまざまな業種にわたっており、PBCによれば導入サイトが世界で約7万社、40言語で130ヶ国での展開が行われているという。

PBCは1993年設立のコンサルティング会社で、2001年に旧Navisionとパートナー契約を結び、日本市場の外資企業や海外の日系企業を対象にしたNavisionの導入コンサルティングを提供していたが、2002年のNavision買収に伴いMicrosoftとのパートナー契約を再締結している。日本法人であるマイクロソフトはMBS(マイクロソフトビジネスソリューション事業部)を設立してERPパッケージの「Microsoft Dynamics AX」の提供を2007年より開始しているが、Dynamics NAVについてはローカライズは行っておらず、日本市場向けの製品提供も行っていない。PBCは旧Navision時代からの経緯もあり、マイクロソフト日本法人とDynamics NAVの販売契約を締結、製品のローカライズを行うことで今回の日本語版の提供を開始している。そのためDyanamics NAV 5.0日本語版はMicrosoftの製品でありながら、販売やサービスはPBCを通して行われることになる。

今回提供されるDynamics NAV 5.0日本語版についてPBC取締役 戦略事業推進室室長の吉島良平氏は「各種データテーブルやフィールド名、帳票など、日本での利用に適した形で細心の注意を払ってローカライズを行っている。製品自体はMicrosoft Officeとの連携や、Windowsなどでお馴染みのMicrosoftライクなものになっており、非常に親しみやすい」と製品の出来や使いやすさに太鼓判を押す。また同氏は非常に製品が身軽であることも強調しており、要求別のカスタマイズが容易なほか、1人のコンサルタントが多くのモジュールを担当することが可能な点など、中堅・中小企業の要件に合わせて迅速なシステム展開が行える点が魅力だとも説明する。

Microsoft Dynamics NAV 5.0日本語版のローカライズ例。郵便番号や銀行コード、各種フィールドや日本語表記が日本向けにアレンジされている

出力可能な帳票・レポート例の一覧

PBCは前述の通り、日本市場の外資企業や海外の日系企業を対象にした言語をまたぐコンサルティング業務を得意としており、中小でも特に海外展開を行っているような企業がターゲットだ。一方で日本市場における日本企業への導入コンサルティングについてはアイネット、ミツイワの2社のパートナー企業の協力を仰ぎ、これら2社を通じて製品の提供やコンサルティングを提供していく予定だ。Dynamics AXで日本のERP市場攻略を狙うマイクロソフトと併存する形で、PBCとパートナー企業らはDynamics NAVによる日本市場や関連マーケットを攻略していくことになる。

なおDynamics NAVについては、最新版のDynamics NAV 2009が今年11月にも米Microsoftよりリリースされる予定だ。最新版ではGUIを一新したほか、.NET対応を進めることでWebアプリケーションとしての機能が強化されている。NAV 2009はその後SP1提供や次期バージョンにあたるNAV 2010のリリースなども予定されており、1年ごとに段階的にアップデートされていくことになる。最新バージョンへの対応について吉島氏は「機能の細部まで把握した段階で順次ローカライズしていくため、半年から1年ほど英語版とのラグがある。NAV 2009については安定版となるSP1の提供も予定されており、順次キャッチアップしていく」とコメントしている。

日本語版の価格体系。英語版のライセンスを購入したうえで別途日本語版のライセンスも購入する形になる