製作能力はニーズの3分の1程度

冒頭で述べた放送制限令の強化がもたらした需給ギャップは、現在コンテンツへの「渇き」にも似たニーズを喚起している。しかし、市場のアンバランスに改善の見通しは立っていない。現在国内のアニメーション市場には、少なく見積もっても放映30万分以上のニーズがあるのに。実際の製作能力は、こうした年間ニーズのせいぜい3分の1程度しか満足させられないでいる。

前述のとおり、アニメ製作会社の中で、年間製作能力1,000分間以上の会社はわずか20社足らず、である。いうまでもなく、その他の企業の利益は微々たるものだ。

アニメ産業は初期投資が大きい割に、投資回収期間が3~5年と比較的長い。しかも、少し規模の大きいアニメ作品ともなれば、放映時間が少なくとも数百分はないと利益が出ない。

業界の平均製作コストは1分あたり約1万元(約15万円)だが、これには企業の一般管理費などが含まれていない。従って、企業活動を維持するには、少しでも利益率の高いプロジェクトを探し出さねばならないのだ。さもなければ、つねに持続的な資金投入をおこなって運営を維持していかざるを得なくなる。

中国政府肝いりのキックオフ、アニメ産業振興政策のスタートを切った2004年から、すでに4年の歳月が過ぎ去った。この間、中国には湖南宏夢※通伝播、中南集団※通影視、湖南三辰※通集団などのような大きな影響力を持つアニメメーカーが出現し(※通は「cartoon」=アニメの意)、昨年からは経営状況も好転してきているといわれる。

※は「上」の下部に「ト」

だが現実はそれほど甘くはないようだ。少数の大企業が「やっと儲かった」背後で、多くの中小メーカーは年間製作量数百分、なかには数十分といったレベルにとどまっている。こうした企業は海外企業のための下請け製作、またはアニメ短編映画の製作などによってようやく生きながらえている。