Emotional Touch - A novel interface to display "Emotional" tactile information to a palm

前出の小型のフルレンジスピーカーを使った触覚提示システムのバリエーションとして電気通信大学 梶本研究室が発表したのが「Emotional Touch」システムだ。

コンセプトは「癒し系のHAPTICS」で、触って触れることで被験者が癒されたり、ほっとしたりするような、感情に訴えかける触覚の提示を目指したものとなっていた。用意されていたデモは3種類。

1つは「STICKY MOUSE」。パソコンの代表的なポインティングデバイスであるマウスのようにして使うが、なにやらくっついたり離れたりする不思議な操作感が味わえる。これはマウスの上面部に小型のフルレンジスピーカーが実装されていて、スピーカーユニットが上下することで吸盤のような吸着力が発生して、手の平に対してくっついたり離れたりする感覚を制御している。実際のマウスとしては使いにくいが、マウスに対するフォースフィードバックの在り方としては面白いかもしれない。

STICKY MOUSE。上面の円状のものがフルレンジスピーカー

デモではグニュッと潜り込んでブチンときれてしまうような触感が体験できた

2つ目は「生き物スピーカー」。両端にフルレンジスピーカーが実装されている小型の物体で、被験者はこの両端のスピーカー部を、両手で押さえて挟み込むように持ってその不思議な触感を体験することになる。再現されるのは、小動物の心臓の鼓動の感触や、猫の喉鳴らしなどのような、生き物の細かな動きで、暖かみのある振動が手の平に伝わってくる。こちらもやはりこの両端の2つのスピーカーの駆動によって振動が再現されている。

こちらは振動は重低音で、効果音は普通の音声で再生するような仕掛けになっている。圧力センサと加速度センサが搭載されているため、被験者の手の動きやこのデバイスに対する扱いを関知して、インタラクティブな反応を示すようにプログラムしてあるのが凝っている。これは愛玩用のペットロボットのフォースフィードバックとして利用できるのではないか……とのことであった。

生き物スピーカー。手前の黒いフルレンジスピーカーは向こう側にも実装されている

このように両端のスピーカーを手の平で包み込むようにして持つ。小動物の鼓動などが、被験者のアクションに呼応して変化する

3つ目は「ほっぺたコミュニケーター」。これは触感を手軽に相手に伝達するシステムの提案だ。受信者となる被験者はフルレンジスピーカーが実装された小型デバイスを頬に当てて待機。送信者側はモーションセンサーの前で行った「なでる」「くすぐる」などの動作を行い、これが振動用の波形データに変換されて受信者側へ伝送される。受信者側の頬に付けたデバイスはこの波形データを振動に復号してスピーカーで再生、被験者は頬でその触感(振動)を感じ取ることになる。

ほっぺたコミュニケーター。白い円状のものが小型のフルレンジスピーカーユニット。被験者はこれをほっぺたにくっつけて使用する

送信側の手の動きの触感を捉えて、これを被験者の頬に付けているほっぺたコミュニケーターへ伝送。被験者は送信者の送った触感に相当する感触を感じることになる

技術的にはこなれていて、しかも安価なフルレンジスピーカーを触感再現に活用するというアプローチは、アイディア次第ではいろいろと面白いものが出来そうだ。最後の「ほっぺたコミュニケーター」などは携帯電話に付ければ、恋人同士で「ほっぺにキス」の伝送に役立つ……かもしれない!?

ほっぺたコミュニケーターの構造図

動画
Emotional Touchシステムの技術解説映 (WMV形式 8.95MB 4分27秒)