富士通は2日、ものづくりや技術の楽しさを学べる子ども向けイベント「富士通キッズイベント2008 夢をかたちにするしくみ」を、富士通川崎工場内で開催した。

イベントが開催された富士通川崎工場。工場といっても生産拠点ではなく研究施設や営業部門などが集まっている。富士通の創業地で本店として登記されている

イベント開催の挨拶をする情報オリンピック日本委員会 ジュニア部門委員の兼宗進氏。一橋大学准教授でもある

今年で2回目となるこの子ども向けイベント。昨年はPCのリサイクルを中心にエコについて語られたが、今年は情報オリンピック日本委員会の協力でコンピュータの基本原理を遊びながら学ぶイベントとなった。

ただし今回は、PCを使用せずにコンピュータを学ぶ"アンプラグド"のスタイル。海外で先行しているタイプの講義で、日本でも最近注目され始めている。PCを利用したコンピュータの学習は学校でも行われているため、あえて使用しない学習にしたとのこと。対象は小学4年生から6年生。1日で3回の講義が行われ(内容はすべて同じ)、計100人程度の子どもが参加した。

イベントは2部構成。第1部は遊びやゲームを利用し、子どもの興味や関心を引き出しながら楽しく学習。PCが数字や図形、文字をどのように認識するかを学んだ。第2部は富士通テクノロジーホールで、富士通の初期のコンピュータなどを見学した。

「コンピュータのしくみ」

第1部は「コンピュータのしくみ」と題して、「コンピュータのことばで遊ぼう!(2進数)」「数を使ってお絵描き1・2・3!(画像表現)」の2つを用意。

「コンピュータのことばで遊ぼう!」

「コンピュータのことばで遊ぼう!」を担当した保福やよい先生。単に答えを教えるのでなく、子どもと一緒に考えることでより深く学んでいた

「コンピュータのことばで遊ぼう!」では、神奈川県で高校の教諭をしている保福やよい氏が講師となり、2進法について学習した。10進数では0~9まで10個の数字で数を表すが、2進数は0と1の2個の数字で表す。でも、10進数と2進数は同じ値を示すことができる。これを、1個、2個、4個、8個、16個の丸が描かれた5つのボードを使って、参加した子どもたちは1~31まで数え、2進数でも10進数と同じように数を表現できることを学んでいた。ここでも、PCを使わないアンプラグドにより、単に教わるのではなく自分で発見する喜びをあわせて学んでいた。

さらに、「秘密のメッセージを送ろう」というテーマで、1つ1つの数字にひらがなの1文字を割り当て、2進数で文字が表現できることも学習。2進数で表された5桁の数を元に、隠されている文章を探るというもの。遊びながら勉強できるため、子どもたちも真剣そのもの。次々に解答していた。

5つのボードを使って1~31までの数字を表現。写真は、ちょうど24を数えているところ

2進数で隠された文字を探し当てるという、まるで暗号解読のような学習

最後に2進数の表現方法を学習。モールス信号やFAXは音を、コンピュータは電気を、フロッピーディスクやハードディスクは磁気を、CDやDVDは光で2進数を表し、さまざまなものを表現していることを学んだ。

「数を使ってお絵描き1・2・3!」

「数を使ってお絵描き1・2・3!」は、三重県で中学校の教諭を務める井戸坂幸男氏が講師。数字や文字だけでなく絵を数字で表現する方法を学んでいた。最初にFAXで絵を送信する方法を子どもたちに尋ねると、個性的なアイディアが飛び出してきた。実際に紙が相手に送られるのではないことは理解していた。

講義では、FAXでの絵の送信方法を擬似的に学習。実際には10×10マスの絵を配布し、そのマスを塗りつぶすことで絵を表現。その絵を数字に置き換えて、他の子どもに送信。元の絵に直すという内容となっていた。方眼紙を使えば簡単に自宅でもできるため、復習も簡単だ。

「数を使ってお絵描き1・2・3!」の講師、井戸坂幸男氏はFAXの送信方法を例に、絵から数字への置き換え方を教えた

絵を描いて数字に置き換える。そうすることで絵が送信できることを学んだ

富士通テクノロジーホール見学

学習後は、富士通テクノロジーホールに飾られている製品を見学。リレー計算機、日本語ワープロ「OASYS100」、親指シフトキーボード、富士通初の8ビットPC「FM-8」、初期の携帯電話、マルチメディアパソコン「FM-TOWNS」など、富士通の過去から未来まで、数多くの製品が展示されている。通常は一般に開放されることはないが、このようなイベントでは見学できることもあるエリアだ。中でも富士通のヒューマノイドロボット「HOAP-3」は、さまざまなポーズで子どもたちを盛り上げた。

富士通が開発したロボット「HOAP-3」。イベントの最後に、さまざまなポーズをデモンストレーションし、子どもたちの興味をひいた

1956年に開発されたリレー計算機「FACOM 138A」。FACOMは電話交換機の技術を応用して開発された

富士通では今後もこのようなイベントを通じて、最近になって理系離れが進む子どもに対して、数学や科学に興味を持ってもらうように努めていくとしている。