SLIとCrossFire、PVP2とUVD2について
両者の細かい機能拡張面をそれぞれ見ていくことにしよう。
GeForce GTX 280ではレジスタファイルの量がGeForce 8800 GTX/9800 GTXの倍に増加させられている。
レジスタファイルとは、GPUが計算に用いる変数値や一時的な計算結果の収納場所に相当する領域で、一般的にはSRAMで構成されているもの。通常は、これは動的に使用されていくため、GPU内部のスレッド状況によっては足りなくなり、その場合はSPが手透きでも「空き待ち」に陥ってストールすることもある。これが2倍に増強されたことで、高度かつ複雑な演算が頻発してもSPストールが起こりにくくなる、あるいはより多くのスレッドを走らせられるようになりパフォーマンスの向上も期待できることになる。また、新搭載された30基のFP64演算の際には、FP32演算の2倍となるビット長のレジスタファイルを消費することになるため、レジスタファイルを枯渇させないことにも繋がる。
SLIについては、GeForce GTX 280、GeForce GTX 260ともに、SLIコネクタが2つ用意されていることから3-way SLIまで対応している。Hybrid SLIに関しては、3Dグラフィックス処理の負荷に応じてチップセット内蔵GPUと単体GPUの使用を切り分けられる「HybridPower」にのみ対応する。チップセット内蔵GPUと単体GPUの同時使用を実現する「GeForce Boost」には対応しない。
動画再生支援機能関連についてはGeForce 9世代で完全置き換えが終了した第2世代のプログラマブル・ビデオ・プロセッサ(PVP)の「PVP2」が搭載されている。PVP2では、MPEG-2やVC-1、H.264などのコーデックに対応したハードウェア・デコード・アクセラレーション機能を持ち、さらに映像ストリームの復号アクセラレーション、2つの映像ストリームの同時デコードに対応している。
Radeon HD 4800シリーズもマルチGPUソリューションとして「CrossFireX」に対応する。CrossFireXはRadeon HD 3800シリーズよりサポートが開始された、最大4枚の同型Radeon HDシリーズを同時駆動する技術だ。
Radeon HD 4800シリーズでも最大4枚同時動作可能なCrossFireXがサポートされる |
動画再生支援機能関連ではRadeon HD 4800シリーズでは、新世代のUVD2(Universal Video Decorder2)が搭載されている。UVD2ではNVIDIAのPVP2同様の2つの映像ストリームの同時デコードや、SD映像に対する適応型解像度変換で高品位な疑似HD映像を得るアップスケーラ機能、動的なコントラスト制御機能がサポートされている。
Radeon HD 4800シリーズは省電力機能の強化を推し進め、その結果、電力あたりのパフォーマンスをRadeon HD 3800シリーズの二倍にすることが実現できたとしている。具体的には、GPUにオンチップ搭載したコントローラで、GPUの機能ブロックやPCI-Expressバスを監視し、コアクロック、ビデオメモリクロック、駆動電圧、冷却ファンの回転数を動的制御することで行っている。
ATI、NVIDIA両社共に、動画再生支援機能がデュアル映像ストリームデコードに対応したのは、きたる次世代DVDのブルーレイソフトにおけるインタラクティブ機能「BD-LIVE」への対応を睨んだものだ。
マルチGPU動作は両者共にそれぞれのマルチGPUソリューションを提供するが、NVIDIAが3Way-SLIで3GPU同時駆動までに対応し、ATIはCrossFireXで4GPU同時駆動まで対応するという対応度の差が見られる。ウルトラハイエンドのGeForce GTX 200シリーズの3基と、パフォーマンスクラスのRadeon HD 4800シリーズの4基とでは、どちらが実効性能が上なのかは興味深いところではある。