「映画作りは発見の連続であり、常に自分は学んでいる状態なんです」

特別講義終了後、パンダの似顔絵入り花束を受け取った

また自主制作の作品作りに慣れてしまったオズボーン監督だからこそ、困難だったこともあったようだ。

「僕の場合、映画作りは発見の連続であり、常に自分は学んでいる状態なんです。だから自分の気持ちによって作品の方針を途中で変えるんです。一人なら途中で方針を変えても誰も説得する必要がありません。ただハリウッド映画では、方針を変えると非常にお金がかかってしまいます。また、多くの人に変更の理由を伝えて説得しなければいけません。そして一番大変なのが、自分の気持ちをどうして変えたのか、明確な説明が必要になってくることです」

現在のハリウッド映画では、フルCGアニメーションは一般的になっている。2Dアニメ映画は、ハリウッドではあまり作られていない。このような現状と今後のアニメーション映画の将来に対し、オズボーン監督はこう語った。

「確かにハリウッド映画では、フルCGのアニメーションが流行っています。しかし自分自身ストップモーションアニメの作品を作り、教えてきた者として、ストップモーションアニメや2Dアニメというのはずっと存在すると思っています。ハリウッドは、もう2Dアニメには戻らないと言っている人たちもいますが、もう戻らないとは断言できません。現に、今もディズニーは2Dアニメの映画を作っていますから」

「自分が使っているツールにあまりこだわり過ぎないほうがいい」

アニメーターでありながら実写映画も撮っているオズボーン監督。オズボーン監督は、アニメーションと実写をはっきり分けて考えるのは良くないと考えている。作品で一番大切なのは"ストーリーを語ること"であり、それを伝えるために色々な手法があるというのがオズボーン監督の考え方だ。

「僕がアニメーションに興味を持ったのは、実写で作るには、予算がかかりすぎるからなんです。実写で、アイディアが凄いファンタスティックなものを実際に撮ろうとすると、もの凄く予算がかかりますから。だからアニメで作ったんです。また自分としては、ストーリーを磨き上げる時間がゆっくりかけられる、アニメという手法が好きなんです。実写は、基本的に撮影現場ですべて撮らなくてはいけない。だけど僕は前にも言ったように、コロコロ方針が変わるから、それをひとつひとつ丹念に試しつつ作っていくには、アニメの方が僕には適しているんです」

限定150名しか受けられない貴重な講義。会場は満席だった

生徒からの質問にも真剣に答える監督

特別講義の最後に、オズボーン監督は生徒たちに「自分の本能を信じろ」、「リスクを取れ」、「失敗することを受け入れろ」という3つの言葉を贈った。

今回の監督による特別講義では、オズボーン監督の映画制作の進め方や、CGアニメに対する考え方などを知ることができた。1時間という短い時間ではあったが、将来クリエイターを目指すデジタルハリウッドの生徒たちにとって大変有意義な時間になったことは間違いないだろう。

カンフーパンダ

『シュレック』シリーズ、『マダガスカル』などのヒット作を送り出しているドリームワークスアニメーションの最新作。父のラーメン店を手伝いながら中国で暮らすパンダのポー。カンフー好きのポーが、ある偶然から史上最強のカンフー・マスター"龍の戦士"に任命されてしまう。最強の敵と戦うはめになったポー。果たして勝算はあるのだろうか? この作品のカンフーシーンの映像は、足の位置や腕の角度にまでこだわり、すべてを2Dで描いてからCGに起こすという緻密な作業で制作されたという。
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