物品管理、医療もユビキタス時代

このほかの展示としては、Samsung SDSによるRFIDの活用例があった。これは実際に韓国政府の調達庁や統計庁などで利用されているシステムだ。

椅子や机、スピーカーなど、同庁の備品にRFIDタグをつけ、これをデータとして管理するというもの。リーダー機がとり付けられたPDAでRFIDタグを読み込むと、その備品の価格や購入日、使用場所、備品の状態といった情報が、詳細に表示される。

このシステムはSamsung SDSをはじめ、タグ業者や部品業者などからなるコンソーシアムが作り上げ、2007年1月から利用が開始された。2008年下半期には適用範囲を拡大、2009年には固定した事業として運営していきたいという。既に政府への導入例もあることから、今後は急速に拡大していきそうだ。

RFIDタグ。実際には机や椅子などの備品に付けられる

タグの1つにリーダー機をあててみると、その備品の詳細情報がすぐさま表示された

またIntelが推進している「Mobile Clinical Assistant」も、韓国の6カ所の保健所で試験運用されている。これは施設外で患者を診ることが多い保健所の看護師のために作られたシステムだ。

同システムでは、血圧計、糖尿計、心拍計などの医療機器と、データを入力するためのタッチスクリーン式端末が連動している。また、外出先で患者の名前や検査結果を端末に保存することもでき、保健所に帰った後、端末をネットワークにつながったステーションに収めれば、データが自動的にサーバーに登録される。

現在、機器自体の開発を終え、保健所のPCに対応ソフトウェアをインストールしている段階だという。また今後は保健所以外の施設にも、適用範囲を拡大していく可能性がある。

Intelによる「Mobile Clinical Assistant」の道具一式。モニタは、持ち上げてみると割合重たい。女性の看護士だと、長時間の持ち歩きはきついかもしれない

モニタに患者の情報を表示しているところ

あらゆる端末がネットワークに通じ、いつでもどこでもサービスを受けられるユビキタス社会という言葉を、頻繁に耳にするようになって久しい。しかしこれが具体的にどういったサービスであるのか、実際にどの段階まで開発や導入が進んでいるのか、という部分は広く知られているわけではなく、触れられる機会もそう多くはない。

そのため今回の展示は、その一端に触れられる貴重な機会となった。しかし実際に触れてみると、改善の余地が多いものがあったほか、機能自体は便利でも実際に一般の人に利用されるかどうかは不透明なものもあったことから、現在はユビキタス社会構築のための初期段階に過ぎないことも同時に感じられた。