日立システムアンドサービス 執行役専務 眞木正喜氏

続いて、日立システムアンドサービス執行役専務の眞木正喜氏が、同社が提供するサービス「知のコンシェルジェ」のプレゼンテーションを行った。「知のコンシェルジェ」とは、知識を体系化し、整理するためのWebブベースのシステムで、情報をツリー状に表示して、知識全体を可視化することができる点が特長だ。各項目をクリックすると、関連項目のツリーが広がり、関連する項目全体を見渡すことができ、適切なキーワードを考え出さなければ検索できなかったり、キーワードによってはヒット件数が多すぎたりするなどの従来の辞典/辞書系データベースの欠点を、対話型で情報を探すことによってカバーする。

一方、モデレータの竹田氏から「知のコンシェルジェをもっとオープンなシステムにすべきでは?」という指摘がなされた眞木氏は「今後の計画は、"知の循環"の仕掛けを構築すること。つまり、社内の組織の壁をまず取り払うこと。ただし、知のコンシェルジェのどこまでを外でつなぐべきか、オープンにすべきかというのが悩ましい課題だ」と語った。

東京大学大学院情報学環・総合文化研究科 石田英敬教授

また、東京大学情報学環・学際情報学府で2007年度から実際に講義に利用されている「知のコンシェルジェ」。パネリストとして、東京大学大学院情報学環・総合文化研究科教授の石田英敬氏が参加し、「大学で人と知をつなぐ」と題して、実際の導入事例を紹介した。

「大学では、人と知をどういうふうに結び付けていくかを真剣に考える時期にきた」と話す、石田氏。東京大学全体では、2007年6月から「知の構造化センター」を推進しているという。そんな中、採用されたのが「知のコンシェルジェ」だ。東大の教養学部(1~2年)の"記号論"の授業では、学生は講義の受講後に授業用サイトから「知のコンシェルジェ」とハイパーリンクした、スライドをダウンロードして利用する。逆に「知のコンシェルジェ」の項目から教科書の電子版へもハイパーリンクされている。さらに、大学院修士1年の"情報学基礎"では、学生は授業用サイトで課題文献を読み、文献から重要概念を抜き出し、ハイパーリンクをつけるという作業を行っているといい、「同じ文献から取り出した概念ネットワークを学生どうしで重ね合わせる"共働による概念ネットワーク"が形成される。これは、理解のマッピングとして教師の手にも入り、学生の理解度を知る手立てにもなる。そこから研究プロジェクトが生まれるなど、知識の創出にも役立っている」と、石田氏。また「知識社会とは、「知」が「社会」の編成の原理そのものになった社会。そんな中で、自分の知のネットワークをいつでも可視化でき、他者のネットワークにも自身の観点からアクセスできる。そのような"確かな知のネットワーク"環境が必要。しかし、知の共有共生は確かな循環が起こらない場合が多い。トップダウン型のネットワークストラテジーがむしろ重要になってくるだろう。若い世代がその中でダイナミックに自分自身の知的価値を高めていけるように、知によって社会を編み直し、クリエイティブに結びつけていくか」と続けた。