米Adobe Systemsは5月29日(現地時間)、同社ワークフロー印刷ソフトウェアの最新版「Adobe PDF Print Engine 2」を発表した。プリンタなどの印刷機メーカーの製品に印刷エンジンとして組み込まれ、印刷から制作ワークフローまで製作工程を一元管理する。新バージョンでは特にVDP (Variable Data Printing)機能が強化されており、印刷ごとに異なる写真や文書データを差し込めるなど、大量処理におけるカスタマイズ印刷を可能にする。同ソフトウェアは印刷システムに組み込まれて出荷されるため、OEM提供が前提となる。製品出荷は7月を予定している。

最初のバージョンにあたるPDF Print Engineは2006年に出荷され、Agfa、FUJIFILM、GMG、Heidelberg、Kodak、Screen、Xanteといった印刷機メーカーの製品に組み込まれて利用されている。PDFファイル印刷のワークフローへの組み込みが可能になるほか、Postscriptなどの中間形式なしでPDFを印刷イメージとして直接変換できる。今回のPDF Print Engine 2の発表にあたっては、新たにDalim Software、EFI、Oce Printing、Xeroxといったベンダーがサポートを表明している。

PDF Print Engine 2の強化点であるVDPでは、同じ文書の印刷において、個々の版ごとに異なる画像イメージや文章を埋め込んでカスタマイズできる。例えばダイレクトメールの作成において、送付先ターゲットに応じたキャンペーンを展開できるなど、従来であればコスト的に実現が厳しかった処理にも対応可能になる。VDPの実現にあたっては、業界標準のPDF/VT(Variable and Transactional)というPDFでVDPとワークフローを実現する仕組みをサポートしている。また従来通り、PDFを一元処理できるワークフロー機能も備え、印刷工程の指示書であるJDF(Job Definition Format)に対応する。ほかにも大容量メモリやマルチコアプロセッサを利用できるようにソフトウェアコードが最適化されるなど、大規模な印刷フローシステムでの処理の高速化が図られている。